「世の中が変わるタイミングにおいて、どのように対応していくのか?」TechLION vol.25レポート

こんにちは、レポート担当の田中です。

さて、4月13日(水)に、TechLION vol.25が開催されました。  今回は25回目!5周年!通算ゲスト100名達成!ということで、多くの方にお集まりいただけて嬉しい限りです(´ω`*)

それでは早速、当日の模様をお届けします。

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■ブログもSNSもあまり書けない代表がコミュニティを10年運営できたわけ。10年運営して気づいたこと

まず登壇いただいたのは和田嘉弘さん。

「ブログもSNSもあまり書けない代表がコミュニティを10年運営できたわけ。10年運営して気づいたこと」との演題に即し、代表を務められているWebSig24/7に絡めて、個人と組織のありかたの実験的な場として、社会性があるコミュニティに関わることは、未来の個人と組織の関わり方の先取りであるとお話しされました。

将来的に自分が所属するコミュニティを自由に、そして複数所属することについても、個人が選択可能な社会になる。その変化課程の中で、家族といった「共同体」や、企業のような「機能体」といった既存の社会的コミュニティの質の変化が生じて、個人の裁量もより存在感を増していくと思うのですが、既存のモノや価値観が変わっていく最中に生きるという先例の無い難しさ、自分の中の評価軸を持つ重要性についても考えさせられました。

特に「個人で出来る範囲を本気でコミットする」と言われたことがとても印象的でした。コミュニティはこれまでのところ雇用関係や上下関係がなく、思い切ったことがやれる場であるが、よりよいコミュニティ体験をしていくためには、「自由な場であるからこそ責任をとる」というそのお考えに深く共鳴しました。今後、自由な環境下にある個人がどのように組織や他者と関わっていくのか、そのヒントがコミュニティに関わることにあるのかもしれないと締められました。このセミナーを通じて、改めてコミュニティ参加の意義を考えるよい機会となりました。

 

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■今どきの若手育成にひそむ『3つの思い込み』

続いてお話しいただいたのは林真理子さん。

IT/Webエンジニアの学習について若手育成に際し、教える立場の人が持ちがちな、独学で身につけるべき、自分の学習法が一番 、結局本人のやる気とセンスという思い込みについて「自分の役割に若手を育成する仕事を組み込む」という解決法を提示されました。その際に重要なのは「教えることで人を変えることが出来る」という信念のようです。

印象的だったのは、立川談志師匠の教え方には”行動の意味付けや価値を伝える”、”どのように行動すれば良いか、具体的に提示する”、”段階的に課題を提示する”のように、教える側のエッセンスが詰まっているとのお話。教わる側にも相応の心構えが求められるのは勿論ですが、教える側にも「人を教える」という行為で自身の仕事のブラッシュアップになるように、日頃から仕事への論理を持たなければならないと感じました。

多くの管理職が陥りやすい「今どきの若手育成にひそむ3つの思い込み」。それは、実務スキルは独学や自力で身につけたと思い込んでいても、実は「多くの人、さまざまな環境に育てられてきた」。また、自分の学習法が一番という思い込みも、本当は「時代変われば合理的な学習アプローチも変わる」のだということ。最後に、何事も本人のやる気とセンスの問題なのではなく、談志師匠の教えのように「教え方によってもその学習効果は大いに変わる」というレクチャーでした。要するに「教えられることがあるうちに、出しておくが吉」とのことで、なるほどもっともだと納得。いいお話を聴くことができ、たいへん参考になりました。思い込みには気をつけたいものです。

林さんのスライドシェアはこちらから

http://www.slideshare.net/hysmrk/3-techlion-vol25

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■日本におけるIT・Webエンジニアの『キャリア寿命』について

休憩の後スタートしたのは、「エンジニアtype」編集長の伊藤健吾さん。

技術者と編集者のキャリア形成の類似性という独自の切り口でお話を頂きました。選択肢は確実に増えているものの、一般的に管理職の方が給与が高いという評価収入面での現状や別の業務への興味等から提唱される”35歳定年説”もあり、いつまでも作り手サイドでいるのはなかなか難しいとの考えもありますよね。エンジニアtypeでは、中長期でキャリアを考えていくための特集や技術者目線の特集、直接相談できる場づくりといった取り組みを成されている伊藤さんは、日本ではIT・Webエンジニアで「コードで食べていく」ために必要なものについて、次のように答えました。

 

1)個人の努力で、技術情報を得る物理的なタッチポイントを増やす

2)自分の売りにつながる、課題解決を行う、新開発職を開拓(会社に進言)する

3) 1で努力し2をやってもダメなら転職するしかない!

 

3)について、結局は企業は社長が動かしていく、いわば社長のものですが、勤める人間としては、自分の希望に合うような企業・社長を選ぶという抵抗もできるというのが面白いところでありますね。

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■15世紀の印刷革命から考える21世紀の出版
最後に登壇されたのはアスキードワンゴ編集部 編集長の鈴木嘉平さん。

紀元前のパピルスや羊皮紙、印刷革命といった出版部門の歴史を振り返ると、文字の発明や活版印刷という新しい技術が生まれるにあたり、価値観やコミュニケーションが変化してきたということ。その中でも15世紀の印刷革命は知識の爆発的増大を生み出して当時の秩序を覆し、ルネサンスや宗教改革といった歴史事象の発生を促したそうです。インターネットが一般化して生活スタイルや価値観が一変した、という我々の経験に非常に近しい物があるように感じますが、近い未来にも宗教改革のような世界規模の価値観の変革が進むのでしょうか。

2010年に電子書籍元年を迎えましたが、現状の電子書籍は未だ紙の本に近い「デジタルインキュナブラ」(インキュナブラ=初期の活版印刷本)の枠を出ていないようです。ワールドワイドウェブが著作権を捨て世界中で文書の共有という価値を実現させたように、電子書籍も紙の本にある”何か”を捨て、ネットワークの強みを活かすような新しい価値が付加されると力強く仰っていたのが印象的でした。

最後に、「未来を予測する最良の方法は、それを発明してしまうことである」という有名な言葉を紹介されました。これは「パーソナルコンピューターの父」とも「プログラミングもできる哲学者」とも呼ばれてい米国の科学者アラン・ケイの言葉で、彼は「未来を発明すること」に情熱を燃やし、そして実際その言葉通りの行動を示した人物として知られています。いつまでも紙の模倣をしていても始まらない。まず先に進もうという鈴木さんのポジティブな力強さがとても魅力的でした。

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4名の方々の演目には「世の中が変わるタイミングにおいて、どのように対応していくのか」という共通項があったように思います。技術からガラポンですぐには新しいものが生み出されない、という意味では今は技術の揺籃期ですが、技術に影響を受け価値観がグラデーションで変化していく中で個人が頭を使い、個人の幸せという切り口で解を探していくのが今最も求められているのではないかと感じる次第です。

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来場者からも「企業宣伝色のない、生の声がきけて楽しかったです!」「中身が濃い内容のものが多く面白かったです」「じんわりきました」「林さん、嘉平さんがすばらしかった!」「楽しく、濃い時間でした。ありがとうございました」「普段とは異なる楽しい時間をすごせました」「テーマに惹かれて参加しました。期待以上のものが得られました」「気づかされたことがいくつかあり、楽しめました」など、たくさんのお声をちょうだいすることができました。みなさん楽しんでいただけたようで、たいへん有意義な時間となりました。ありがとうございました。

vol.25 ありがとうございました!次回のTechLIONは…

TechLION vol.25、ご来場そしてご観覧いただき、誠にありがとうございました!
今回は「WEBとIT業界」をテーマにお送りしましたが、いかがでしたか?

今回のTogetterのまとめはこちら☆
TechLION vol.25 #techlion

次回TechLION vol.26、最初のゲストが決定!
歌代和正さんをお迎えする運びとなりました。
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2016年6月下旬か7月ぐらいに、六本木SuperDeluxeにて開催予定です。

追加情報は適時更新いたしますので、
引き続き当ウエブサイトのチェックをお願いいたします!

【EC・決済最新動向】TechLION vol.24報告

 

こんにちは、レポート担当の田中です。寒さがいよいよ厳しくなってきましたね。

さて、1月14日(木)に、TechLION vol.24が開催されました。  今回のテーマは「EC・決済最新動向」。Webショッピングが当たり前となった今、皆さんにも馴染みが深いテーマではないでしょうか。

 

それでは早速、当日の模様をお届けしようと思います!

