運営者たちに学ぶ「愛されるコミュニティ作り」のコツ 〜TechLION vol.30レポート〜

店の看板

ゼネラルマネージャーの法林です。

開催からちょっと間が空きましたが、6月8日(木)に行ったTechLION vol.30のレポートをお届けします。今回はこちらの方々をゲストにお迎えしました。

  • 小島英揮さん(JAWS-UG設計者、CMC_meetup発起人)
  • 牧大輔さん(builderscon運営チーム、元YAPC::Asia Tokyo主催)
  • 星野邦敏さん(コミュニティコム代表取締役、コワーキングスペース7F運営代表者)
  • 平井則輔さん(JANOG副会長)

切り口やジャンルはそれぞれですが、皆さんコミュニティ運営をずっとやってこられた方々ばかりです。今回の対戦は自分もとても楽しみにしていました。

さて本番。馮さんと法林によるオープニングトークの後、ゲストの皆さんをお迎えし、かんぱーい!試合開始です。

かんぱーい!

前半戦

前半は、ゲストの方々それぞれに私から質問を投げかけて、それをもとにトークを展開しました。ゲストの皆さんに提示した質問は以下の通りです。

  • 小島さん:「AWS Summitどうでした?」「AWS以後の活動について」
  • 牧さん:「buildersconの準備はどうですか?」「YAPC::Asiaとbuilderscon」
  • 星野さん:「増床するんですか?」「地域コミュニティの楽しみと辛み?」
  • 平井さん:「JANOG40の準備はどうですか?」「20年間ずっと活発なのはなぜ?」

小島英揮さん
牧大輔さん

展開されたトークの詳細はYouTubeにて配信した映像をご覧いただくとして、ここでは自分の印象に残った言葉をいくつか記します。

  • 日本のAWS Summitは世界中のAWSイベントの中で最大規模
  • 最大規模になる過程でコミュニティが果たした力が大きい
  • 会場はクラウドと違ってオートスケールしない(笑)
  • buildersconではトークの採択にSNSを活用している。例えばfacebookのいいね!の数などを参考にしている。
  • buildersconを立ち上げたのは、誰でもやれるカンファレンスの枠組みを作りたかったから
  • 星野さんが経営するスペースは、ビルの7Fにあるので「コワーキングスペース7F」と命名したが、増床して6Fや8Fにも進出したため、今では8Fにも「貸会議室6F」が存在する
  • コワーキングスペースは、実施するイベントと置いてある本で来店する客層が変わる
  • JANOG40ではJANOG設立20周年記念イベントも実施される。歴代会長が登場したり、被災地関連の話題もあり。
  • JANOGが20年続けられたのは、困っている人達の受け皿になれたから
  • JANOGには運営委員の役割を記した文書があり、その中に「運営委員としての役目を果たせなくなったら自ら辞任すべきである」というような一節がある

これだけでもかなり濃い話だったような気がしませんか?気になった人はぜひ映像でご確認ください。

後半戦

後半は、私からお題を提示しながらも、基本的にはフリートークで展開していきました。こちらも、私の心に残った言葉をいくつかご紹介します。

星野邦敏さん
平井則輔さん

  • コミュニティは技術者のものと思われているかもしれないが、実は顧客と企業を結びつける良いマーケティング媒体になっている
  • 昔に比べてコミュニティが緩やかになっている。例えば、昔はフットサルをやりたければチームに入らないとプレーできなかったが、今は「個サル」といって、1人で会場に行くと、そこに集まった人達でプレーできる。
  • コミュニティは「一緒にやりたい奴とやる」のが一番いい
  • コミュニティが愛されるコツは「大義名分」や「共感できるお題目」
  • 愛を表現できる場を作るとよい。たとえばライトニングトークとかでいろんな人に発表する機会を提供するのは効果的。こうすることで参加者から当事者になれる。
  • MLに比べてSNSは反応が得やすいので、コミュニティの運営上、とても良い
  • 原始時代から人は火を囲んで一緒に食事をしてきたので、現代でも人と仲良くなるために食事をすることは良い手段。懇親会とかランチとか。
  • 異業種からITのコミュニティに入るのは難しい。だからコミュニティへの入りやすさを維持することは大事。
  • IT業界は同業他社の人達が集まってお互いの技術を公開し合っているのがすごい。その背景には、ITの世界は技術の賞味期限がとても短いので、持ち腐れになるぐらいなら公開した方がその人の価値が高まるという事情がある。

