Vol.10報告(1/2)―Jun Murai、インターネットの父である前に一人のUnixマニアだった

おはようございます。USP MAGAZINE取材班 松浦です。さてお待たせしました。今回、次回と、公式ブログによるTechLION vol.10レポートをお届けします。場所や日時の問題で参加できなかったという皆様は勿論、参加された皆様も、読みながら当日の熱いステージの記憶を呼び起こしてください。

今回は有志のご協力により、本格的なUstream中継(前半63756″>後半)もしてもらいましたので、併せてご覧ください。(忙しい方はラジオのように聞き流しながら作業するのがオススメ!)

■ちょっとだけ試合前のこと

本日のメインゲスト、村井純先生がどんな話をされたかというのが、多くの方の関心事だと思います。が、まあちょっとだけ試合前(TechLIONにおいて「試合」とは「本番」のこと)の話をさせてください。「有難い話が聞ける」というだけじゃないんです、TechLIONは。

それは、受賞したばかりの日中韓OSSアワード特別賞のタテだった
先日受賞したタテだった
それ何置いてるんですか?法林さん。
司会席に何か置いてる!

いつものようにスタッフ総出で会場準備をしているとステージ上で、法林GMが司会者席に何やら置いてます(→写真) 何だろうと思って見てみれば、先日受賞した日中韓OSSアワード特別貢献賞のタテ(→さらに写真)。

……いやぁ、OSSに貢献した男というのはわかりますが、そこに置きますか!? そして試合中ずっと置きっぱなし。でも、このタイトルをもってして村井純ら4人の手強いゲスト達と対戦するぞ!という、いわばプロレスにおけるチャンピオンベルトなわけです。あのベルトというのも、試合を盛り上げる重要なアイテム。そう、TechLIONというイベントは、あの臨場感なのですよ。

村井純をもレスラーにしてしまうTechLION。こんなドリームマッチが開催される現場を是非観に来てほしいですね。

■前半戦、村井先生“Unix and me”

村井先生も準備OK!「さぁ来い!司会者達よ」 ではvol.10の前半戦、日本のインターネットの父こと、村井先生との対戦の記録をレポートします。

かんぱーい!と会場の全員で掛け声かけて、グビっと一飲み。さあ、試合開始!

本当は試合らしく法林GM&馮Pとの掛け合いをリアルに伝えたいところですが、スペースに限りもあります。なので泣く泣く、先生が披露された話を時系列順にまとめてお送り致します。

≪Unix and me≫

題目はUnix and me。邦題は「UNIXとインターネットだぁ!」。原題となんかちょっと違う気もしますが、むしろ「だぁ!」のあたりなど、トークの雰囲気をよく言い表した名訳です。以下この節は、村井先生が発した試合中のセリフ形式でお送りします。

OSを理解し、Unixに出会う

今日一番話したかったのは“Unix and me”というテーマ。俺が研究室に入った頃(著者注:先生の経歴によると1980年前後)にはPDP-11/10というマシンがあって、最初にさせられた仕事が「OSのソースを書け(リバースアセンブルして改造)」だった。PDP-11には最初RSX-11っていうOSが載ってたんだけど、見ているうちOSというものがわかっていった。ビットパターンを見ているだけで命令がわかる程にね。

その頃7th Edition2BSDと呼ばれる、UnixというOSが現れた。Unixとはハードウェアベンダーが作ったOS部分を乗っ取るような存在。ベンダーがベストチューンしたOSより大抵遅いんだけど、その代わり自由が手に入った。ここがUnixで俺が一番好きだった発想なんだけど、即ちユーザー主体のプラットフォームという考え方が出来上がった。それで、この7th EditionにはUUCP(著者注:主に電話回線によるコンピューター接続)のコードが埋め込まれていた。

新しいことへのリスクは、大学がとるべき

LTEで70Mbps出るから光ファイバーなんてもう要らないですよ!と言い放った相手に「ウソつけ」と思いながら脳裏によぎった過去の名言
LTEで70Mbps出るから光ファイバーなんてもう要らないですよ!と言い放った相手に「ウソつけ」と思いながら脳裏によぎった過去の名言。IPアドレス枯渇問題も同じこと。
(本文中とは直接関係ありません)

84年くらい。時代はまだ、電話回線にコンピューターを繋ぐのがイリーガルで、モデムも500万円くらいした頃。こっそりこれ(著者注:UUCPを使ったコンピューター接続。やがてJUNETと呼ばれるものに)の研究をしていた。「村井先生、やってるのそれ、何ですか?」との問いに「これは研究だ」と答えながら。

悪いことをしようと思ったら……あ、違った!新しいことをやろうと思ったら大学でやんなきゃいけない。社会が新しいことに挑戦するためのリスクを取るのは大学の役目だと、俺は思ってる。というわけで、企業の人は大学にお金を払って新しいことをすべきだと思うんだけどね(笑)

しかし情報処理学会でJUNETの説明をしたら、「電子メールは重要だと思うけど、村井、それは、地下でやれ」と言われた。当時いた東工大でも

「東工大では研究として認めません」
「研究なのに、なぜこれを認めてくれないんですか?」
「東大でやってないからですよ」

と言われた程。「へぇ~~~、そーなんだ~♪」と思って、その時丁度東大からも声が掛かってて「僕、東大にいきま~す」って言って行ったんだけどね。だからコンピューターを専用線で繋ぐWIDEプロジェクトってのは東大で始めたわけ。

人と社会に受け入れられてこそのソフトウェア

後藤先生に言われた一言
後藤先生に言われた一言

東大へ行ったその頃(1986年)には、JUNETって100組織くらいが繋がってた。北大から九大まで繋がってて全国制覇!ってね。だから関係者の間では既に「ミスター電子メール」くらいのちょっとした有名人になっていた。

ところがその勤め先(東大)のセンター長で後藤英一っていう偉い先生がいたんだけど、ある日「村井君、村井君、これ見てごらん」と呼び出され、部屋にあったFAXを見せられながらこう言われた。

電子メールよさようなら、FAXよこんにちは

電子メールはキーボードから一生懸命文字を打つのにFAXだと手で書いた文字がそのまま送れることに気が付いた先生の一言だった。

「俺は一部の世界では認められているけど、この人には認められていないんだ」マーケットとして捉えた時、口説くべき相手は誰なんだろうとこの頃から考えるようになった。ソフトウェアって、いいものだから認められるのではなくて、人と社会に受け入れられるから認められるんだよね。

岩波書店にIXを置いた理由とは?

(著者注:1989年頃の話)専用線を使ってコンピューターを繋ぐということにはやっぱり抵抗をもたれていた。(著者注:NTTなど民間企業の設備であるため)「民間企業を繋ぐなんてとんでもない!」と。しょーがないので岩波書店に設備を設けることにした。

岩波だって一民間企業でしょって思うでしょ?ところがこれまたオカシなものでさ。岩波って先生方が(出版で)よくお世話になる企業だから、親近感を抱いちゃうのね。だから

「岩波はいーよ。だってアカデミックだもん!」

って言わせて説得に成功した時は「やったー!」って思った。それで岩波の中に場所借りてさ、そこをハブ(IX)にして大学間を繋いだわけ。(著者注:参考→WIDEヒストリー及びNSPIXP

グローバルインターネットはどこから来たか知ってる?

インターネットの本格的な始まりは間違いなく4.2BSD
インターネットの本格的な始まりは間違いなく4.2BSD

去年、バークレイで、「グローバルインターネットはどこから来たか知ってる?」って話をしてさ。「4.2BSD、ココだよ」みたいなこと言ったんだよ。俺もこのあたりの頃から(BSDを作ってた)CSRGの連中と一緒にやってたんだけど、この4.2BSDにDARPATCP/IPが実装されて、間違いなくここからインターネットが本格的に広まったんだよ。それまで世界の研究機関に広まっていた4.1BSDを4.2にバージョンアップするだけでTCP/IPが動き出したんだから。

この時バン・ジェイコブソンさんってヤツが、パケットの経路を暴き出すtracerouteっていうけしからんツールを発明してこれが大流行。そしたら世界中のあちこちでバッタバッタとネットワークが落ちた。どうやら4.2BSDが抱えるICMP(TTL)処理のバグにあったということが解ったんだよね。でもそれは、当時みんなその4.2BSDのソースコードを読んで自分の環境用の実装を作ってたわけで、みんなが4.2BSDをリファレンスコードとして忠実にその作法を守ったということなんだけど。

4.2BSDの熱狂を再び起こせ!