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■日本におけるFintech事業への関わり方について

 

最初の登場はえふしん/藤川真一さん。

BASEでCTOとして開発者向けのオンライン決済サービス提供といった分野でご活躍をされているえふしん/藤川さんに、日本におけるFintech事業への関わり方についてお話しいただきました。

ビットコインやブロックチェーンといった既存のシステムに取って代わるようなFintechの技術は、リアルな通貨そのものを変える可能性がありますが、実現化・普及には与信の難しさという課題を解決しなければならないとのこと。日本人の慎重な性格や、既存の金融システムですでに消費者とシステムの相互信頼関係が構築されていることを考慮すると、新たな参入にはそれなりのコストを覚悟しなければなりませんよね。確実な成功のためにはビジネスロジックとテクノロジードリブンだけでなく、与信管理や個人(法人)の意思決定をいかにサポートするかという観点が必要になるのでしょう。

印象的だったのは「楽天カードはFintechビジネスの教科書」というお話。楽天カードは低い審査条件が特徴的で、比較的作りやすいクレジットカードであることが知られています。Fintechビジネスの対象となるのは個人や低所得者層のユーザー・中小企業への融資が中心であることから、入り口を広くとるという点で近しいものがありますね。また、楽天カードには途上与信の厳しさといった特徴があり、ユーザーは確実な支払いの継続が求められるのですが、このシビアな特徴もFintechビジネスの成功に求められる要素でしょう。そういった意味ではBASEはシンプルで小回りが利くため、モノを売るということへの広い入口になりえ、誰でも確実に支払いができるという理にかなったインターネットビジネスであるように感じました。

 

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■ECのダークサイド カード詐欺の実態と対策

続いて登壇したのはかっこ株式会社の亀山 誠さんと稲数 裕之さん。

ECサイトのダークサイドと題して、「不正」に対する基礎知識や具体例、備えるためのノウハウをお話しいただきました。

近年、不正ログインだけではなく、不正送金やポイント交換などが多発し、社会問題化しています。その手口としては、フィッシングサイトや偽ブランド販売サイトから入手したID・パスワードを使ってクレジットカード情報を得ているとのこと。まるでルパン三世の様な巧妙な手口ですね。実演していただいた例では、実際に検索上位にヒットしたサイトが実は偽ブランド販売サイトであり、個人情報を登録すると全て外へ流れてしまう仕様になっていると解説を頂きました。

被害を防ぐには、相手側は私たちが想像しているより賢く、いつ騙されるかわからないという危機感を持つことが大事であると感じました。例えば偽ブランド販売サイトにはサイト内の文章などが不自然だったり、安すぎる価格設定と言った特徴があるとのことでしたが、こういった特徴はセキュリティについてのプロでなくても注意できますよね。近年では自主的な不正対策だけでは対応しきれないケースも増加中であるので、内製化をして人的にカバーするだけでなく企業間でのブラックリスト共有であったり、名前や住所のファジーなマッチングといった対応策を講じる必要があると締めくくられました。それでも、初回被害を防げない、同一ユーザーが情報を変えてくるなど対応が難しいケースが存在する現在、被害を拡大させないための専用システムの導入検討が必要でしょう。

 

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■ワールドワイドなソフトウェアECについて

最後に登場したのはact2 の加藤さん。

ワールドワイドなソフトウェアECと題し、ソフトウェアの越境ECにおける課題や展望についてお話いただきました。

現在は、デベロッパーと消費者の間にMac App StoreやAmazon download、Microsoft Storeといった各プラットフォームがダウンロードサイトを用意しています。このような大手のダウンロードサイトでは、新たなソフトウェアをリリースしても上位のアプリに埋もれてしまって目立たないことも多いのだとか。そのため最初から大手のストアに入らないベンダーさんもいらっしゃるということです。メジャーなプラットフォームに頼らず自社サイトでのダウンロード販売を行う場合は、売り上げにつなげるのが難しいという難点がありますよね。ECの仕組みを作っただけでは認知度が低いままで、消費者まで届かないこともあるのだとか。そういった場合、どのようにターゲット国のユーザーに訴求していくのか、ECサイトでのマーケティング法も検討する必要があると感じました。

個人的に共感したのは、販売インフラが整うことでユーザーにより良いサービスが実現可能であるということです。例えばセッションの中で触れられていたDigital Riverが提供するMyCommerceといったシステムは、世界規模でのビジネスに向けてパッケージ化されているので、こういったシステムを利用することで効率的に販路創出や法令遵守といった課題をクリアできるのだとか。ほかにも、Shinobi Defense Platformのようにすでに積極的に世界展開をしているソフトウェアを扱っているからこそわかる視点でお話いただきました。加藤さん曰く、世界を視野に入れ売り上げを伸ばそうとする場合は、言語や日本と異なる税制度といった様々な壁を乗り超えなければなりませんし、コンセプトメイキングの時点から世界展開を考える必要があるとのこと。ユーザーに響くコンテンツを作り込み、売るためのチャネルを確立させ活用することでサービスが消費者に届くのですね。

 

■試合後のコメント

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白熱したセッション・パネルディスカッションが行われあっという間に時間が過ぎていきました。参加されたBASEのえふしん/藤川さん、かっこの亀山さん・稲数さん、act2 の加藤さんからコメントを頂いているのでお送りします。

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えふしん/藤川さん

BASEの藤川(えふしん)です。今回、ECの話で打診をいただいたのに、年末、メディアを通じてFintechに関する話が突如盛り上がり、話をした内容がFintechの話でした。これまでECに長らく関わってきた経験から言うと、ECの話は地味でなかなかイベントとして成立しません。そういう中で、今回企画が成立したのはTechLionというコミュニティがあったからですし、それが年末を通じて、イベントの内容がタイムリーなFintechにまで昇華したのは、いわゆる時代性のタイミングを掴むコツそのものだなと思いました。

Fintechをスタートアップ視点の技術的なうまみとして紐解くと、ブロックチェーンというハッシュを活用した新しいプロトコルや、データ解析、機械学習、AIなどがアプリケーションのバックボーンとして存在しています。また、お金を扱う仕事ということで、スピードとミッションクリティカル製を実現するスピードと安全性が求められますが、そうは言っても、言うほど特殊な技術は多くはありません。ある意味「あたりまえの技術の集大成」としての応用事例の一つだと捉えてもらえるとよいかと思います。
こういうビジネスへの関わり方についてはイベントでも話した通り、技術だけでビジネスが成り立つような世界ではないと思います。しかし、間違いなく技術者を求めている世界ではありますので、もし興味があるようでしたらFintechに是非ともチャレンジしてみてください!

>FinTech分野はテクノロジーによるイノベーションが必要だと思われがちですが、成功例は、えふしん/藤川さんがおっしゃるとおりにある意味「あたりまえの技術の集大成」がベースに積み重ねられたもので、その基盤にアイディアが付け加えられたのかもしれませんね。

 

亀山さん

来場者の方々にとっては普段あまり馴染みのないであろう、EC決済の裏側や不正についての話をさせてもらいましたが、非常に興味を持って聞いていただき、関心の高さを感じました。今後もし不正対策に取り組まれる事がありましたら、今回の話が少しでもお役に立てれば嬉しく思います。

また、フリートークでは、ECや決済の未来について面白い議論ができて非常に有意義でした。特にブロックチェーンについては、これだけ切り出して、続きの議論をやりたいくらいでした。お酒を飲みながらということもあり、雰囲気も良く、楽しい時間を過ごせました。

>クレジットカード決済や後払い決済が悪用されるポイントなど、リアルに今後起きるだろう問題についてお話いただけて、聞き手としても危機感を持ちつつ勉強することが出来たと感じます。

 

稲数さん

「EC・決済最新動向」というテーマにおいて、便利なサービスの裏側に広がるダークサイドについてお話ししました。そこに向き合う不正対策は、話としては興味を持たれる方が多いものの、実業務としてはどうしても後回しになりがちな分野です。今回目指したことは、後回しにすると何が起こるかをお伝えするために、今起きていることをつかんでいただくことでした。本当であればもっと詳しくお話ししたいこともあるのですが、不正対策はその性質上あまり公開できないことも多く、悩みどころでした。もしご興味ある方は、かっこのWEBサイトからお気軽にご連絡いただければ幸いです。