他にもいろいろと面白い話題が出ました。詳細はぜひ映像でご確認ください。

おわりに

こんな感じで話が進み、最後には会場からの質問も受けて、2時間のトークセッションはお開きとなりました。ゲストの皆さんにたくさんしゃべっていただいたせいか、時間がとても短く感じました。

そして、今回のテーマとして掲げた「愛されコミュニティの作り方」、このトークセッションを聞くだけでコミュニティに人を集められるようになるわけではありませんが、いくつかのヒントは得られたような気がします。私自身、長くコミュニティの運営をしていますが、こうしてコミュニティ運営に関するセッションをするたびに新しい知見が得られますし、また奥の深さを感じます。この分野、まだまだこれから広がっていくと思いますので、読者の皆さんも今から飛び込んでみてはいかがでしょうか。

最後になりましたが、出演してくださった皆さん、それから会場でいろいろとサポートしてくださった東京カルチャーカルチャーの皆さんにも、厚くお礼を申し上げます。カルカルは本当にやりやすい会場です。特に飲み物が減ってくると何も言わなくても補充されるのが(爆)。あれは飲み過ぎになるので危険です(笑)。

それから、次回のTechLIONは、夏から秋に入る頃に開催したいと思っています。ただいま企画を練っていますので、テーマや出演者や日程が決まり次第、お知らせします。楽しみにしててください!

出演者集合!

vol.30、ありがとうございました☆

本日はTechLION vol.30 ご来場ならびにご視聴、誠にありがとうございました!
大阪のパブリックビューのみなさまもありがとうございました☆
次回の開催日はこの夏を予定しております。情報は随時更新いたしますので、引き続きチェックをお願いいたします☆

本日のまとめ => TechLION vol.30【愛されコミュニティのつくりかた】

TechLION vol.30 第1部映像アーカイブ

TechLION vol.30 第2部映像アーカイブ

TechLION vol.30 のアルバム
小山哲志(koyhoge)さんによる撮影

TechLION vol.29レポート ~CTOに聞くエンジニアとマネージャーのあり方~

ゼネラルマネージャーの法林です。

2/22(水)に開催したTechLION vol.29のレポートをお届けします。

オープニング

今回から新会場・東京カルチャーカルチャーでの開催となり、今までよりも高い舞台に多少緊張しながらもリングイン。以前にこのブログで紹介した「いいちこ棒」を使って簡単な参加者層調査を行いました。結果はこんな感じです。

  • 参加者の半分は初参加、残り半分は常連(5回以上参加)
  • 参加者の8割がエンジニア
  • 参加者の年齢は20代と30代が1/4ずつ、残り半分は40代以上

やはりオッサンが多かった…俺のせいだスマンと思いましたが、予想以上に若い世代も多いという声も。まあ老いも若きも楽しんでいってください!

この後、本日のゲスト・伊藤直也さんと柄沢聡太郎さんをお迎えし、乾杯!試合開始です。

前半:エンジニア視点

前半はエンジニア視点での話として、お二人の新卒時代や、転職に際して考えたことなどをお聞きしました。以下、要点をお伝えします。

  • Webプログラミングの面白さは、簡単なプログラムでも見た目にわかりやすい成果が出せることや、短期間で開発したサービスでも人に使ってもらえることで、これがお二人をWebサービス開発の世界に引き込んだようです。
  • 初めての転職ではお二人ともそれなりに悩んだようですが、最終的に決意させたのは「このチャンスを逃すと次の機会は当分来ないかもしれない。だったら今挑戦しよう」というチャレンジ精神でした。
  • 著書に関する話もしました。ここでは直也さんから「本を書くとかサービスを作るとかは若いときにやった方がいい。もうすぐ40歳の自分が本を書いてもあまりプレミアム感がない。『若さプレミアム』は大きい」というコメントがありました。

後半:マネジメント視点

休憩をはさんで後半は、マネジメント視点での話をお聞きしました。こちらもいろんな話が出てきましたので要点を紹介します。

  • マネージャーになるとコードが書けなくなるという話がよく聞かれますが、直也さんは「今一番大事なことをやるのがマネジメントである」という考えに立ち、今の会社の最大の問題である技術的負債を返済するために自分でコードを書いているそうです。
  • 適切な技術の選択という話題について、メルカリがPHPを採用している理由や、直也さんが一休のサービスを開発するにあたりPythonを採用した経緯など、具体的な例を示しながらトークが展開されました。
  • 最後に採用の話がありました。エンジニアの採用において意識しているのは、技術力よりも問題解決能力や事業への共感の度合いだそうです。「技術しかない人はそれをマネジメントする人が別途必要になってしまう」(直也さん)「メルカリを使っていない人を採用することはまずない」(聡太郎さん)といった言葉が印象に残りました。


おわりに

こんな感じで話をするうちに、2時間半のトークセッションはあっという間にお開きとなりました。

今回、ゲストがTechLION史上最少の2名であることや、スライドもまったく用意せずに臨んだので不安もありましたが、ゲストのトークがとても興味深く、楽しいトークセッションをお届けすることができました。直也さん、聡太郎さん、ご出演いただきありがとうございました!