やがてIPv6の仕様を作った時、これを普及させるためには4.2BSDと同じことが起こらなきゃダメだと想像できた。でもそう思った92年頃、CSRGには実質的に誰も残ってなかった。爆発的に広まりつつあったインターネットをビジネスにするのでみんな忙しくなっちゃってて。「BSDに関わっててまだ大学に居るヤツって誰ー?」って世界中見回すと、「え、俺だけ!?みんな大金持ちで俺一人が貧乏?」そんな感じ(笑)。

じゃあどうしようか……?それじゃ俺たちがやんなきゃ!って言ってやり始めて、それがやがてKAMEになってv6のリファレンスになっていった。

≪村井先生はネットワーク屋の前に、Unixマニアだ!≫

私が先生のトークを観戦して抱いたのは、インターネットの父である以前にこの人もまた一人のUnixマニアだったんだ、という思いでした。日本ではとかくインターネットの父として語られますが、それはまだコンピューターネットワークが未開拓だった日本において、UnixのソースコードにあったUUCPTCP/IPのコードを動かしてみたい、そんなマニア心が原動力だったのではないかと。

トーク中、「某バージョンのBSDなんて目を瞑ってviできた」や「寝ながらカーネルデバッグできた」に始まり、コンピューターやUnixをしゃぶり尽くしていた話が次々と語られ、次第にそうとしか思えなくなりました。Unix哲学に強い影響を受けながら仕事をしている本イベント主催のUSP研究所に対し「こんな奴らがまだいたんだ!」とエキサイトするシーンもありましたが、これもそれ故なのだろうと。

村井先生と親交の深い人達……有名人ばっかりだ!
村井先生と親交の深い人達……
有名人ばっかりだ!

トークの終盤では、ビル・ジョイ(BSDまとめ役・vi,csh作者)、カーク・マキュージック(UFS等開発者)、エリック・オールマン(sendmail作者)といった、Unixの名だたる偉人達とのエピソードを披露していましたが、当時はまださほど有名ではなかった彼らとUnixという名のプラットフォームで会話をし、そして皆でUnixを成長させていった光景が目に浮かぶようです。そんなUnixマニア集団の中にいた一人がJun Muraiという日本人だった、と。そう思うと、今更ながら俺はスゴい人に会ってきたんだと、身震いします。

ありがとうございました。

というわけで次回、後半戦のレポートに続きます。今度は先生もツッコミ役司会役に回りながら、三人のゲストを迎え撃ちますよ。(ツッコミ役に回ったはずが、よりによって味方からツッコミを受けるシーンも!)

vol.10 ご来場ありがとうございました!そしてvol.11のお知らせ

こんにちは、かなり屋です。

TechLION vol.10にご来場いただいた皆さま、誠にありがとうございました!
そしてUstreamから応援いただいたかたがたも、一緒にもりあがっていただきありがとうございました!

vol.10のTLとりまとめはこちらになります☆
2012/11/16 TechLION vol.10 #techlion
TechLION vol.10のまとめ
読み返すと興奮がよみがえってきますね〜

さてさて、次回のTechLION vol.11のお知らせです。

 

◆◆TechLION vol.11◆◆
日時:2013年1月16日(水) 19:00開場、19:30開演、22:30終了予定
場所:SuperDeluxe (東京・六本木)
出演:宮原徹(1月9日生まれ)、廣川類(1月9日生まれ)、米林正明(1月10日生まれ)、ほか交渉中
MC: 馮富久(1月9日生まれ)、法林浩之

 

今回はMC馮さんや出演者のみなさまが1月生まれということで、誕生日スペシャルになる予定!?

更新情報は随時アップいたしますので、
TechLION vol.11
こちらでチェックしてみてくださいね♪

法林浩之さんが日中韓OSSアワード特別貢献賞を受賞!

こんにちは、かなり屋です。

我らがMC法林浩之さんが「第11回 北東アジアOSS推進フォーラム」にて「日中韓OSSアワード特別貢献賞」を受賞されました!
誠におめでとうございます!!
TechLION vol.10開催直前の朗報ですね〜

法林さんによると、当日は授賞式で盾を授与されたほか、日本の受賞者を代表してスピーチも行ったとのことです。

資料がSlideshareに掲載されています。

ますます勢いを増す法林さんに会えるのは、今週のTechLION vol.10ですよ、みなさま☆
11月16日、六本木SuperDeluxeにてお待ちしております♪

TechLION vol.10の事前申し込みは11月15日の14時まで、
ズバリ【本日の午後2時まで】でしょう!
まだ残席がありますので、お申し込みはこちらからどうぞ♪♪
TechLION vol.10

vol.9報告―熱い話に与太話、神戸のゲストも半端じゃなかった!

おしゃれな街神戸@うろこの家こんにちは。USP MAGAZINE編集長まつうらです。

先週木曜の10/4、TechLIONはまたまた東京を離れて遠征しました。かねてから告知してきましたように舞台は神戸。私はちょっと前から神戸に入って街を歩きましたが、港あり、各国の旧領事館あり、レトロで異国情緒たっぷりのお洒落な街でした。

この街に、酒を酌み交わしつつ、ぶっちゃけ話を繰り出しながら、技術や技術者を熱く語るこのイベントがお邪魔しました。というわけでTechLION vol.9レポートをお届けします。

ウォームアップ中……

Varit店内

Varit入り口2

日が暮れる頃、会場となる神戸Varitさんへ……。昼間見てきたレトロモダンな街並みから一転、ここは大人の隠れ家。これまた別の味わいを持つ神戸の夜の顔といったところでしょうか。酒を呑みながら語らうTechLIONにピッタリですね。

出演者の控え室を覗きに行ったら既に全員揃っていて盛り上がってました。

中野先生もご挨拶に出演者談笑中台詞の打ち合わせとかそんなことではなく(TechLIONは勿論脚本ナシです)、ご挨拶を兼ねた軽い世間話。今回のこの時間は、今まで一番テクニカルな話題で盛り上がったらしいですよ。

話し込んでいたらvol.4@大阪にご出演くださった中野先生もご挨拶に見えました。前回はありがとうございました。是非今夜も楽しんでいってください。

参加者の皆さんも準備OK只今セッティング中ステージの方も、セッティングを進め、開場の時刻を迎えると少しずつ参加者の皆さんがいらっしゃいました。事前参加申込者がボチボチだったので少々心配しておりましたが、開演前に多くの方が来場してくださいました。ホッと一安心……。

本番スタート

みんなでかんぱーい!開演の19時30分を迎え、テーマ曲とともに司会の法林GM&馮Pが登場し、本番スタート。法林さんにとって神戸は出身地でもあるので特別な思い入れがあるそうで、そんな話を交えてご挨拶。でも、今回は準備の段階にだいぶページを費やしてしまいましたので、「飛ばしましょう」。でもトークの前に皆で乾杯したことは重要なので紹介しておきます。

 #1 松本悦宜さん―関西をセキュリティ話で盛り上げたい

松本悦宜@神戸デジタル・ラボさん今日のトップバッターは松本悦宜神戸デジタル・ラボさん。今日やるプレゼンのタイトルは「神戸で学ぶセキュリティ」

松本さん、大学院を出て今年会社に入った新入社員なのだそうですが、既にやっていることがスゴいですね。Mashup Awards 7に「リア充爆発しろ」という、リア充の位置情報を共有して地図上で爆発させるアプリを作って応募して、ねとらぼ賞を受賞したり。

ツクランドに想定外の事態
ツクランドに想定外の事態
ペロペロ.jp
ペロペロ.jp

それから、ペロペロ.jp。これは、短縮URL生成サービスだそうで、例えばhttp://あずにゃん.ペロペロ.jp/を中野梓の用語解説のページに転送させたりできるというスグレモノ!いやいや、スゴいなーと思ったのはそんなしょーもないもの(失礼……)だけではありません。

インターン時代から意図的にセキュリティホールの存在するWebアプリを作り(出題し)、知識を深めてきたそうです。そんな出題用に作ったサイトの一つがツクランド。これも勿論あるセキュリティーホールが仕込まれているわけですが。なんと、想定外のセキュリティーホールを見つけられてしまうというオチが!「よくぞ見破った」と言いたかったところですが、そこはちゃんと直して……。なんてこともあったそうです。

セキュリティー問題って、用語だったり仕組みだったりが小難しいですけど、これなら出題側も挑戦側も楽しくスキルを身につけられますね。私も参加したいなぁ。

今後の目標は、関西をセキュリティー話で盛り上げることだそうです。「関西人はどうしても東京と比べてしまう。負けているのは許されへん!みたいな」とのこと。そんなわけで、最後に地元で今後開催する勉強会(10/20姫路IT系勉強会,10/28Haskell 入門ハンズオン in 明石)を宣伝されてました。お近くの方、是非ご参加ください。

#2 村岡正和さん―もうバスワードにダマされんな

村岡正和さん続いて登場したのは村岡正和@バスタイムフィッシュさんで、プレゼンタイトルは「HTML5時代のWebクリエイターに必要なこと」です。(→当日スライドはこちらです)

HTML5-WEST.jp代表として有名な村岡さん。神戸中心にフリーで、Webアプリの設計開発から、それで業務をどう改革していったらいいかなどのコンサルティングまでこなしていらっしゃいます。

そして恐らく今日のゲストの中で一番熱くメッセージを訴えていらっしゃのではないかと思います。お酒をグビっと呑んで机にカンっと置き、写真のとおり立ってプレゼンされてました。まさにWeb/HTML5の西の雄!