>実例も交えつつのセッションで対策が遅れるとどうなるか、身につまされました。後回しになりがちな分野だからこそ、手遅れにならないうちに対策を講じておきたいものですね。

 

加藤さん

Face to Face が、人間的には基本なのだなあとあらためて痛感いたしました。

われわれの仕事は、ややもすると、コミュニケーションにおいて、電話すら怠り、たった一通のメールで終わらせてしまうケースが目立ちますが、あらためて反省した次第です。また次回、(オーディエンスの一人として)是非とも参加させて頂ければと思っております。

>仰られるように、特に技術的な分野では、こういったFace to Face による双方向でのセッションが重要ですね。一人でなく『みんなで』行うことで、新たな気付きやアイディアが生まれていくのだと思います。

 

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次回TechLION vol.25でTechLIONは5周年を迎えます。

2016年4月上旬、会場は変わらず六本木SuperDeluxeにて開催予定です。

キーワードは5と25と100。

次回の4人(予定)で出演者100人達成です!続報をお待ち下さい。

 

追加情報は適時更新いたしますので、

引き続き当ウェブサイトのチェックをお願いいたします!

 

vol.24 ありがとうございました!さて、次回のTechLIONは?

TechLION vol.24、ご来場そしてご観覧いただき、誠にありがとうございました!
大阪PVのみなさまもありがとうございました☆
今回は「EC・決済最新動向」をテーマにお送りしました。

今回のTogetterのまとめはこちら☆
TechLION vol.24 #techlion

次回TechLION vol.25でTechLIONは5周年を迎えます。
2016年4月上旬、六本木SuperDeluxeにて開催予定です。
キーワードは5と25と100。
次回の4人(予定)で出演者100人達成です♪続報をお待ち下さいね☆

追加情報は適時更新いたしますので、
引き続き当ウエブサイトのチェックをお願いいたします!

まにフェス出張版レポート&来週はTechLION vol.24!

あけましておめでとうございます。
ゼネラルマネージャーの法林です。

旧年中はTechLIONを応援していただきありがとうございました。今年もいい試合を見せられるようにがんばります。

さて今回のブログは、昨年の12月19日(土)にTechLION初の出張版を行いましたので、そのレポートをお送りします。

出張版ってなに?

そもそも「出張版」というのは、従来ならできなかったような場でもTechLIONを実施したいということで、通常の試合とは別枠で実施するものです。今回は、TechLION vol.22に出てくださった川合さんから、ご自身が主催する「まにまにフェスティバル」(まにフェス)で試合をしてくれないかという話をいただきました。枠が1時間であることや、まにフェスというイベントの中で試合をすることなど、通常のTechLIONとは体裁が異なることから、出張版という名前でやってみることにしました。もっとも、出張版という名前は川合さんが考えてくれたものです。

枠が1時間ということでゲストは2人ぐらいがいい線だろうと思い、馮さんと私で1人ずつ交渉して出演していただきました。トークは、前半はゲストの自己紹介を兼ねた活動の紹介、後半はお題を提示してのフリートークという形式で進行しました。

電子部品アクセサリー「さのもの」

ishida1人目のゲストは石田幸子さん。「さのもの」というブランドで電子部品アクセサリーを製作されています。まにフェスで展示もされていたので、実際に作られている品物をいくつか見せていただきました。あわせて製作の裏話もいくつか伺ったのですが、個人的に印象に残ったのは基板のカッティングです。例えばマザーボードの一部を円形に切り出したものを使ってペンダントを作ったりしているのですが、丸く切り出すのはレーザーカッターか何かで機械的に切っているのだと思っていたら「手作業です」。えーっ。なんでもマザーボードの基板はいろいろな材質が混ざっているため、レーザーでは切れないんだとか。また、電子部品の買い出しはやはり関西随一の電気街・日本橋に行ってますが、アクセサリーになり得るかという観点でしか品物を見ていないため(つまり電気的特性などは考えていない)、パーツ屋で部品を買っても購入品目から作るモノが想像できず、店員から怪訝な目で見られることもあるそうです。

美しいWebサイト作りとウェブTV番組

seguchiもう1人のゲストは瀬口理恵さん。フリーランスでWebデザイナーとして活躍されています。昨年「人を惹きつける 美しいウェブサイトの作り方」という書籍を出版されたり、また「rie’s Cafebar」という番組を配信したりといった活動をされているので、そのあたりのことを主にお聞きしました。
「美しいウェブサイトの作り方」については、まにフェスで講演もされていたのですが、印象に残ったのが若い女性向けの「ガーリーなデザイン」。エンジニア男子にはイメージしにくい世界をわかりやすく解説されていました。「手書き風フォントは本当に手書きする」など眼から鱗みたいな話もありました。「rie’s Cafebar」は瀬口さんとはたなかあきらさんのコンビが司会を務め、毎回ゲストを招いてトークをする「視聴者参加型クリエイター雑談エンタテイメントウェブTV番組」(番組Webサイトより)です。隔週での放送をすでに数年やっているそうで、これだけ経験を積むとさすがに慣れるというか、当日初対面のゲストでも話をしながら質問するポイントを見つけられるようになるそうです。これは私も同じ感覚を持っているのでとても共感できる話でした。

フリートーク

後半のフリートークは、馮さんが用意したお題に沿って進行しました。出演者からの回答(キーワードのみ)と一緒にお伝えします。トークの詳細をご覧になりたい方はビデオでご確認ください。

  • 2015年気になったモノ
    Apple Watch/ロボットタクシー/ドローン/機械学習/自動化/音楽聴き放題サービス/洋服レンタル
  • 最近、Web/ネットを使っていて、ジェネレーションギャップを感じること
    保存アイコンがフロッピーディスクだけど今どきそんなの使ってない/最近の若い子はスクロールに抵抗がない/子供は音声検索を普通に使う
  • 2016年のWeb/IT/テクノロジーはどうなる?
    ターゲットに合わせた作品を作りたい/個人が親しみやすいウェアラブルデバイスが出てほしい/ IE8のサポートが終了するので対応しなくてよくなる/シンプルなデザインが流行なのでコンテンツ設計が重要/エンジニアが足りない

試合後のコメント

こんなトークをするうちに初めての出張版は予定の60分を消化し、お開きとなりました。試合後にゲストのお2人からコメントをいただきましたのでお送りします。

石田さん

久しぶりにweb/IT系イベントに参加して、改めてこの業界の発展の速さを感じました。人前で話すのは不慣れですが、TechLIONのお二人がお話上手で楽しめました。今ではすっかり「使う側」専門となったwebですが、だからこそ気づいている事も沢山ありそうな気が…。その辺は業界の知り合いにしっかり伝えて行きたいと思っています。2016年のさのものは、2/10〜15に大阪で開催する個展でドドンと幕開けです!ぜひSNSで情報をチェックして下さい。

瀬口さん

ご参加いただいた皆様、ありがとうございました!ゲストとして呼んでいただいた5DGの瀬口理恵です。台本なしのフリートークライブだったのでドキドキしていたのですが、TechLIONの法林さん、馮さんの名司会もあり楽しくお話できました。
トークのお題も2015年流行ったもの気になったもの、来年のIT/web予想など、年末にふさわしい内容で、自分自身でも2015年の良い締めくくりになったなあと。進化の速い業界ですが、それを追いかけるのもひとつの魅力だと感じています。またどこかでお会いすることを楽しみにしております。ありがとうございました!

