こんにちは、取材班まつうらです。先週に引き続き、3月5日に開催しましたTechLION vol.16 レポート後半戦をお届けします。こちらも録画映像(第二部#1 、第二部#2 、エンディング )を用意しておりますので是非そちらも合わせてお楽しみください。(前半戦観戦がまだの方はこちら )
■第二部 ITサファリパーク
江崎先生と盛り上がった後、今日はさらに三人の選手をお招きしてのトークバトル「ITサファリパーク」。まずは自己紹介を兼ねたプレゼンテーションから。
#1 稲田直哉さん―開発前の準備が多いのはナシで
一番手は稲田直哉 @KLab さん。この日がちょうど30歳の誕生日。30代の始まりがTechLION出場日ということで、よかったのかどうか……。そんな稲田さんが用意したプレゼンの気になるタイトルは「Go everywhere」 。ただし、ここで言うGoとはプログラミング言語ということで、今日はプログラミング言語“Go” の魅力をたっぷり紹介してくださいました。
Goってどんな言語?
GoはあのGoogleが開発した新進気鋭の言語。LXC やDocker 、Packer 、Serf といったの開発者向けソフトウェアやサービスサイト(特に仮想環境の管理)で積極的に採用されているそうです。それというのもGoは、並列化、ネットワークプログラミング、分散コンピューティングに向いているという特長を持ち合わせているところにあるようですが、稲田さんが今日一番主張しておきたいのは“simple, easy to learn, easy to develop”(イージー、使い始めやすい) という点だそうです。
Go言語にて、定番の”FizzBuzz”をライブコーディング中
例えばJavaをやるにしても、実際は構文覚えるだじゃ済まなくて、Eclipse やIntelliJ といったものの使い方も覚えなきゃいけなかったりします。しかしGoは、必要な機能がうまいことシンプルにまとまっており、そういった大げさな準備をしなくても済み、しかし実用性も十分確保されているのだそうです。例えばコーディングにgoimports を利用すればコーディングスタイルを覚える間でもなく勝手に整えられたり、同様にしてテストも書き方にこだわらなくて済むように工夫がなされていたり、パッケージ配布はGitHub を活用して簡単に行えるようになっていたり……。 『色々とやらなきゃいけないことをシンプルに……』 それが、稲田さんがGoを使い始めた理由だそうです。「皆さんも、サーバー書くための言語としてだけでなく、ちょっとしたものを作る時にGoを使ってみるのはいかがでしょうか」最後にそう言って締めくくりました。
#2 鈴木理恵子さん―クラウドで手軽にデータ分析を
二番手は鈴木理恵子 @トレジャーデータ さん。タイトルは「おねえさんと学ぼう!クラウドによる最新のビッグデータ分析」 なのですが、タイトルに「おねえさん」がつくのは実は初めてだったりします(おねえさんの出場自体はありましたけど)。ちなみに、学生の頃は専門学校でギターを作っていた (弾く方ではなくて)そうですよ。
最近はあちこちで「ビッグデータ」という言葉を聞くようになりました。コンピューターの進化と共にそういった大量のデータを分析できるようになったことで、そこから得られる情報を活用しようというわけですが、その流れが多くの企業にも広まってきて「うちにもデータあるんだろ?分析してくれよ」 と経営層や上司に言われた、という話も聞こえるようになってきたといいます。
「ビッグデータの分析くらいたやすいですよ」と言えるとカッコいいけど、もはや大それた話でもない
そこでカッコよく「えぇできますよ」と言えればいいですが、「え!そんな分析って……。ただ僕たちはプロダクトを、納期を守って作っているだけですから」というように、そんなことまで想定していなかったのでどうすればいいのか戸惑ったり、あるいは分析のための環境構築になんてリソースを割けないということはよくあります。
そんな時にお勧めなのがTreasure Data Service (鈴木さん、大変言いづらそうでしたが) 。分析環境がクラウド上で提供されるので、まずハードウェアを自分で調達する必要がありません。さらにそれ(インフラ提供)だけではなく、サービスまでも提供されます。サービスとは、分析エンジン(Hadoop型やアドホック型)はじめ、データの流し込みから可視化するまでに必要な9つのツール。こういった構成によって、今やデータ分析基盤が1,2週間で稼動させられるところまできているのだそうです。
いやぁ、技術の進歩の速さにはいつも驚かされます。
#3 大場光一郎さん―伸びている業界で働きたい
最後は大場光一郎 @クラウドワークス さん。タイトルは「僕とRubyと、時々、奥さん」 。3月という時期ともあいまって、ご自身の「転機」ついていろいろ語っていただきました。
大場さんの仕事歴ですが、最初に(めちゃくちゃブラックな)小さなソフトハウスで4年、次に社員数7千人程の大手SI企業に10年、GREE に3年弱、そして今年クラウドワークス に移ったそうです。
大手SI企業に在籍していた頃、東日本大震災が発生。人的被害はなかったものの仙台の実家は津波により居住不能に。「実家を建て直さなきゃ。ステージを上げてより稼がないと」と意識するようになったそうです。35歳を過ぎるといつまでもコード書いてるんじゃないという業界特有の風潮もあり、その頃盛り上がってきていたクラウド(cloud)に関するサービスを企画するようになりました。しかしSI企業ならではの「(基本的に)納品したら終わり」と発想により、この手のウェブサービスとの上手な付き合い方を理解してもらえなかったそうです。そういうこともあり、ウェブサービスで急成長を遂げていたGREEへ転職。
ちなみに大場さんの奥さんもまた万葉 というRuby一筋の会社を運営していて「技術的負債 夫妻」 だそうですが、この頃かわいい女の子が生まれました。しかしそうすると、働く時間や行動にはどうしても制約が生まれ、「ここで同じステージでいられるのだろうか?」と考えるようになっていました。そうして、これまでの自分を振り返るうち、今のクラウドワークスという会社に出会ったそうです。
伸びてるところ、いや伸ばす仕事ができれば、ずっと楽しくいられるのではないか!?