HTML5。みなさんご存知ですよね。じゃあ、HTML5って何ができるのか?そんなところからトークがスタート。Googleのホリデーロゴ等でも時々見せ付けられますが、いろいろできるんですね。Canvas機能を使ったこんなのとか、こんなのとか、こんなのとか、こんなのとか……。他にも GeolocationWebSocketWebStorageIndexedDB、さらにはGPSと繋がるなど従来のWebアプリにできなかったことが色々可能になりました。

HTML5時代の制作者に必要なこと
HTML5時代に必要なこと
地球-火星間通信にはHTML5必須!
火星との通信にHTML5必須!?

HTML5はWeb制作を変えてしまいます。グラフィック、ネットワーク、データベース……、専門分野が増えることで、これまでの知識だけでは不十分になるばかりか、これまで異業種とされていた人々がどんどん参入してくるでしょう。

そこで村岡さんはこう主張します。(→右写真) 自分の専門分野を他者に負けないように深め、広がった分野の全体を見通せる知識を持ち、常に新しいことに取り組め、と。当たり前に聞こえるかもしれませんが、確かに実践できるかといったら難しいことです。

また、コミュニケーション力も更に重要になってくると言います。それは専門分野が増えて、一人でカバーするのが難しくなってくるからというわけです。複数人での開発といえばアジャイル開発という手法がありますが、計画に柔軟性を持たせるためのこの手法を無計画でもよい手法と誤解してはいけない!など、トレンドの移り変わりが特に速いこの業界において、バズワードにダマされんな、と警鐘を鳴らしました。

Web業界で生きていく厳しさを見せられましたが、興味深い話です。 そしてしばしの休憩の後、後半戦へと続くのでした……。

 #3 岡田陽一さん―コツは休憩時間に「どこかで止まって」と頼むこと

岡田陽一@ふわっとさん後半戦お一人目は、岡田陽一@ふわっとさんです。写真撮影の仕事を長くされてきており、プロのカメラマン。

プレゼンのタイトルは「30分でわかるITイベントでうまく撮影するポイント」ということで、TechLIONの取材担当である私はこのトークが気になってました。そして、このブログにもそのトークの内容をコッソリ取り入れてます。(読めばきっとバレます)

最初に衝撃的な一言。

photographは写真と訳されますが、photoとgraphを直訳するなら『光画』とでも言うべきもの。写真は真実以外も写るんです。

うぁ、そこまで言い切ってしいますか。確かに最近は目を大きく写すデジカメとかありますが、そういうあからさまな細工ではなくても撮り方次第で印象は随分変わるといいます。

活気あるイベントに見せるには簡単な質問に答えているシーンがいい
勉強会に活気を見せる一枚
撮り方次第で混雑してるように見せられる、と聞いてTechLIONで実践してみた
盛況具合は撮り方次第

例えば、左側の写真。この中にさらに2つのスライド写真があります。(一つは左上に貼り付けました) どちらも同じ勉強会の風景ですが、撮る位置によって参加人数に関する印象が全く違います。確かに!そこでこの写真も、このTechLION会場を真似して撮った写真になってるんです。「じゃあ本当はあんまり参加者居なかったのかって?」そ、そんなことないですよね。>参加者の皆さん

また、右側の写真。皆、手を挙げています。これもイベントを活気あるように見せるポイントで、簡単な質問で皆が手を挙げる瞬間を狙うのだそうです。なるほど。しかし、この写真(CSS Niteにて)、女性率多いですがこれも何かそういうテクニック使っているのですか?と質問すると、「CSS Niteは女性率高いんですよ。これは真実で、写真は真実も写るんです」と一言。どっちなんですか(笑)。

他にも岡田さんが気を遣っているコツがいくつかあって、一つは発表者の手が動いていていかにもプレゼン中であるように印象づけること。もう一つはその背景にスライドが写っていること。というわけで、このブログの岡田さんの写真もその話を聞いた後、撮りに行った一枚だったりします。

ただ、スライドを映している会場は暗いので動きっぱなしの発表者はブレ易くてカメラマン泣かせ。そういう人には休憩中に「本番中どこかで止まって」とネゴシエーションするのだそうです。そうすればロクロを回して静止してくれる人もいるのだとか。な、なるほど……、勉強になりました。次回TechLIONのゲストにお願いしてみます。

#4 安田豊さん―与太度、足りてますかー?

安田豊@京都産業大学さん今回のTechLIONも残すはあとお一人となってしまいまして、取りを飾るのは安田豊@京都産業大学先生。

私はびっくりしました。お名前のとおり、何と個性豊かな方なのかと!トークを始めるやいなや、「あの皆さん、与太度足りてますか?」と言い出し、ステージ上からおつまみを注文。

いや、TechLIONならここまでは普通です。何がびっくりしたかって、届いたおつまみをポリポリ食べて、食べながら喋って、しかも吹き出すという……。いや、わかります。そうやって来場者の肩の力を抜かせるための余興ですよね。ありがとうございます。TechLIONは先生のような方大歓迎です。でも、間違いなく神戸TechLIONの記憶に残るワンシーンとなりました。

取材してきた錚々たる顔ぶれ
取材してきた偉人たち
SoftwareDesignに寄稿してます
SD誌で記事書いてます

さて、安田先生。トークは題して「おいしい話はどこにもない。シリコンバレー・エンジニアへの取材で感じる彼らの総力戦。」 皆様、雑誌Software Designに安田先生が記事を寄稿しているのはご存知ですか?主にシリコンバレーでコンピューターの歴史を築いてきた偉人達にインタビューする記事なのですが、その取材話というわけです。

昔は高校生・大学生だった自分が読んでワクワクするような記事が多かった。でも今の雑誌ってハウツー的なものが多くて。例えば「○○をインストールしてみました」とか。「あれはちょっとワクワクせんなぁ」って思った……

そもそもこれが、そのような記事を書かれている理由だといいます。小雑誌をやってる一人として私も身につまされます。

そして、実際に取材をしてきた偉人達の話へと移るのですが……。「とても全部は紹介しきれないので飛ばしましょう」(→取材した偉人の数々は前述のスライド写真で) ということで、Brendan Eich(ブレンダン・アイク)の取材話を紹介しました。

リンク先にもあるとおり、彼はJavaScriptの生みの親。そしてMozilla社のCTOとして知られる人物です。

恐るべき不屈の精神
恐るべき不屈の精神
Brendan Eich「データを棺桶に入れるな」
Brendan Eich

取材時のBrendanの話によれば、彼はデータを棺桶に閉じ込めるなと言っていました。これはFlashのようなベンダーのライセンスがなければ開けないコンテンツを指しています。この棺桶から解放するためにハードウェアを駆使した描画環境を作るんだと主張し、半導体からソフトウェアから、そしてベンダー非依存の規格の策定まで、あらゆるアプローチでこれ(=HTML5)を成し遂げようとしました。これらはかつて在籍していたSGIMicroUnityNetscapeで身につけた技術の総動員でした。ところが一方で、動画においてライセンス縛りのあるH.264をMozillaは受け入れざるを得なくなってしまいました。でも、彼は

“We lost one battle, but the war goes on”
一戦には敗れたが、戦争は続く。

Waldemar Horwatへの取材のチャンスをください。
彼を取材したい!!
全てを投入し不屈の精神を持っている
全てを投入/不屈の精神

といって、決して諦める事無く、今でも戦いを挑んでいます。そんな彼の壮絶な話を聞いて安田先生が感じたのは、シリコンバレーの人々の「全てを投入」「不屈の精神」だったといいます。何という執念なんでしょう。恐ろしくもありうらやましくもあります。

という感じで取材を続けていらっしゃる安田先生ですが、最後に一つお願いがあるそうです。ActionScript3に関わり、今はGoogleに在籍しているというWaldemar Horwatにコンタクトが取れるという方は是非紹介してくださいとのことです。お心当たりの方は是非安田先生にご連絡を

 皆様ありがとうございました

今回のレポートだいぶ長くなってしまったので「巻き」でまとめますが、実に面白かったですよ。

というわけで、会場やUstreamで、観覧者としてゲストとして現地スタッフとして、参加してくださった全ての皆様に感謝を申し上げ、レポートを締めくくりたいと思います。ありがとうございました。

次回vol.10はもう来月!また頑張りますので来月もご参加よろしくお願いします。

vol.9 ご来場ありがとうございました!そしてvol.10のお知らせ

こんにちは、スタッフかなり屋です。
神戸のTechLION Vol.9、ご来場いただき誠にありがとうございました♪
また、Ustreamからご覧になったみなさまもありがとうございました♪♪

さて、次回のTechLION vol.10は六本木での開催ですよ!