石田さん、瀬口さん、ありがとうございました!
それから、出張版の舞台を用意してくださった川合さんにも厚くお礼を申し上げます。

次回TechLIONは1週間後

2015年のTechLIONは出張版で締めましたが、新年早々、TechLIONの本大会であるvol.24がやってきます。1月14日(木)に六本木・スーパーデラックスにて開催です。今回は「EC・決済最新動向」がテーマになっていて、ゲストとしてこんな方々をお招きしています。

  • 新感覚ネットショップ運営サービスBASEなどを手がける”えふしん”こと藤川真一さん
  • ECの不正利用と闘うかっこ株式会社の亀山誠さん&稲数裕之さん
  • 国境を越えてECを提供するサービスMyCommerceに携わる加藤幹也さん

ECというテーマ自体、TechLIONでは初めて取り上げるものであり、出演者の方々も(以前に出演経験のあるえふしんさん以外は)ファンの皆さんにはなじみが薄いかもしれませんが、今までのTechLIONにない新しい色が出せると思っています。これらの技術が大きな波に乗るのは少し先かもしれませんが、先取りして知ってもらいたいという思いで試合を組みました。よかったらぜひご参加ください。チケットはこちらで発売中です。

TechLION vol.24 〜EC・決済最新動向〜

次回のブログは鎌田さんによるvol.24直前情報です。お楽しみに。

【10年後の生活を支える最新IT動向】TechLION vol.23報告

【10年後の生活を支える最新IT動向】

 

こんにちは、レポート担当の田中です。最近めっきり肌寒くなってきましたね。
そんな寒さを吹き飛ばすようなアツいイベント、TechLION vol.23が10月20日に行われました。京都に遠征した前回から、再び会場を東京に会場を移しての開催です。

それでは早速、当日の模様をお届けしようと思います!

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●Connect Everything~myThingsが目指すつながる未来~

トップバッターを務めるのは山本学さん。
Yahoo! JAPANが取り組む「myThings」の開発に携わり、現在はエバンジェリストとして活躍している山本さんがIoTや「myThings」の今後について説明してくれました。

「myThings」とは様々なアプリやサービス、IoTデバイスの機能を組み合わせて
自分の課題解決や新しいライフスタイルを実現できるサービスです。例えば「myThings」上でメールと天気情報を組み合わせれば、雨が降りそうなときに通知を受け取ることができる。知りたいタイミングで欲しい情報が手に入るのってとても便利ですね。

Web×Webだけでなく、IoT機器やスマートウォッチなどのWeb×モノの組み合わせも可能なのが大きな特徴の一つ。現在はYahoo! JAPAN関連のサービスやFacebookやYouTube、Evernoteなど32種類のチャンネルに接続が可能ですが、つながるサービスの種類は今後も続々と増える予定なのだそう。今後も追加サービス次第と自分の組み合わせ次第で新たな発見ができそうで、運用側だけではなく、利用者側もワクワクしながら使えそうですね。山本さんも「「myThings」アプリは使い方次第で小さな粒の日常課題を解決できる。アプリ上の設定で組み合わせができるので、全くWebの知識が無い人でも自分でモノとモノを″つなげる″楽しさが味わえる、画期的なサービスです」とのこと。

また「myThings」を「これからできあがるモノと今までに作られたモノをつなげるプラットフォーム」として、つながりを利用者や町にまで拡大させ、利用者の快適で安全な暮らしをサポートしていきたいとの抱負も聞けました。町と自分がつながるというと、規模感の大きさになんだか圧倒されそうです。山本さんは災害発生時の避難経路確認など例に挙げていましたが、他にも通勤中や買い物中など、様々な面で実生活に役立てることも可能でしょう。

つながりの拡大を実現させるため、現在は「myThings」経由でインターネットにつながっていないモノやデータをつなげる試みも行われているのだとか。
現状自作ガジェットなどからもWebの情報をデバイスに、デバイスがセンシングした情報をWebへと相互の情報のやり取りもできるということで、ハードからソフトに入る技術者の人でも使いやすそうですね。山本さんは「この機能を使って新たなIoTデバイスをプロトタイピングしてほしい」とコメントしています。ラズベリーパイなどを用いれば、それこそ自分で工作をするような感覚でIoTデバイスを作ることができるので、あまり知識のない人のIT技術に感じる敷居を下げるような効果も持っているように感じました。

「myThings」はモノやサービスが従来持つ機能を拡張し続けることができるプラットフォーム。そして新しいモノを生み出す手伝いやあらゆる生活シーンをつなぐことで、現実世界の課題をIoTという形でWebを使って解決できる可能性を秘めていると締めくくりました。

 

●HTTP/2: ぼくたちのWebは何が変わる?

続いて登壇したのは株式会社レピダムでシニアプログラマとして認証認可やデジタルアイデンティティなどを専門としている前田薫さん。現在話題のHTTP/2について概要を話していただきました。

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今年からRFCとして公表され使われるようになったHTTP/2ですが、現在でもユーザが知らず知らずのうちに使っているとのこと。世の中の巨大サービス、例えばGoogleやFacebook、Twitterはすでに対応しており、Firefox やChromeなどのブラウザでも対応済みであるようです。

 

HTTP/1.1とHTTP/2との違いを簡単にまとめるてみると、プロトコルがテキストからバイナリーに変わり、セキュリティも強化されたプロトコルになりました。マルチプレキシングが可能になったので、HTTP/1.1が一つのTCPコネクションで一つのリクエストしか処理できなかったのに対しHTTP/2はリクエストが複数処理できるように。他にもプライオリティー制御やサーバープッシュの機能の追加により、リクエストレスポンスのセマンティクスを保持したまま性能の改善が見られるそう。

ではHTTP/2の導入後、ブラウザ体験としてどのように変わるのか。
まずHTTPリクエストの通信が早くなるので、Webページの描画が早くなります。また、画像やCSSなどの取得時のプライオリティが選択できるようになり、状況に応じて ページ内要素のダウンロード順をコントロールできるようになりました。これは体感時間にして、0.5~1秒ほどの反応の改善がみられるそうです。しかも通信速度が遅いネットワークほどその違いが顕著に出てくるというので驚きですね。マルチプレキシングにより接続の数が減るので、自然にネットワークリソースの効率化が図れトラフィックの軽減にもつながります。
このように気が付かないうちに、Web環境がかなり便利になってくるのですね。
ページ離脱の阻止など、Webマーケティングにも影響を与えそうな印象を受けました。

続いてHTTP/2に移行するに際して、技術者側が考えておくべきことを説明していただきました。HTTP/2に移行するメリットとしては、まず先ほども言ったようにページの表示が早くなる。またTCP接続数が少なくなるので、フロントサーバー数の削減にもつながるということがあります。これだけで大きなビジネスメリットですよね。

デメリットとしては、対応サーバーへの移行(Apacheなど)やTLS前提なのでhttpからhttpsへの移行が必要になってくる。また、HTTP/1.1時代の工夫のundoが必要になるとのこと。HTTP/1.1での工夫やメリットが2だとデメリットになることもあるのだとか。技術者側としては、HTTP/1.1と2が混在する環境で相手が何で来るか考えていく必要がありますね。前田さんの予測としては、「まだHTTP/1.1は使えるので、HTTP/2への移行については当分急いでやる必要はない。しかしプロトコルはどんどん進化するので早め早めに対応したほうが得です。のほほんとしているといつか取り残されてしまうかもしれない」とのこと。

最後にhttpの次に何が起こるかということについて、プロトコルの拡張仕様やプッシュノーティフィケーションの実施、HTTP/3にも話が及びました。HTTP/3についてはアイディアを出していく段階だそうなので、気になる方は「http workshop http ideas」で検索をお願いします。トランスポートの改良について、リクエストレスポンス過程のロスを自分で処理しカーネルの仕事をアプリ上で行う機能を持つQUICにも少し触れ、UDPベースのHTTP通信についての展望を述べるという形でセッションを締めくくりました。

技術者側として、今後どのようにWebサービスが変化するのか流れについていかなければならないと繰り返し言われていたのが印象的でした。

 

●パーソナライズが加速するメイカーズムーブメント

休憩を挟んで、3番目に登壇したのは、株式会社Cerevo で広報・マーケティングを担当し、コミュニケーションデザイ ナーとしても活動しているあくやんさん。

あくやんさんが所属している株式会社Cerevoは、注目を集めるIoTの分野でさまざまな開発を行うハードウェアベンチャーとして、2008年に設立して2014年まで社員は10数名でしたが、2015年の今年になりIoTの波から約80人までに拡大したとのこと。しかも社員のうち8割がエンジニアという大変モノづくりに強い会社です。