振り返ると、自分としては伸びている業界で働きたいという想いがあり、実際GREEもそういう意味ですごく充実していたそうです。それをさらに突き詰めると、「伸びているとこじゃなくて、伸ばすところに関われば、ずっと楽しい状態が続くんじゃないか」 という考えに至り、それがここへ来た理由だといいます。
小さな会社も大きな会社も経験してきたことで、これからここで何が起こるかということもある程度想像がつくようになり、それもまた移籍を後押しすることになったようです。ただ、想像がつくといっても、一概にそれが今の現場で正しいとは限らないので、老害にならぬようバランス感覚を磨くことは重要だそうです。
会場から寄せられた質問
各自のプレゼンが終わって、出場者全員によるディスカッションに。その中で会場いくつか質問が寄せられたのでそのやりとりを一部ご紹介します。
Q. 他社にも使われることになるオープンソースをリリースするメリットとは?
鈴木 :元々そういうオープンソース系の人達が作った会社だからっていうのがまずあって……
大場 :広く普及させたいっていうのがあればオープンにしたほうがいいですね。
鈴木 :そうですね。コミュニティのみなさんと一緒に作り上げることで、私たちとしても一緒に開発してくれるメリットがありますし。
江崎 :たぶん二つあって、一つはマーケットを立ち上げる時自分の会社以外のリソースを上手に使えるという利点。もう一つは熱心にやれば業界でリーダーシップをとれる。わがままだけれども、ちゃんとした技術を持っているという責任感の裏返しでもある。
稲田 :信頼っていうのが大きいかな、と思います。利用者からすれば数あるサービスからどれを選択するかにあたって、オープンソースでの活動実績を見て技術力の有無を判断したりもする。例え会社はちっちゃくてもそこで信頼できる。だから信頼を勝ちうるためのツールとしてオープンソースは有効だと思う。
Q. キャリアを変える時に、こうしておけばよかったと思うことは?
大場 :アラフォーになると結構「あれやっておけばよかった」というのがあって……。スティーブジョブズじゃないけど、常にドットを打っておけば、振り返った時それが線となって繋がっているんですね。やって後悔したほうがまだマシで、大変だからやめておこうなどとためらった時の方が、振り返ってみるとガッカリする率が高いです。
江崎 :違うエリアとか違うポジションに行くと、大変だけど、おっしゃったように点が線になるんですよ。僕はアラフィフでけっこう遊んでいますけど、最初は全然関係のないところが真面目にやっていると不思議と繋がっていくんですよ。だからいろんなとこに行くと、それがなんとなく繋がってくるし、その経験がプラスになるんです。
◇ ◇ ◇
なるほど、長く続けなきゃ意味が無いということは全然無くて、様々な場所で経験を積んでおくことが重要なんですね。稲田さんが紹介していたように、プログラミング言語Go一つとっても既に様々な現場で採用実績があり、Goという言語に点を打っておくことでそれらの業界へと繋がる線を引くこともできると思います。私も、出場者の皆さんに負けないようにたくさんの点を打っていきたいです。こうして毎回出場者のトークを聞くことも点を打つことに繋がるかな?
ゲストの皆様、ありがとうございました。(マウスカーソルを重ねるとポーズが変わります)
■次回は各LLイベント実行委員長全員が集結する!
最後に次回TechLION(vol.17) の予告がなされましたが、コンセプトがスゴい。
Ruby Kaigi 、PyCon JP 、YAPC::Asia (Perl)、PHPカンファレンス 、の4大LL言語イベントの実行委員長が全員集まるというのです。それだけでも十分なのですが、さらに「歩くITイベント大辞典」 こと小山哲志 さんもお呼びします。そして、なんと世の中ウマいことできているのでしょうか。TechLIONの司会者法林GMはLLイベント の中心人物だったりします。
次回vol.17 は6月26日(木) 開催予定。夏以降に開催される各LLイベントのキックオフミーティングのような回になるのでしょうか。これは楽しみです。既に事前予約を受け付けておりますので是非お早めのお申し込みを!
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TechLION vol.17
来週から、リレーブログを再開します。
次回は馮プロデューサー、よろしくお願いします!