開催日:2012年11月16日(金)
場所:SuperDeluxe (東京・六本木)

今回から申し込みサービスがdoorkeeperに変わりましたので合わせてお知らせいたします。

  • 料金パターン1(事前予約・事前支払) 2,700円(1ドリンク700円分込)
  • 料金パターン2(事前予約・会場支払) 2,700円(1ドリンク700円分込)
    (当日受付にて現金をお支払いください)
  • 料金パターン3(予約なし・会場支払) 3,200円(1ドリンク700円分込)
    (※事前予約で満員となった場合、ご入場できなくなる可能性があります。あらかじめご了承ください)
  • 事前予約フォーム
    TechLION vol.10

Vol.10の情報は
http://techlion.jp/vol10 で随時更新いたしますので、チェックしてみてくださいね。

みなさまのお越しをお待ちしております!

Vol.8報告(2/2)―Twitterゆかりのゲスト達がソーシャルメディアの道筋を語り合った

引き続きUSP MAGAZINEまつうらです。TechLION Vol.8の報告後半しゅっぱーつ!前半をご覧になっていない方は是非読んできてください。

今回のTechLION第二部はTwitterゆかりのゲスト達を招いてTwitter談義をするという、Twitter祭りを開催しました。それぞれに人生あり、ノウハウあり、考え方あり、そして思い描く未来あり。たかがTwitterでは終わらせられない深い話が多数飛び出しました。

Twitterゆかりのゲストお三方

本日のかんぱーい!申し遅れましたが第二部のサブタイトルは「ジャングルバス.com」。Twitterについて、開発者目線、ユーザー目線で熱く語っていただくわけですが、まずは第二部から登場したゲストをご紹介。

とその前に、第一部でやり忘れていた本日の乾杯を出演者+ゲストみんなでしました。

かんぱーい!

そして、LT風にお三方が順番に自己紹介。

ユーザー代表 高橋真弓@Six Apartさん

高橋真弓@SixApartさんMovable Typeで有名なSixApartで広報とマーケティングをなさっているという高橋さん。Twitter上では、 @mayumine(本人)、 @sixapartkk(会社)、 @tophlove(「トフ」という会社のマスコット)、の3種の人格(1つは動物?)を使い分けているそうです。本人はもちろん本人、会社は会社らしく清廉潔白に、トフは「トフ」しか喋れないアカウントだそうです。(我TechLIONにもてっくんというマスコットが……) またURAMAYUというブログを書いているブロガーでもあり、GIZMODO JAPANNAVERまとめ等もなさっているそうです。

Twitterで一番印象深い出来事は2009年、国内のTwitterの盛り上がりもあってニュース番組ワールドビジネスサテライトで会社が取材され、こともあろうに酒が入った状態で受けたインタビューの様子がオンエアー。でもまぁそれはチャンスとばかりにブログに記事を書いたところ、放送から1週間でフォロワー数が2000~3000人増えたということがあったそうです。

開発者代表 藤川真一(えふしん)さん

藤川真一(えふしん)さん現在F’s Garageというブログを運営中。

2007年4月、日本のTwitter黎明期。会社員をやりつつ日本初の携帯電話向けTwitterクライアント「movatwitter (現モバツイ)」をリリース。

当時はまだ日本にiPhoneが無かった頃であり、数少ないモバイル向けTwitterクライアントとして支持されたことや、2009年に国内でTwitterがブレイクしたことも手伝って、最終的に160万ユーザーを抱えるまでに成長したそうです。

2010年にこれを運営するための会社を設立(その話は自伝として本にもまとめたそうです)、業界がスマートフォンへシフトする中でスマートフォン向けクライアントもリリースしましたが、今年5月、熟慮の末に会社を売却して現在に至ったといいます。

開発者代表 山本裕介さん

山本裕介さんジュノンボーイにも同姓同名の方がいたりしますがあちらは俳優界のイケメン、山本さんエンジニア界のイケメン。二児の父で、実はイクメン(育休中)でもあります。

コンピューターとの出会いは、ファミコン買ってとせがむ兄に与えられた MSX1。そしてBASIC・Z80マシン語から手を染め(筆者はここに感動ですよ!)、Pascal, Fortran, Java, C/C++  と様々な言語を使いこなせます。

2007年、Java向けのTwitter API、Twitter4Jを制作。仕事面では、エンタープライズIT系企業を経て、RedHatでオープンソースの世界を垣間見つつ、先程のTwitter4Jも相まってTwitter APIポケットリファレンスを執筆。そんな実績がTwitter社の目に留まり、オファーを受け、Twitter Japanでデベロッパーアドボケイト(開発者支援役)として働き始め、大規模Webシステムを学んだそうです。

Twitter座談会:

以上のお三方+第一部に引き続き砂原先生と、司会の二人(馮P&法林GM)の計六人でTwitter座談会スタート。かなり要約してしまっておりますが、以下、会話形式でお送りします。

Twitterにまつわる人生の変遷

: 一度Twitterをテーマとしてやりたいって思っていました。そんなわけで今日お三方をお呼びしたのですが、気付いてみればえふしんさんと山本さんはお呼びした後、ポジションが変わっていてあれ?みたいな。えふしんさんはどのくらいのタイミングでバイアウトを考えていたんですか?

えふしん: バイアウト自体は今年の頭くらいですね。2010年設立のマインドスコープの役割はTwitterから離れることだと思ってました。(黎明期を支え終えて)ご苦労さんって言われて会社が潰れちゃうのはリスクですから、それ以外の柱を持たなきゃいけないっていうのがありましたし。

: ご自身で何か新しいものを創りたいとか思いますか。

えふしん: まあ……明確にやりたいものがあればマインドスコープで行ったと思うんですが、そういうことではなくて一からやり直そうと。これまで5年間ずっとケータイ中心で、ケータイもだいぶレガシーになってきてますし。

: 山本さんはどういう経緯で?

山本: 僕はやっぱデベロッパーアドボケイト(開発者を支援する役)なんですよ。WebのAPIを使っていろんなサービスが広がったら面白いなあと思うんです。それでTwitter4Jも作って。アプリをやりたいなと思うこともあるけど、Twitter4Jなんかにもいっぱい要望が来て忙しいし、やっぱAPI面白いし。
そんな感じでフリーランスやりながら本書いたりして頑張ってた時、Twitter社から声が掛かって、それで給料貰えるならいいかなと思って。でも次第に、本国に来て開発を……という流れになり、それもちょっとやりたいことと違うなとモヤモヤしてきました。既に僕には家族もいますし。それでイクメンしながら好きなアプリケーション作って飯食えたらいいなって思ったんです。

: Twitterが登場した2006年からたかだかこの5,6年でこれだけ人生が変わるような出来事が起こるんですね。高橋さんは昔と今で、使い方変わってきてたりしますか?

高橋: 当初は友人とのコミュニケーションツールとして使っていたんですけど、フォロワーが増えてきて、最近はあんまりプライベートなつぶやきとかしなくなっちゃいましたね。Twitterは情報発信系に、そしてプライベートはFacebookに。

法林: Twitter自体があまりアクセス制限の仕組みとかないですよね。だからプライベートなことには実はあまり向いてないという。

Twitterを如何なるツールと捉えるべきか

山本: Twitter社自身も「TwitterはSNSではないですよ」と言ってます。SNSの括りに入れられたりしますけど、ソーシャルグラフではなくインタレストグラフなんだと。片思いできるのが特徴ですからね。

(編注:このあたりで山本さんが、#techlionのタイムラインをリアルタイムに舞台のスクリーンに表示するという計らいを……。すると!観覧者から多数の静かなツッコミが入っていたことがあらわになり、その後も激しいツッコミの応酬に……)

#techlionハッシュタグタイムライン1砂原ミクシィは完全に閉じてて、Facebookは何となくコントロールできてて、Twitterは完全にオープンで、僕は書きかけて消すツイートが最近結構あるんだよね。一般的な例えで言うなら、「原発賛成!」みたいなのとかね(飽くまで一般例だからね!)。
慎重に言うべきこともあるだろうけど、でもあえて言わなきゃならないこともあると思うんだよね。そういうのって何か意識してる?