今まで制作されてきたIoT製品は、皆さんご存知であろう、PCなしでもオンライン配信ができるデバイス「LiveShell」だったり、アプリ連携で変形するスマートトイなど、ユニークな製品が中心のようです。というのはCerevoの開発基準に「Global Niche(グローバルニッチ)」があるから。世界規模である、ニッチであっても確実に存在する需要を開発していくことが、独自で面白いモノづくりにつながるのですね。インターネットがあることで小さな需要一つ一つにリーチし、実現が可能になるということでマーケティング的にも大変興味深く、改めてインターネットが持つ力を見せつけられたような気がします。

そんなCerevoのモノづくりの拠点となるのは秋葉原にある「DMM.make AKIBA」。
総額5億円の機材設備を備えた、企業や個人がモノづくりするのにも便利な施設だそうです。ちなみにここでは、ほかにもダンサーさんやフェスにぴったりな、音楽にあわせて光る靴などの、遊び心のあるクリエイティブな製品が数多く制作されているのだとか。他にどのような面白い製品が作られているのでしょうか…。大変気になるところですね。

しかし、このようなものづくりの現場というのは、設備や環境、場所といった問題が大きく関与してきます。そのため、「DMM.make AKIBA」のような施設を使用しなければなかなか、オリジナルのハードウェア開発が難しいのが現状です。
では10年後のIoT動向は一体どうなっているでしょうか。
あくやんさんは「モノがつながるのも、つながるモノが作れるのも当たり前になり
必要なものが必要な時に作れる時代になっているでしょう」と結婚やキャリア形成なども含めた自分の未来年表とともに説明してくれました。

今後は個人の作りたいモノにあわせた開発モジュールや、キットが誕生して
Webやリアルなものづくりにおけるコストが低下することでもっといろいろなモノが作れる時代になる。そして誰もがモノづくりできるのが当たり前な状況のもとで生まれたIoTネイティブが生まれるだろうとのこと。「パーソナライズなもの、つまり自分だけが使いたい自分のためのIoTを誰もが作れる未来になっていくでしょう」とIoTが身近になる未来を現場の目から語っていただきました。自分が欲しいモノ・コト・体験ができたら自作してしまおうということ自体が今まで私たちに無かった発想ですし、そのような新しい観点を持つということで今後の世代は新しいWebサービスや画期的なモノづくりを行ってゆく余地がまだまだあるのだということに気づかされた、充実したセッションでした。

 

●IoTから”動き出す”技術

最後に登場していただいたのは、株式会社ユビキタスエンターテイメントで取締役副社長兼CTOを務めている水野拓宏さん。最近水野さんが興味を持たれているVRやドローンといった技術から、10年後の人間とITの進化についてお話していただきました。

水野さんはプログラマ出身で、ドワンゴに所属したりIPAにて天才プログラマー/ スーパークリエイターとして認定された経歴をお持ちの方。
ユビキタスエンターテイメントは「技術とエンターテイメントをコンテンツに役 立てる」と理念を掲げ、また「エンターテイメント=おもてなし」と捉えていることから、人を喜ばせるコンテンツを多数制作しているそう。最近、会社として関わったプロダクトには映像情報を取り込んだ地図サービス や、ぺんてるのラインマーカーに対応するスマートフォン専用アプリ「AnkiSnap」があります。開発した商品の中に共通するのは”エンターテイメント性”で、実用的で終わるだけではなく、付属すると製作品としての面白さが上がる機能も盛り込んでいるのだとか。

水野さんが最近はまっているものとして紹介した一つ目は「超4K実写動画ソリューション」。これはCGでなく実写であることで臨場感を実現させている技術で、CGとの組み合わせも可能であり8K動画を使ったコンテンツ作成も現在進んでいるそうです。

8Kほどの情報量にまで到達することもあるといいますが、そこまでの情報量になると、映像でも本物のようなアスファルトの質感、すれ違う車の文字までリアルに見えるというから驚きです。実際に超4K動画の秋葉原や初音ミクを見た人の感想は「そのまま仮想世界から帰ってこられない」「向こうにいる初音ミクと目が合って好きになった」など、映像への没入感を強く感じたという声も上がったとのこと。VRがディスプレイというより実態に近い域まで進化し、人間の心理を動かすレベルまで技術発達が進んでいることは非常に面白く、今後のさらなる応用の可能性が感じられますね。

二つ目に紹介していただいたのは、昨今何かと話題になっているドローン。水野さんが持参したピコドローン(※現物は自律しないタイプです)を会場で実際に飛ばすと、客席からも「凄い」「可愛い」との声が聞こえてきました。じつは制作ではラジコン的な部分もあるのですが、ドローンとラジコンとの大きな違いは自分で情報処理できるか否かという点にあるといいます。どういうことかというと、ドローンにはフライトコンピューターが入っているので、操縦者側があらかじめプログラムした情報や事前の操作情報をドローン側が維持 してくれる。そのためドローンの自律飛行も可能で、速度やフライト情報を事前にプログラムしてドローンに渡しておけば、コントローラーの電波が届かないで も飛ぶなんてことも可能だとか。さらに自分でアプリケーション作れるレベルにまで行くと、ただ飛ぶだけではなくドローンにさまざまな動作をさせることも可能です。「ドローンは情報処理することができる、つまり空を移動するコンピューターなんです」と水野さんは言います。実際に飛行コンピューター実験やドローン実験を重ねて可能性にフライトコンピューターやドローンに物を運ばせることで、一般の人にもロボットを操縦する感覚が味わえるようになるとは…。何だかドキドキしますね。

では、この二つの技術が持つ意味とは何でしょうか。
水野さんはVRを「人間が情報空間に介入する手段」、ドローンを「情報、仮想空間の存在の、実世界での機動力」と説明しました。Amazon Dash Buttonのようにコンピューターが実空間での動きを獲得しはじめ、最近発表された「SORACOM Air」「AWS IoT」のようにIoT向けのプロダクトや サービスの拡充が積極的に行われ、情報空間での動きの獲得が行われる。これからの10年でこのような実空間と情報空間の交差が始まる、というように締めくくっていました。

◇ ◇ ◇  ◇ ◇ ◇  ◇ ◇ ◇  ◇ ◇ ◇

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以上4名の方の熱いプレゼンテーションの後、セッションや懇親会を行ってTechLION vol.23は終了しました。10年後のIT動向という一本のテーマがあったため、IoTの進展でインターネットやIoTといったIT技術がより身近になり誰もが作り手や発信者になれ、自分のアイデアを形になし得る未来の到来がはっきりと見えたように思います。今後ツールやモジュールの進化とともにクリエイティヴなモノがどんどん現れる可能性が感じられました。

インターネットというツールがあることでニッチな需要や受け手が表面化する反面、面白いコンテンツだけが生き残れる、厳しい時代になっていくように思います。そのような状況下で、技術者はより個にリーチするモノを作りつつ、利用者側は、今後プログラミングなどを含めて、知的好奇心が強いIoTネイティブが現れるという意味でも、流れについていき必要性を感じました。

改めまして、スピーカーおよび参加者・聴講者、スポンサーの皆さん、ありがとうございました。

次回のTechLION vol.24は来年1月に東京で開催予定です。後ほど詳細情報が発表されますので、奮ってご参加ください!

vol.23 ありがとうございました!そして次回と出張版のお知らせ

TechLION vol.23、ご来場そしてご観覧いただき、誠にありがとうございました。
今回は「10年後の生活を支える最新IT動向」をテーマにお送りしました。いかがでしたでしょうか?

 
今回のTogetterのまとめはこちら☆
TechLION vol.23 #techlion
 
次回はTechLION vol.24は2016年1月14日「EC・決済最新動向」をテーマにお送りします。
場所は六本木SuperDeluxe
出演:えふしん/藤川真一、ほか交渉中
MC:法林浩之、馮富久

追加情報は適時更新いたしますので、
引き続き当ウエブサイトのチェックをお願いいたします!
http://techlion.jp/vol24
 
そして、12月に大阪でTechLION出張版もあります!
■名称:TechLION出張版
■日時:2015年12月19日(土) 時間未定
■場所:大阪産業創造館
■詳細:まにまにフェスティバルP4のWebサイトをご覧ください。
 

2年ぶりの地方遠征!街の暑さにも負けないアツい夜となったTechLION vol.22@京都

2年ぶりの地方遠征!京都・鴨川近くのライブハウスでアツい夜を

TechLIONプロデューサーの馮です。こんにちは。暑いですね。ほんとに。

そんな暑さを吹き飛ばすぐらいアツい夜を京都で過ごしてきました。そう、TechLION vol.22@京都。TechLIONとしては2年ぶりの地方遠征です。会場となったスワロウテイルは満員で、たくさんの聴講者の前で、京都および関西に縁のある4名のスピーカーが、アツいトークを繰り広げました。

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さっそく当日の模様をお届けします。

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約40年の歴史を持つ伝統クラブの裏側に迫る
~京大マイコンクラブ今昔物語

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乾杯!乾杯!乾杯!
 
いきなり3回の乾杯で始まったTechLION vol.22、最初のセッション。

これはトップバッターを務めるPasta-Kさんが所属するKMC(京大マイコンクラブ)に伝わる乾杯のスタイル。1977年に設立以来、約40年続いているこのクラブの変遷について、設立当時はまだ生まれていなかったPasta-Kさんが、さまざまな出来事とともに振り返りました。

KMCが設立したのは今から37年前、まだ昭和、そして日本が高度成長期を終え、安定成長期に入るタイミングでした。11名でスタートしたKMCは、その時代その時代の文化や技術をふまえながら多くの学生を輩出し、日本におけるコンピューティング文化をけん引する団体の1つとして確固たる地位を築いてきました。ちなみに、冒頭で紹介した「乾杯!×3」(乾杯三唱)というのは、1982年に初めて行われ、今も続く伝統となっているそう。「このころから、新入部員を受け入れる体制が整備されて、今の礎が築かれたと思います」とPasta-Kさんは当時を思い描いてコメントしました。

また、1984年には部室に家宅捜索が入るなど、さまざまな出来事があった中、インターネットという観点で大きな出来事となったのは1998年にISDN化、1999年にドメイン取得、2000年にKMC専用Webサイト公開を行ったとのこと。まさに日本のインターネットやWebの歴史と重なるところでもありますね。ちなみに、1998年には『Software Design』での連載もスタートしています。

2000年代に入るとコミックマーケット出展(2002年)、部員のプロジェクトが未踏ソフトウェア創造事業に採択(2005年度上期)、ACM 国際大学対抗プログラミングコンテスト(ICPC) 世界大会14位入賞(2006年)など、外部への展開や情報発信を積極的に行っていくようになりました。

KMCの部員は総勢130名(幽霊部員含む)で、実は京大生でなくとも、部費を払って承認されれば入会できるとのこと。これは意外でした。

あっという間の30分で、Pasta-Kさんは「今はKMC出身の人がIT関連の企業で活躍していることも多く、昨年は学園祭のKMCブースにPepperが展示できるなど、可能性が広がっています。自分たちもぜひ続いていきたいですね」と歴史と伝統のあるKMC部員の一人であることを誇りに思うコメントで締め括りました。

 

はてながインターンに力を入れるワケ
~はてなとインターン

次に登場したのは、京都のIT企業として注目を集める株式会社はてなの執行役員サービス開発本部長でもあり、創業メンバーの一人でもある大西康裕さん。

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大西さんは2001年に現代表取締役会長の近藤淳也氏らとはてなを創業し、今に至ります。京都で立ち上げた後、本社を東京に移すなどしながら、現在は京都(本社)と東京(支社)の2ヵ所に拠点を構えており、社員数は京都51名、東京39名とのこと。

このように企業として成長する中で、はてなとしてITやインターネット業界に、そして社会に貢献できることは何か?として始めたのが今回のテーマでもある「インターンシップ制度(以降インターン)」です。

2015年現在、多くのIT企業がインターンに取り組んでいますが、はてなはこうした企業の中でもいち早く2008年に第1回目のインターンを行いました。

「当時は初めての取り組みだったので、私たち自身も手探りでした。インターンは1セット4週間で行うのですが、最初のときはその感覚がわからずに、8月と9月の2セットを行ったんです。今思うと無謀でした(苦笑)」と大西さんは振り返ります。

というのも、インターン自体は会社全体で取り組む事業の一環ではあるものの、当時はエンジニアの数が10名未満、インターンの学生が10名と受け入れ側のほうが人数が少ないという状況で、かつ、通常業務の中での新規取り組みだったので、それは大変だったそう。「死ぬかと思いました」という、どこまで冗談なのかわからないコメントも聞けました。

年々継続していく中で、インターンの内容が充実してきています。実プロジェクトへのアサインはもちろんのこと、職域に応じたプログラムなど、目的に合わせた内容に落とし込まれているそうです。さらにインターン期間中はイベントもたくさん予定していて、成果による表彰や歓送迎会といったものから、遠方からの学生さん向けには休日の観光やハッカソンも用意されています。このあたりは、経験値の高さがあるからこその充実度ですね。

大西さんはインターンの意義について「今の世の中、Webサービスを勉強するための情報やツールがネットにはたくさんあり学ぶ機会が増えていますが、実際に動いているプロジェクトに参加する機会はまだまだそれほどありません。私たちが用意するインターンでは、参加することで実際のプロジェクトを体感できるようにしており、これこそがインターンの意義であり価値だと考えています」と説明しました。

また、はてなのインターンを経験した学生の中には、現在、はてな内外で活躍しているメンバーが多数いるそう。こうした状況について「私たちはインターネットで多くのことを学んだので、(インターンを通じて)インターネットで返せたら嬉しいです」と、さまざまな困難を伴いながらも、一個人としてインターンに積極的に取り組んでいる姿勢が大西さんのプレゼンテーションから伝わってきました。

TechLIONが開催されたのは8月7日で、翌週8月10日からは今年のインターンが始まるタイミングで「これ(TechLION)が終わったらすぐに準備です」と、大西さんはもうすでに次のインターンに向かっているのが印象的でした。

 

勉強会やセミナーの意義ってなんだろう?
~勉強会とかセミナーとか

休憩を挟んで3番目に登場したのは、今回唯一京都府外、大阪からの参戦となった合同会社かぷっと代表の川合和史さん。

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川合さんはMCを務めた法林GM、そして私、馮ともさまざまなところでの接点が多い間柄。とくに法林GMとは、関西オープンフォーラム(KOF)という関西のITイベントに関して運営として一緒に活動したり、実際にセッションのMCを2人で務めるといったことをしています。私もKOFでお二人がMCをしているステージに登場した他、川合さんが主催しているWeb系イベント「まにまにフェスティバル(通称まにフェス)」のスピーカとしてお招きいただいたこともありました。

そんな背景もあったことから、このセッションでは「なぜ勉強会やセミナーを行うのか?」という本質的なテーマについて、三者による運営視点でのトークが繰り広げられました。

川合さんは勉強会やセミナー(以降イベント)の運営について次のようにまとめました。

まず、最初に何をするか決める/とりあえずスケジュールから決める。次に場所を決める。協賛をつのる。告知する。あとはがんばる。

「とくに最後のがんばるということが大事です(笑)」とした上で、さらに豊富な経験を持っているからこそのコメントがありました。それは「イベントが終わったあとに余力を残しておく」です。

どういうことかというと、イベントというのは終わったときに達成感と疲労感が襲ってきて、そこで終了となりがちなもの。しかし、運営者としてはそこで終わりではなく、イベントが終わったあと、関係各所へのフォローアップが求められるのです。たとえば、登壇してもらったスピーカーや参加者への御礼、会場撤収や諸々の精算などなど。

この点については法林GMも「ゴールから200m走る力を残しておくことが大事ですね」と相槌を打っていました。

そして、なぜイベントをやるのか?については、「自分の場合は、個人的になんとなく、やりたいから」と川合さんは述べ、「だから、自分がやりたいことをやりたいペースでできるイベントにしている」と、説明しました。

さらにイベントを開催するメリットとして「自分が知りたいことを知れるのはもちろん、自分も参加者もたくさんの人と出会え、また次の世界が広がる可能性が高まる」と、イベント運営の醍醐味について経験とともに紹介しました。加えて川合さんは「私は積極的にガンガン話しかけるタイプじゃないですが、それでも場(イベント)をつくることで自然と出会いを生み出せます」という、また別視点でのメリットについての話も印象的でした。

最後に、今年のKOFの開催日(2015年11月6、7日)まにフェス(2015年12月19日)の開催をアナウンスしてセッションを終えました。関西方面の皆さん、足を運んでみてはいかがでしょうか?