高橋: 少なくとも酔っぱらってる電車の中では投稿しないっていうルールを作りました(笑)。

砂原: そう、人によっては酔っぱらってる時ずーっとツイートしてて「こいつ大丈夫か?」って思う奴もいるし、何もわからないこどもなんかもそうだし、でもわかってて意図的にやってる人もいるんだよね。
ここらへんのバランス感覚をどう考えてますか。こどもにTwitterという道具を与えるとしていつなら大丈夫かとか。

観客からの静かなツッコミの応酬山本: うちの子は既にデジタルネイティブ世代ですねー。テレビをタッチして「これもう一回再生しろ」みたいな(笑)。 いつからTwitterをっていうと、もう生まれる前から専用のアカウントを持ってやってます。「生まれたよ」とか。

高橋: 大人になったらそのアカウントをお子さんに明け渡すんですか?

山本: 本人が嫌がらなければ。もしかしたら「ざけんじゃねー」とかいって最近出た全削除ツールで消されるかもしれませんが(笑)。
それで僕自身としてツイートする時は、今はTwitterの中の人としての発言になってしまうのでそこはやっぱり社内のレギュレーションとかありますね。 指針としては、競合他社に関して発言するときは批判的なことは言うなとか。

#techlionハッシュタグタイムライン2えふしん: Twitterは「つぶやく人が放送局になれるのが素晴らしい」と言うんだけど、「有益な情報を発信してフォローしてまじめに使いましょう」って言っても普及しないんですよ。Twitterのつぶやき欄に“What are you doing?(今何してる?)”って出てくるけど、日本人にとってみれば結局何を書けばいいのかわからないですから。逆にたからこそ、ギーク達が独自の使い方を産み出して、これ面白いじゃんといって普及していったと思うんですよ。そうしてやがて有名人の情報拡散装置になったり、バカ発見器になったりしていったと。

えふしん: 震災とかの有事の時にネットワークとして使うっていう考えもあるけど、例えば「僕は無事ですよ」とつぶやいたって相手が見てなきゃ伝わらないんです。Twitterって要するに、日常のどうでもいいようなところで使われているからこそ価値があって、だからミクシィなんかとも使い分けられてきたんですよ。みんなそんな有益なことできないですもの。無駄を許容したところが、設計的にTwitterが偉大だったところですよ。

クジラ(高負荷)に見る、Webの設計思想

砂原: 3・11の時にさぁ、Twitterでクジラ出なかったの何でなんだろう思わない?あの時にクジラ出てたら、震災の時Twitter使えるなんて誰も言わなかったでしょ。

法林: クジラってあの、Twitterが処理しきれなくてサーバーが落ちてる時のアレね。

砂原: あれ、裏ですごかったでしょ?俺もちょっとその話聞いたんですよ。そういう事って知らないじゃん、みんな。だけどそういう事を知ってもらうことによって、例えばサーバーの仕組みは本当にこれでいいのかとかそういう話ができるんだよ。ごめん、話を遮って(笑)。

ぶっちゃけバルスの方が大変ですよ山本: 震災発生当時はやっぱ大変でしたね。でもぶっちゃけ「バルス」の方が大変だったですよ。

: モバツイなんかもあの時落ちないようにされたんですか?

えふしん: やっぱあの時はひたすらサーバー増やしましたね。都会でも帰宅困難者がいっぱいいてケータイ使いましたらからね。サードパーティの役割としてやっぱ落としちゃいけないなって。あの時は利益度外視でしたね。テレビも広告一斉に消えましたし、メディア全体がそうでしたから。

: 山本さん、改めて伺ってみたいのですが…

山本: (編注:この時ツイートしていて端末いじり中だった)あ!はい。技術的な観点で僕は学ぶことがいっぱいありました。最初エンタープライズ畑にいたのでそことはだいぶ考え方が違うんだなと。Webは絶対落ちちゃいけない、じゃなくてとにかくできる限りサービスを継続することが大事っていう。そこはアーキテクチャもよく考えられてるなと思いました。
例えば、ツイートは受け付けるんだけども、非同期。すぐに書き込まないとか。あとフォロワーがたくさんいる時。一言ツイートするだけで何万人ものタイムラインに現れますけど、そこを従来のメールと同様の作りにしていると全然追いつかない。そのために極端な話「時々失敗してもいいかな」くらいの作りをしている。そこはエンタープライズと全然違う考え方で対策をしているんです。
ホエールウォッチングそれでクジラもどんどん出なくなってきた。でも寂しいですよね。そろそろまた会いたいなーみたいな(笑)

(編注:山本さん、ここでクジラの画面を披露。これは、このURLを開くといつでも見られるという。更にクジラでないパターンも。)

観客: クジラを釣ってる鳥の数直しましたよね。偶数羽でないと釣れないはずなんだけど、最初奇数羽いたっていう。

法林: スゴいポイント見てますね!

Twitter、そしてソーシャルメディアの今後は?

: Twitter以前だと2004年のミクシィがあったり、最近だとLINEが5000万ユーザーを突破したりなど、人を繋ぐいろんなツールが登場してきました。ではTwitterの今後のポジションについて、皆さんどう思われますか?予想や意見、あるいは自分はどう付き合っていくかなど、お聞かせください。

山本: クローズドなmixi、オープンなTwitter、中間くらいのFacebookと、ソーシャルツールは一通り出てきた感はありますけど、LINEってあれはあれで画期的な気がします。電話を通じたソーシャルな繋がりっていう意味で。今後は電話帳を登録しない人が出てくるのかとか、既存のTwitterなどとどう繋がっていくのかなとか。
あと個人的にはAPI提供してくれると面白いなと。LINEの人にメール送ってみたり したいですよ。だから「よかったらLINE4J作るよー」って言ってるんですけどね。

えふしん: Twitterの最大の特徴はやっぱり140文字を守り続けることではないかと思うんです。最初電子メールが登場しましたが、その中の需要の一部にとってはそんな特徴を持つTwitterの方がより適切で移っていった。それと同じでTwitterの一部の人達にとってみると更にLINEに移る方がいいかもしれません。でもTwitterはTwitterとして、有名人とふらっと繋がるとか、ちょっとしたECがお客と繋がったり、そういうところが洗練されれば今後も残り続けると思うし、他メディアもそうだと思います。

高橋: えふしんさんの言うとおり、140文字というシンプルさだけは変えないでほしいです。300文字以上つぶやけるようになりましたとか、SNS機能が付きましたとかいったらTwitterの価値が無くなっちゃうと思います。
多分ですけど、Twitterはインフラ的な方向に寄っていくんじゃないかなと思っています。今iOSに統合されていますけど、よりいろいろな所に不可欠ものとして取り入れられる形で成長していくのかなと思っています。

: 砂原先生はどうお考えですか?

砂原:  俺は全然違う事考えててね。
いろいろなサービスが出てきたけど、それが一企業の提供するサービスである限り、その先は無いと思ってる。TwitterはTwitterの人がやるし、FacebookはFacebookの人がやるっていう……。ミクシィ、LINEもね。これを更に考え直してアーキテクチャが変わると思う。ただ通信するだけのメディアだったインタネットが今HTTP(Web)レイヤーで接点を持つ段階に上がって来たけど、将来は更にその上のレイヤーに接点ができて、そこにいろんなサービスが乱立してくると思う。

大学の先生みたいなこと言いますね法林: (ここまで全然それっぽくなかったのに)大学の先生みたいなこと言いますね。

砂原: (苦笑)でもそれができなかったら次は無いと思う。JUNET始めた時、今こんなになってるなんて誰が想像したか。その段階に来たときに、今の学生やこれからの人達がいろいろ考えてくれるはずなんだよ。えふしんさんや山本さんもたぶんそんなことを考えるから、次の展開へと足を踏み出してるんだと思うんだよね。

法林: そういう曲がり角に来ている時期なのかもしれないってことですね。

: そういった形にで積み重なっていって、5年後10年後、これまでゲストに来て下さった方達も交えてまた話をしてみたいですね。今日は皆さんどうもありがとうございました。

座談会を振り返って

会場で交わされたTwitter談義。ブログなんかじゃとても全てをお伝えすることはできませんが、他にも興味深い話、大切な話がたくさん出てきました。その補足も兼ねてちょっとだけ書かせていただきますが、今回の座談会の中で筆者が個人的に考えさせられたのは、いわゆるバイアウトの話とバカ発見器的側面の話でした。

司会の馮さんはバイアウトの話を振っていましたが、あれは、世間で思われがちな「バイアウト=勝ち組」な印象が本当にそうなのか今一度問いたいという意図があってのことでした。実際、実体験者のえふしんさんのお話を聞いた限りでは決してそんな華やかなものではないと感じました。売却して出来たお金で遊んで暮らそうなどという雰囲気ではとてもありません。そもそも価値あるサービスの創造で先行投資したぶんがようやく返ってきたとも言えるでしょうし、人生もまだまだこれから。飯を食うためにはどうしなきゃいけないか、そして一技術者として今後をどうデザインしていくべきなのか。そういったことを考える苦労は皆と変わらないのだなという印象でした。

そしてこのレポートの要約文中では用語としてはあまり出てきませんでしたが、Twitterの座談会中はバカ発見器的な側面も議題になりました。皆さんご存知の通り、ソーシャルツール、とりわけTwitterで、思わぬ失言によって地位を失墜させてしまう人が多数います。でも砂原先生もおっしゃったように時には言わなければいけないことだってあります。言うべきことを言わなければ、最近の不正コピー品ダウンロード刑事罰化DVDリッピング違法化など、異論を残したままの法案が強引に成立するといったような事態が起こってしまいます。(この法律のことについても今回触れられていました)

我々はもっと技術者としての立場から物を言わなければならないと思います。そういう意味では、まだまだTwitterをはじめとしたソーシャルツールを使いこなせていないのかもしれません。ソーシャルと繋がれるソーシャルツールを産み出したのは我々技術者なのですから、我々こそが使いこなすお手本になるべきだし、私はなりたいと思います。

ご参加ありがとうございました

Vol.8キャスト揃ってファイティングポーズ!今回のレポートブログ、大変長くなってしまいましたが、参加してくださった皆様(ゲストも観客も、スタッフも)、ありがとうございました。互いのメッセージから何かしら考えるものが得られていれば幸いです。

いつものように、記念に出演者勢揃いしてのファイティングポーズ写真を載せておきます。(お、砂原先生!気合い入ってますねー)

さて、次回は……、またまた遠征で10月4日、今度は神戸に乗り込みます!神戸は我らが司会の法林GMのホームでもありますが、神戸の皆様よろしくお願いします。ちなみに東京の次回は11月を予定しておりますので、こちらもお楽しみに。ということで、改めて次は高坂さんよろしくおねがいします。

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Vol.8報告(1/2)―はちゃめちゃトークの中に砂原流プロジェクト立ち上げ術を見た

おはようございます。USP MAGAZINE編集長兼TechLION取材班のまつうらです。TechLION Vol.8に参加なさってくださった皆様、お疲れ様でした。

こちら公式ページのレポートなわけですが、既に当日のアツい雰囲気や感動的なお話を伝えるレポートがまとめTogetterニュースサイト様等で公開されておりまして、ありがたく思うものの、まとめの巧さにプレッシャーを感じております。

では、公式として何を報告すべきか?……私は、自分で描いたこのポスターを思い出しました。TechLIONの見どころの一つは、ゲストの人間臭さが見られる点なんですよ。そこに惚れるからこそ、ゲストが言わんとしているメッセージの意味を、深く理解できるんです。だから今回は、「ゲストの人間臭さ」という切り口でこの報告をしようと思います。

メインゲスト、砂原先生が現れた

さてTechLION Vol.8の準備をしていると、本日のメインゲスト砂原秀樹先生@慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科がやってきました。Tシャツ着てます。イベント告知の段階から背中を遊び道具にしていて、ユーモアのある方だなと思っていたら、当日も背中で見せてくれました。

砂原研特製Tシャツ2012Tシャツの後ろに何か描いてある!「ん?」と思って覗き込む法林GM(ゼネラルマネージャー)。するとこんな感じになっていたんですね。(→写真)「うちの学生が作ってくれたんだよ。これ一枚だけしかないんだ」と先生。それにしても先生、満面の笑みですね

Tシャツといえば、Vol.5で来てくださったよしおかさんがプロの酔っ払い特製Tシャツを着てこられた時のことを思い出して「まさか、この展開は」なとど、脳裏に1時間少々未来の様子が思い浮かんでいましたが、いやいや……実際は想像以上でした。

 トークは終始飛ばしっぱなし!

お客さんも準備OK、3か月ぶりの東京TechLIONの開演を今か今かと待ちわびていた中、本番開始!司会者の法林GM&馮P(プロデューサー)、そして砂原先生の軽い挨拶を済ませたあと、第一部のトークスタート!

タイトルは「思えば遠くへ来たもんだ: 次の世代とともに進む未来」。では、内容を紹介していきましょう。それにしても先生、最後まで飛ばしっぱなしでした。時々エキサイトして声のトーンが急上昇。筆者は、こういうトーク大好きです。

はちゃめちゃトーク!でもそれは、マルチな実力の証

砂原先生の今の取り組みまずは自己紹介。私(先生)は何者か?もともとの専門はスパコン。それじゃ今は何やってるか……。「自動車」「救急車」…「百葉箱」あたりはでは想像付きますが、「ゲリラ豪雨」とか「女子力」とか何ですか?(それらはトークの中盤で触れられました) これは現在の話ですが、今までもそういったものを次々立ち上げてきた「立ち上げ屋」であると、自らを称してました。

そして半生を紹介。登場人物をオカシいやつだの悪人だの容赦無いうえに、自分もオカシいと言い出しました。小学生の頃に保護者面談で担任の先生は「この子は将来、博士になるか乞食になる」と言ったそうで、それ、間違ってないのが恐ろしいですね。

学生時代の話になると、日本のインターネットの父こと村井純先生がエピソードに登場します。が、悪人と呼んではばかりません。でもそれは、氏をよく知っている人に言わせれば、黎明期に一緒に日本のインターネットを創ってきた「戦友」だからこそなのだそうです。砂原先生曰く、「村井とは寝食を共にして、一緒に抱き合いながら寝た」とのこと。えー!!!

デザインもマネジメントもポリシーも、みんな通用する人材を育てよう

先生は、奈良先端大学院大学(NAIST) 先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム(IT Keys)、そして現在は慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)で学生の指導にあたっているそうなのですが、どちらの立ち上げにも関わっているそうです。ちなみに後者の立ち上げに際しては、先生曰く「村井に『やれ!』(やってみるかではなく)と言われた」のだとか(笑)。

でもマジメな話、立ち上げて何をしたかったのか。それは、テクノロジー(技術)、デザイン(表現)、マネジメント(経営)、ポリシー(政策)、全てのセンスを身に付けた人材を育てることなのだそうです。

技術なんて教えたってしょーがない、知ってんだからそんなの。それよりも要るのはコレ(法律・倫理・経営)。つまり、「お前は悪者になっちゃいけないよ。暗黒面のフォースを使っちゃいけないんだ」って教えることなんですよ。

そんな倫理教育も然り、経営的センスも教えるそうです。

な、お前ら経営ってわかるか?
お前らが必要だと思うセキュリティの装置を入れようと思う時、それが2億かかるとする。なんで2億も必要なのかわけのわからない経営者に、「これは2億かかるんですけど、2億掛けないと18億損しちゃうんですよ」っていうような話をできるようになんなきゃいけないんだぞ。

そんな話をしようと決心したそうです。「やっぱりねえ、エンジニアってコレができないからショボいんだよ。だから搾取されんだよ」と。筆者ももっと若くに教えられたかったですね。
さらに続けます「つまりね、これらはインターネットでやってきたことなんですよ」と、

インターネットって、やろうと思ったらまず電気通信事業者法ってのが立ちはだかるんですよ。最初にモデム繋いだ時に突然NTTから電話が掛かってきて、
「この先に、電話じゃないものが繋がってるんですけど……、何ですかねぇ?」
って言われて
「ボクもよくわかりませんっ!(ガチャ★)」
とかやるわけだけど……

(編注)こういうエピソードは殆ど冗談ですからね。真に受けないでくださいよ!