 

その認識あってますか?
~技術者にとってのセキュリティとプライバシー

トリを務めたのは立命館大学情報理工学部教授で、過去に総務省での通信規格とセキュリティ政策担当も務めた実績を持つ上原哲太郎先生。

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上原先生はトップバッターのPasta-Kさんと同じくKMCに在籍していて(27年差とのこと)、元KMC顧問でもあります。ちなみに現在、KMC最年長部員だそうです(実はPasta-Kさんのプレゼンテーションの際もちょくちょく登場されていました 笑)。

上原先生はご自身の活動分野である情報セキュリティ、そして、今さまざまな場面で注目を集めるプライバシーについて解説を行いました。

まず、TechLIONでも過去1つのテーマとして取り上げた“情報セキュリティ”について。これは、自社の情報を奪いに攻めてくる(攻撃される)ことに対してどのように防ぐか、対策を考えることが大事。その際、「現在のインターネット社会では開発者の無知も問題になりうる時代になっていて、対策がきちんとできていないことが損害賠償の対象になりうる」と上原先生は説明しました。

法律上ではそうなっているとは言うものの、「それでも事故は起きるもの」というのが上原先生の持論。なので、事故が起こらないようにするのと同じように、事故が起きたときの対策、動き方を考えておくことも大事と力説しました。

さらに力強く語ったのがプライバシー問題。この件について上原先生は「マイナンバー問題、皆さんはどう思っていますか?」と会場への投げかけから始めました。マイナンバーの詳細については関連文献や資料をご覧いただくとして、この10月から、事業内容によっては必ず扱うデータになります。

ここで上原先生は「多くの人が誤解しているのが、マイナンバーの漏洩問題。マイナンバーそのものはIDであり、単なる番号。だからこれだけが漏れることについては実は危険ではないんです。それよりも危険なのは、マイナンバーに紐付けられた(個人情報など)他の情報。現状は“マイナンバー”という単語だけがひとり歩きしているのです」と、各種報道や周囲の環境が生み出してしまった誤解について、改めて専門家としてのコメントを述べました。

その上で、「マイナンバーはプライバシーを扱う可能性があるため、個人情報およびセキュリティとは別物として考えなければいけない」と説明しました。どういうことかというと、「(個人情報の)セキュリティは、企業や組織にとっては防衛するもの。なので、そこに関わる人全員の目的や意識が同じ方向に向きやすいです。しかし、プライバシーは個人の尊重であり、個人の権利となります。そのため、人それぞれ価値観や意識がバラバラ。マイナンバー制度ができることによって企業や組織はそれらをどうまとめるか、それが難しいのです」としました。つまり、守るべきものと(多様性を)認めるものの違いをきちんと意識して扱わなければならないということです。

最後に上原先生は「エンジニアというのは一般人から見れば魔術師(のように見えます)。ですから、何をしているのか信用を得るためには、(ただつくったり技術を磨くだけではなく)何をしているのか、何のためにやっているのかを説明することが大切ですね」とエンジニアの心得を述べ、発表を終了しました。
 

インターネットを通じた人と社会のつながりが見えたvol.22

以上、四名によるプレゼンテーションがあっという間に終了しました。今回、具体的なテーマを決めない形で(強いて言えば京都という土地)構成したTechLION。一見バラバラのように見えたかもしれません。しかし、振り返ってみると、学生からの情報発信、地場の企業とITへの貢献、コミュニティ、個人としての関わりとエンジニアのあるべき姿などなど、何か一本の軸が見えたのではないでしょうか。それは、インターネットを通じた人と社会のつながりです。この先、ますます技術が進化し、社会とインターネットが密接になることが予想される中、エンジニアとしてはもちろん、その中の社会の一員としてどうあるべきか、古都京都で気づきの得られた時間になったように思います。

改めまして、スピーカーおよび参加者・聴講者、スポンサーの皆さん、ありがとうございました。

 

さて、次回TechLION vol.23は10月に東京で開催予定です。テーマは今回の流れにも通ずる「10年後の生活を支える最新IT動向」。まもなく詳細情報を発表しますので、お楽しみに!

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vol.22 ご来場ありがとうございました!

昨日はTechLION vol.22、ご来場そしてご観覧いただき、誠にありがとうございました。
初の京都開催でしたが、早速来年もという声も聞こえてきて とてもうれしいです!!
 
今回のTogetterのまとめはこちら☆
TechLION vol.22 #techlion
 
次回はTechLION vol.23は 10年後の生活を支えるであろう技術 を先取りしたテーマでお送りいたします。
開催時期は未定ですが10月ころを予定しています。
場所は六本木SuperDeluxe
MC:法林浩之、馮富久

追加情報は適時更新いたしますので、
引き続き当ウエブサイトのチェックをお願いいたします!
 

vol.21報告(2/2)―会場から、ネットの向こうから、ゲーム業界の舞台裏への質問が集まった

TechLION取材班まつうらです。先週に引き続き、5/25に開催されたvol.21の模様の後半戦をお届けします。この模様は動画でも公開しておりますので、是非合わせてご覧ください。

Ustream配信中
いつもこんな感じで生中継。今回は2会場でパブリックビューイングが実施されるとあって、スタッフはより緊張したそうです

vol.21ではコンピューターゲームに関わる活動をされている4人のゲストを招き、「ゲーム」というTechLIONでは初めての分野を取り上げていますが、今回のTechLIONでは初めてなことが実はもう2つ。かつて出張した地、大阪と名古屋の2会場でパブリックビューイングが実施されていたのです。(Ustream等を使って簡単に実現できるようになり、いい時代になりましたね)

もう一つは、後半戦(第3部)を特に議題を設けずに質疑応答の時間としてみたこと。やってみるとITの現場で活躍する獅子達が揃えば話は尽きぬもので、さらにパブリックビューイング観戦者から質問も届いて大いに盛り上がりました。

■後半戦 ジャングルバス.com (質疑応答パート)

ゲーム運営の舞台裏の体制や技術に関する質問、チートにどう対策しているかという質問など、たくさんの質問が、会場内から、さらにインターネットの向こうのパブリックビューイング会場から寄せられました。全てをお伝えすることはできませんが、特に面白かったものを選りすぐってお伝えします。

15時のピーク

ある日のDBアクセス
前半戦で示されていたモンストのトラフィック。確かに毎日15時頃に小さなピークが見られる。

観戦者:清水さんのスライドにあったモンストのトラフィックで、15時にピークがありましたがあれは何が原因なのでしょう?
清水:15時に限った話でもモンストに限った話でもないのですが、ゲーム内にいろいろイベントがあって、それがたまたまああいうグラフになっていたのかな、と思います。「この日時にこういうイベントがある」っていうのを通知してくれる機能があって、通知が来ると集中します。
伊勢:恐らくそれは逆だと思います。一般的な会社には15時に休憩があってトラフィックが上がります。それで運営は、トラフィックが上がる、つまり人が増える時にイベントをかますというのが常套手段ですから。

オープンソース vs プロプラエタリー

観戦者:運用管理でオープンソースソフトウェア(OSS)を使う機会が増えてきてますが、ここだけはどうしてもプロプラエタリー(=商用の非オープンな)ソフト(例えばJP1とかSystemwalkerとか)を使わざるを得ないってことはあるんでしょうか?
竹迫:まぁ、ExcelとWordですよね(笑)。あれはぜったい外せないですね。
伊勢:基本的にはないですけど、自分のスキルが及ばないとか責任を取りたくない部分にはプロプラエタリーを使うというのは基本ですね(笑)。
法林GM:伊勢さんが関わられてた頃のゲーム開発ではもうちょっと商用のものが多かったりしませんでしたか?
伊勢:僕がやってた頃は今のようにスマホじゃなくてコンシューマーゲーム機だったので、SDKはプラットフォーム提供元のものを使わなきゃいけないという決まりがあったんです。でも開発環境はほぼOSSでしたね。プレイステーションのコンパイラーはGCCですし……。システム運用に関しても、商用のパッケージを使うってことはほぼなかったですね。
清水:モンストの場合、サーバーで使うソフトはトークで紹介したとおり全部OSSですね。強いていうならクライアントのOS、MacOSだったりWindowsだったりがプロプラエタリーですけど。他社さんでVMwareを使っているという例も多少聞きますが、やっぱりあまりないですね。
(それに対し、会場からこんなツイートが……)