僕もよくわかりませんッ!というように、時には法律を変える必要さえ出てきます。

会社作ったりとか法律変えたりとかやっていくようになった時、こういう各分野のセンスないとダメなんだよね。「だから全部教えてみよう」ってやってみたんですよ。

砂原先生のとこの教え子さん達

そして、熱心に育てていらっしゃる教え子さんたちの研究成果が披露されました。

メンバー構成

女性4割、留学生3割、社会人半数、とのことです。女性4割って技術学科では驚異的ですね。出身分野もバラエティーに富んでいて、音大卒とか美大卒とか、はたまたスタンフォード大卒業後、他からのオファーには目もくれずにやってきた学生とか。うわー、楽しそうですね。

どんな研究が……

女子力向上ミラー面白すぎてオカシすぎて(褒め言葉)詳しく紹介したいくらいなんですけど、ブログ記事もだいぶ長くなってきたので、ほんの一部をさわりだけ。

  • HAPMAP:自ら方向音痴だと公言する学生さん(美大出身)が考案。「できれば道にロープ張って案内して欲しい」との思いから、GPSや地図情報と連携するiPhoneの裏にちょっとした装置を付けて仮想ロープを実現した。
  • 女子力向上ミラー(右写真):女子力が無いと悩む学生さんが、女子力センサーを作りたいと発想。女子力という言葉が出てくるブログで併用される単語を様々分析し、女子力という曖昧な量のスケール化を実現。これに基づき製作したという。

僕の製品は、うちの学生なんだなって思った

これまで携わってきた数々のプロジェクトも、今学生さん達と共にやっている研究も、どれも基本はCyber-Physical System(=サイバー空間と物理空間(この世の形あるもの)を繋いで、何ができるかを考える)という考え方

  • インターネットにとにかく全部繋げ。
  • 情報を全部集めろ。
  • それを皆で共有しろ(ここ凄く重要)。
  • そしてみんなでアイデアを出し合って有益な情報を創ろう。
  • 楽しくやろうよ!

があるといいます。

そして最後に

だから要するに、僕の製品は、うちの学生なんだなって、改めて思ったわけです。

と結びました。くー、先生ウマくまとめたー!でも筆者も、こういうこと言ってのける先生の下で大学院生やり直したいですね。

「営業になりたくない」って言ったら負けだぞ!

トークが終わって観客からの質問の際、またガツンとくる一言をおっしゃっていました。営業になりたくないって言ってきた学生さんがいて、その時こう言ったそうです(下写真)。

営業になりたくないって言ったら負けだ!

だって自分の研究をセールスできない瞬間に負けだろ?営業ができないんだから研究もできないんだよ。

そうなんですよね。人に自分の研究の意義を説明できなきゃ予算が貰えず研究活動が続けられないですし、そもそも自分が何を研究しているのか整理できていないのかもしれず、そういう意味でも続けられるのか怪しいもの。今思えば、「二位じゃだめなんでしょうか」発言で有名な事業仕分けによってスパコン予算が減らされた時も、あれはある意味負けだったのではないかと筆者個人は考えてしまいます。

◇ ◇ ◇

砂原先生。一聞するとはちゃめちゃ言っているように聞こえる部分もありますが、思い返せばそこで語られたエピソードはどれも絶妙なバランス感覚で首尾よく歩んできたことなんだなと気付かされました。

一方あえてはちゃめちゃなジョークを飛ばしている部分もありますが、それも含め、経営者や政治家達と上手に渡り合いながら日本のインターネットを創ってきたのでしょう。

その教えを受け継いだ学生さん達は、これからどんな未来を創っていくのか。ちょっと羨ましいです。(あっ!今、私の背中にKMDの入学案内パンフレットを貼らんとしている先生の気配がっ!……ちなみに学費は年間200万円だそうです)

先生ありがとうございました。(第二部もよろしくおねがいします)

というわけでVol.8報告は、次回「後半」に続きます。
近日中に「後半」記事を追加した後、高坂さんにバトンタッチ!

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vol.8 ご来場ありがとうございました!

こんにちは、スタッフかなり屋です。
昨日、六本木 SuperDeluxeで開催されましたTechLION Vol.8は、おかげさまで盛況でした!
ご来場いただき誠にありがとうございました♪

今回残念ながらご来場いただけなかったかたもこちらからも楽しい様子が伝わりますよ〜
http://togetter.com/li/345593

次回のTechLION vol.9は神戸での開催です。
神戸はMC法林さんの故郷、凱旋開催なのです☆

開催日:2012年10月4日(木)
場所:VARIT. (神戸)

Vol.9の情報は
http://techlion.jp/vol9 で随時更新いたしますので、チェックしてみてくださいね。

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TechLIONvol.7報告―名古屋へ遠征!名古屋人の「なごやこわい」行動力に圧倒されてきた!

こんにちは。USP MAGAZINE編集長のまつうらです。

これまで一度だけ大阪に出張したことのあるTechLIONですが、今回再び遠征です。場所は名古屋……。これまた大阪とは違う意味でスゴいのです。出演者は勿論、参加者も皆アクティブ。これが「なごやこわい」ってヤツなんでしょうか?では、5/14(月)開催のVol.7レポートをお届けします。

会場の名古屋GeekBarは満員御礼

所狭しと集まったGeek達、おかげで満員だ(来場ありがとー!)
満員だ(来場ありがとー!)
名古屋のGeek達の隠れ家「名古屋GeekBar」
名古屋GeekBar

今回おじゃましたのは名古屋の繁華街、栄(新栄)にある名古屋Geek Barさん。普段はピアノバーとして開いているお店なのですが、月曜日だけ名古屋ギーク達の隠れ家に変身するのです。今日は、エイチームの有志の皆さんはじめ、こちらを根城にしている地元ギークの方々の手引きでやってきました。(ありがとうございました)

開場前から今か今かとオープンを待つ参加者の皆さんが詰めかけ、開場の7時になるとあっと言う間に満席に……。その勢いに、始まる前から驚かされました。美味しい料理も酒もスタンバイしてTechLION Vol.7スタート!

ある意味予想通りな濃いゲスト様方

司会はこの二人(ゼネラルマネージャー法林&プロデューサー馮)
法林GM&馮P

さーて始まりましたTechLION Vol.7。司会は法林&馮コンビです。この度それぞれ、ゼネラルマネージャー(GM)とプロデューサーに就任したらしいですが、いつもの二人ですね。

さて今日はどんなトークが飛び出すことやら……。と、その前に。今日は名古屋側スタッフとしても尽力してくださったエイチームさんから来場者に萌えサプリのスペシャルプレゼントが。これで栄養補給して今夜も乗り切れ!というわけですね。ありがとうございます。

ステージには一人目のゲストを向かえ、まずは「かんぱーい!」 グイっと飲んで、さぁトークの始まりです。

Aチームさん差し入れ「萌えサプリ」(ありがとー!)
萌えサプリ
みなさん、かんぱーい!
かんぱーい!

#1 矢島卓さん―ケータイエンジニアよ、取り残されるな!

矢島卓さん(きんちゃんって呼んでください)まずは矢島卓@エイチームさん。自己紹介を始めるなり「きんちゃんと呼んでください。はい、せーの」と。いきなり飛ばしてました。題目は「【ザックリわかる】モバイルコンテンツ開発の過去未来」です。動画はコチラ(12:32~)と、コチラコチラです。

その名の通りガラケー(フィーチャーフォン)からスマホに至るまでの携帯端末の歴史や仕様をおさらいしていきます。昔の携帯端末はHTML,CSS,画像フォーマットへの対応が貧弱だったり、Cookieは使えなかったりでそれはもう大変でしたが、一方で、ユーザーレベルでは偽ることのできない端末固有IDを通信会社が送信してきたので、ログイン管理という点では優れていました。

キーワードは「モバイルファースト」
「モバイルファースト」
ケータイエンジニアよ、取り残されるな!
取り残されるな!

ところが、スマートフォンが普及して状況は180度変化。PCブラウザ並の能力を身につけ、HTML,CSS,Cookieへのきちんとした対応は当たり前(HTML5,CSS3はドラフトだけど)になった一方、端末の自由度があがった為に端末認証は偽装が容易になって使えなくなってきました。

そんなモバイルコンテンツの開発でここ数年重要になってきているキーワードは「モバイルファースト」。余分な情報を削ぎ落として本当に必要なものは何かを捉え、まず携帯端末向けの構成を考えてから、それに肉付けする形でPC版の構成を考えていくというやり方です。

「ケータイエンジニアよ、取り残されるな」 ― きんちゃんこと矢島さんはそう訴えてましたが、取り巻く環境が激変しているケータイ業界においてはホントその通りですね。

#2 山本一道さん―デザイン・システム分離で、みな幸せに

山本一道さん続いては山本一道@アップルップルさん。題目は「CMSを作って10年のappleple」です。動画はコチラ(10:13~)

山本さんはWCAN(だぶきゃん)を運営するなど、Webデザイナー/エンジニア業界で活躍なさっています。もう軽く10年以上も携わっているそうで、これまで、a-news、a-column、絵日記.jp、a-blog等様々なサービスをリリースして戦ってきたそうです。これらのサービス、ブレイクする前の芸人さんとかももクロとか、安倍元総理の奥様とか、津田大介氏とか、結構いろいろな方に愛用されていたんですね。(その度、会場からお~!の声が)

しかしいくつかのサービスでは失敗を経験し、様々なことを学んだそうです。例えば、ブログに今でこそ当たり前のコメント機能を実装していなかったとか、マネタイズを考えた設計になっていなかったりといったことですが、それら失敗談は聞いててとても参考になります。

エンジニアが最終工程に来ないテンプレ
皆で幸せに
絵日記.jp、若手芸人さん達も愛用していた
絵日記.jp

そして2009年にa-blog cmsをリリース。最大の特徴は「システムとデザインの分離」。Web開発でありがちなのは、クライアントからのリクエストがディレクター、デザイナー、コーダーを経てエンジニアに降りてくるというスタイル。しかし、これだとエンジニアが納期に押し潰されがちになってしまいます。a-blog cmsは前述の分離によって、デザイナーとエンジニアが平行して作業をできるように設計し、デザイナーさんに易しく、エンジニアさんも納期に苦しまなくて済むよう工夫されているそうです。「システムとデザインの分離は大事」という点を強調なさってましたが、ここにも今までの苦労や失敗経験が活かされているんでしょうね。

当日の山本さんのスライドはSlideShareにて公開されていますので、是非そちらもご覧ください。

#3 terurouさん―地域独自性がコミュニティー運営の秘訣

terurouさん休憩を挟んで3人目のゲストはterurou@コスモルート,DSTokaiさんです。題目は「なごやこわいとか地方コミュニティのはなし」。今回のTechLIONにおける最大のナゾ、「なごやこわい」が明かされる時がやってきました。動画はコチラ(52:58~)

本職はSI/研究開発ということで、SI業の傍らRIAビッグデータ等々の研究をしているそうです。それから社内でGeQuu(ジクウ)といソーシャル・ロギング・サービスに関わっており、社長の趣味で最終的に脳波のデータを集める(なんだそりゃ!)のだとか……。

「なごやこわい」って何ですか?
「なごやこわい」
DSTokai(DSってなんだ!?)
DSTokaiとは

さて本題。DSTokaiという東海地域のメタコミュニティー(メタコン)を運営しているそうです。メタコンとは各種勉強会の核となるコミュニティーのことで、DSTokaiは適度な参加人数でうまく機能しているそうです。このGeekBarもそのうえで重要な拠点になっているといいます。ところでDSって何の略なのでしょう?? いろいろあって定かではないらしい(→参考)ですが、でらスタディー(でらは有名な名古屋弁)だったということに急遽決定。

そして出てきた「なごやこわい」。どうもDSTokaiで形成された独特な文化を言い表す言葉みたいです。その特徴の一つは「関数型の聖地」。どーいうわけか関数型言語に強い(というか関数型大好き人間?)の人達が多いらしいのです。地元の人すら置いてけぼりにしかねないその独特さは、名古屋人さえもおののいて、「なごやこわい」と言わしめるほど。うぁー、楽しそうだー!GeekBarに集う人達がすっごく積極的な理由がわかった気がします。

#4 河口信夫先生―学術研究と民間サービスの間を埋める

河口信夫先生本日最後のゲストは河口信夫@名古屋大学先生。これまた興味深いお話盛りだくさんでした。題目は「ユビキタスなシステムの作り方」ということで、動画はコチラ(1:22:42~)です。

河口先生は大学教授というアカデミックな職業の方。研究して論文を書いてこそというお仕事をされているのですが、120万ダウンロードされたというあの駅.Lockyも開発した方なのです。駅.LockyとはiOSで動くとても便利な時刻表アプリなのですが、便利なサービスの開発とアカデミズムがどう結びつくのか。実はこれ、無線LAN(Wi-Fi)による位置推定の可能性を研究するという、純粋な研究活動(現在Locky.jpプロジェクトとして継続中)からスタートしたのだそうです。

WarDriving(自転車で測定)
Wi-Fi基地局調査

初期は学生にノートパソコンを改造した装置(右写真)を背負わせ、「お前、これでデータ集めてこい!」などと言いながら、自転車で名古屋市の広範囲を走り回るなどして地道に無線LAN基地局の情報を収集したりしたそうです。名古屋市中心部の1km四方で900個近い基地局が見つかる等、その調査結果は論文にもなっています。

でもむしろ、無線LANによる位置推定が威力を発揮するのはGPSの届かない屋内です。そういう場所でいかに位置推定をするかという研究こそが本題であり、早速名古屋の地下鉄全83駅・地下街などでも基地局を測定(回数は実に2万8000回以上!)。結果、その場所には合計1700以上の基地局があることがわかったそうです。そして、収集した基地局データを使えば実際に位置推定が可能になるはずです。駅.Lockyは元々、これを実証するための実験から生まれたサービスだったというわけです。

情報ボランティア支援組織"Lisra"立ち上げ
ボランティア支援組織"Lisra"
みるみるうちに99%の駅の時刻表がアップロードされた!
99%の駅の時刻表を網羅

駅.Lockyはユーザーの位置を推定した後、最寄駅の時刻表データを表示するというアプリですが、そこで位置情報と同様に重要なものが時刻表データ。こちらは現在全国のユーザー(鉄道マニア)のボランティアで集められています。現在なんと全国99%の駅を網羅するに至っているのですが、この過程で考え始めたことがあったそうです。それは「こういったボランティア・そして駅.Lockyのようなサービスを支える仕組みはどうあるべきか」ということ。しかし研究活動が本分の大学にこういった仕組みの運営は向いていないということは薄々気づいていたため、別組織を設立しようと考え、Lisraという組織を設立。実証実験と民間サービスの間を埋める方法を考えているそうです。

駅.Lockyが研究活動の一環で生まれたものだったとは……、学術の世界と商業サービスの世界の間の不思議な関係が実に面白いですね。尚、河口先生のお話もSlideShareにて公開されいますので、ぜひそちらも読んでみてください。

 トークの後も、まだ熱かった

ゲストトークの後は恒例のプレゼント抽選会→TechLION次回予告ときて、それでだいたい終了を迎えるわけですが、今日は違いました。

参加者も「次回予告」……半分以上の人がイベント告知してましたよ、スゲぃ
参加者皆でイベント告知大会!

「参加者も、何か告知があればどうぞ」と募ったら、なんと半分以上の方々が何らかの告知をしました。ステージの前には行列が……。こんな光景見たことありませんよ。皆さん恐ろしいほどにアクティブです。なごやこわいわー。

その告知を一つご紹介。今週末の5/20(日)、株式会社ニューキャスト セミナールームにて名古屋Node予備校 vol.1を開催するそうなのですが、只今発表者を大募集中だそうです。俺のNode.js話を聞けぇという方は是非参加してみてはいかがでしょうか。

次回は7/26、再び東京・六本木

次回TechLION(Vol.8)は7/26日六本木ですよ!話が前後しますが次回予告です。

Vol.7を開催したこの日、次回TechLIONの場所と日時が確定しました。TechLION Vol.8は7/26(木)六本木SuperDeluxeで開催します。

ここまでで確定しているゲストは、vol.6で観客として参加され「私も出演しなければいけない気がする」とつぶやいていた日本のインターネットの草分け的人物、砂原秀樹@慶應義塾大学さん。モバツイの開発で有名な藤川真一@マインドスコープさん、他Twitterに縁の深い方をお招きする予定です。お楽しみに!

ゲストの皆様、観客の皆様ありがとうございました

そんなわけで、今回も面白くて驚かされる話満載のTechLIONにすることができました。私自身は初の地方遠征でしたが、こんなにも地域によって独自性があるとは想像していませんでした。ここは参加者誰しもがアクティブ!いやぁ、れからのイニシアチブは名古屋で決まり、という某フレーズに物凄く現実味を感じますよ、これは。東京もウカウカしてられません。

ゲストの皆様、観客の皆様、ご参加ありがとうございました。

vol.7 ありがとうございました!

こんにちは、スタッフかなり屋です。

5/14(月)のTechLION vol.7 in 名古屋、おかげさまで盛況でフィナーレを迎えました♪
みなさま、ありがとうございました!!

次回はTechLION vol.8でお会いしましょう。7/26(木)、六本木SuperDeluxeです。
詳しくはこちらです↓
http://techlion.jp/vol8