清水:HipChatとか、そういったSaaSで提供されているものは確かにオープンソースではないですね。そこは補足ということで。
伊勢:そうですね、SaaSはありますね。サービスとして提供されているものを月額で払って使うっていう利用形態は確かにありますね。逆にそっちの方にシフトしているかもしれませんね。
竹迫:私はSlackとか使ってますね。
馮P:ChatWorkとか使ってるところもありますよね。

パブリックビューイング会場からも質問が

馮P:大阪からの質問で、モンストのデータの削除についてもう少し詳しく教えて欲しいという質問が寄せられています。

清水:サーバーを運用しているとデータベースのデータがどんどん増えいくんですが、容量も無限じゃないので削除も並行してやっています。書き込みと削除は常に同時に動いている状況なのでが、そのバランスが難しいです。
馮P:その削除のスピードは、やっぱり人間が決めているんですか?
清水:そうですね。例えば1秒に何件削除するか試行錯誤したり……。削除によってもデータベースの負荷が上がりますので、削除のしかたにもすごく気をつかっています。気を抜いた隙に、がーんと負荷が上がっちゃうなんてことがあるとゲームが成り立たなくなりますのでとても大事なところです。
法林GM:ということだそうです、大阪の皆さん。

ユーザーサポートの取り組み

観戦者:ゲームというユーザーに近いジャンルのサービスで、ユーザーサポートに関して気をつけていることはありますか?
清水:サポート用の開発メンバーがいます。「サポート業務をするにあたってこういうツールがないと効率よくサポートできない」といったことがありますので。例えば障害が発生して何かを補填してあげるみたいなことがありますが、手作業でやってるととても追いつかないということがありますので……。何もトラブルが発生しないということは有り得ませんので、こういう体制を敷くことは必須ですね。
伊勢:サポートってたぶん2種類あって、1つはトラブルに対するサポートで、これは真摯かつ迅速に対応するのは当然。ですが、もう1つは世のゲーマー達が某掲示板やソーシャルメディアで「このゲームはゲームバランスがクソだ!」とか言って炎上するやつです。IBMの人が言ってたんですけど、そうやって叫ぶ人っていうのは全体の10%いないらしいですよ。その10%のユーザーの意見をゲームシステムに反映すると逆にゲームのバランスが崩れてくるので、すべてのユーザーがどう思っているのかを冷静に判断していく必要性がありますね。
でも某掲示板やソーシャルメディアで盛り上がっちゃうと、やっぱりサポートの人はだんだん心が傷んできちゃうんですね。それで「これ対応しちゃおっかなー」みたいなことになると多くのユーザーにとっての面白味がなくなりかねないのでそこは注意しないと。
法林GM:やっぱりブレない心というか……
伊勢:誰が言ったかじゃなくてやっぱり、何が正しいのかっていうのを根拠にゲームバランスをとりつつ運営をしてくのが必要かなと思います。

チートの何がいけなくて、それとどう向き合う?

第3部 質疑応答観戦者:チートの定義、特に自動化っていうのはわりとチートと見なされがちですけど、それでバランスが崩れちゃわないような対策とかありますか?
竹迫:スマートフォンなどの最近のゲームは詳しくないんですけど、数年前はアイテムのプレゼント機能とかがあって、ユーザー同士でアイテム交換ができたんですが、それがリアルマネートレーディングのきっかけになっていました。メッセージ機能を併用し、「お金振り込んでくれたらこのアイテムあげますよ」みたいな。でも「お金を払ったのにアイテムがもらえない」といったトラブルも発生し、最近のゲームは交換機能がなくなってきました。だからある意味ソーシャルゲームじゃないんですね、最近のものは。そうやってソーシャル機能をなくすこで、自動化によるチートのモチベーションをなくしていくって感じですね。
ただ、もともとアイテムって架空のものですからチートが横行しても運営業者が不利益になるわけじゃなく、他のプレイヤーも損するわけではないので、チート対策は不公平感の是正ですね。
伊勢:不公平感が強まってくると、結局お金を出して正当にプレイしている人たちは離れていっちゃうので、そこには不利益がありますよね。運営側としてはせっかく苦労して作ったオンラインゲームなので、なるべく寿命を延ばして長い間稼ぎたいわけで。チートされてもリアルマネーは減らないんだけど、稼げる期間がどんどん短くなっていっちゃうので運営は必死にチートを防ぐ、と。

ところでIngressのFFって、チートっぽくない?

Ingress飴
複数アカウントエージェントを捕まえるのにも活躍したというIngress飴。この写真の黒の他、青、緑と3種類。この後会場でも配布してくださいました。

観戦者:Ingressについて聞きたいんですが、FFってあれはチートに近い気がするんですけどいかがでしょうか?
伊藤:まず“FF”っていう言葉が何なのっていう話からですよね。FFというのは「フラッシュファーム」という用語の略です。ポータル(編注:現実世界の主要な建物や施設に結び付けられたIngress上での場所)と呼ばれる場所にレベル8以上の人が8人集うとポータルレベルを最高の8にすることができるので、皆で共謀してハック(編注:ポータルからアイテム取得)すると最高のアイテムがいくらでも採れるようになります。これがチートじゃないのか、ということですよね?うーん……、どうなんでしょうねぇ?
竹迫:Ingressは一人で複数端末持つのはアリなんですか?
伊藤:複数のアカウントを持つのはNG、ってことにはなってますが……
法林GM:技術的にはできちゃう事ですか?
伊藤:ええ、端末持っていれば。実際私もを使って複数アカウントの人を捕まえたことありますけども。
法林GM:なんかおとり捜査みたいですね!
観戦者:FFをきっかけとして集まったり、それ用のハングアウト(編注:一言でいえばSkypeやLINEのGoogle版のようなもの)もありますよね。
伊藤:そうですね。実際にそういうやりとりがあったりとか、ミーティングが定期的に行われたりだとか……。あとは「自宅ポータル」っていって、自宅にいながらアクセスできる範囲内にポータルがある人が、家でコタツに入りながらそのポータルをレベル8にして、協力者にアイテムを分け与えていくなんてことをやっている方々もいます。
しかもIngressはお金を払ってプレイするものではないので誰も損しないという。なので、最近ウチの周りはよく焼かれます(編注:ポータルが攻撃される)。みなさんがどこかでアイテムを補給して、ぜんぶ潰していくという……。直すの大変なんです。
法林GM:Ingressだという前提なしに聞くと凄い物騒な話に聞こえますね。
伊藤:海外だと、アイテムをリアル通貨で販売するっていう話は確かにありますね。
法林GM:それはアリなんですかねぇ……
観戦者:海外だと、ミネラルウォーターを買うとアイテムが貰えるっていう販促ツールとして使われてたりもしますよね。
伊藤:今度7/7からローソンさんでもパスコード(編注:ゲーム内でアイテム等が貰える番号)付のグッズが出たりしますね。……って、何で私が宣伝してるんだろ(笑)

◇ ◇ ◇

ユーザーとしては楽しくプレイしているゲームも、裏ではいろいろ考えなければならないことがあるんですね。トラブル対応やサポートもそうですが、ゲームバランスや何をもってチートとするのかといった単純には答えを出せない議論もあって、興味深い内容でした。出演してくださった皆様ありがとうございました。

(下の写真は、毎回恒例の出場者記念撮影。写真にマウスカーソルを重ねるとファイティングポーズをとります。伊勢さんが個性的!)

■次回は8月、京都に遠征します!

さて次回TechLION vol.22は、ひさびさに東京を抜け出し遠征します。場所は京都。京都といえばあのゲーム会社……、ではなくて(いや、さすがに次回もゲームというわけには)、ホラ、IT業界人にはとても有名なあのサービスを展開している会社があるではありませんか。

次回予告ということで、株式会社はてな大西康裕さん。それから、京都といえばここも外せない京大マイコンクラブPasta-Kさんのお二方が参戦します。いや、まださらにお二人くらい参戦する予定です。

詳細な日時と場所は、8/7(金)、京都スワロウテイルです。お近くの方はもちろん、そうでない方も是非ご参加ください!お申し込みは、下記の参加申し込みフォームから。

TechLION vol.22