試合の模様をさらに詳しく知りたい方は、ツイートまとめや写真や映像でお楽しみください。

次回のTechLIONはまだ何も決まっていませんが、5月か6月ぐらいに開催したいと考えています。場所もできればカルカルで。ただいま企画中ですので、楽しみにお待ちください!

vol.29、ありがとうございました!

本日はTechLION vol.29ご来場ならびにご視聴くださり、誠にありがとうございました!
新しい舞台でのTechLION、いかがでしたか?
 
本日のまとめはこちらです。
TechLION vol.29【多彩なキャリアを持つスターエンジニアたちがついに登壇!エンジニアの生存戦略とは?】 #techlion
 
次回の開催日は未定ですが、情報は随時更新いたしますので、引き続きチェックをお願いいたします☆
 

※オフレコ中の様子です(^^;

もっと浮かれてみよう!IT/ネットの未来をすばらしいものにするために~TechLION vol.28報告

TechLIONプロデューサーの馮です。こんにちは。

早いもので2016年もあと2週間あまり。皆さんにとってどんな一年でしたか?

さて、TechLIONの2016年ラストバトルTechLION vol.28、去る12月7日に行われました。今回の開催にあたっては先日のブログでも書いたように、僕自身かなり思い入れのあるテーマ設定、そして、実際に、パネリスト3名、MCの法林GMとともに楽しい話で盛り上がることができました。

それでは当日の模様をお届けします。

2016年最後のTechLIONは「トーク」のみで勝負!
(撮影:小山哲志氏)

三者三様のバックグラウンド、テクノロジー・ビジネス・コミュニティ

今回、白石さん(テクノロジー)、小笠原さん(ビジネス)、田中さん(コミュニティ)というセグメントでお声がけさせていただきました(3名ともすべてのセグメントに精通しているのはもちろんのこと)。

まず最初にテクノロジーに関して、「テクノロジーの変化とユーザ体験」という切り口で白石さんに投げかけたところ、「そもそも今のHTML5でやっていることは、実はFlashでも実現できていたことです。つまり、テクノロジーが進化するというのはユーザが気が付かないうちに浸透することの結果でもあります」と、新しいテクノロジーかつ有用なテクノロジーというものは常にユーザが無意識に使っているという示唆に富んだコメントをいただきました。

また、最近はテクノロジーをコアに人が集まるケースが増え、その1つが勉強会であり、コワーキングスペースを運営する田中さんは「勉強会の目的はあくまで集まった人が勉強することで、運営者の負荷を高めることではありません。とくにテクノロジー系のイベントの場合、運営側に負荷がかかる場合があるのですが、私が運営するCo-Edoでは、主催者にお金の管理させず(負荷をかけず)、ユーザに負荷分散してもらう(参加費を払う)ことで、勉強会の本質を担保しています」と、昨今の勉強会ブームに対し、田中さんが考える「(本来の)勉強会」についておしえていただきました。

この点については、ハードウェアコワーキングスペースDMM.make Akibaを立ち上げ、運営する小笠原さんも同意していました。さらに小笠原さんは「DMM.make Akibaにあるさまざまな機材・工具はちょっとしたメーカのものよりもはるかにレベルの高いものを揃えています。その理由は、モノづくりをする環境を整えるときに、なるべく良いツールを使ったほうがアウトプット(モノ)にもつながるからです。また、秋葉原を選んだ理由は、これまでアキバ(秋葉原)と言えば工作好きの聖地。にもかかわらず、そういったコアな人間が集まれる場所がなかったからここ(アキバ)を選びました」とコメントしました。つまり、コワーキングを始め、コミュニティはその人たちが集まるための理由とともに、集まる場所にも大きな意味があるというわけです。このあたりは今後の技術系コミュニティにとって大変参考になる内容ではないかと思います。

もう1点、コミュニティあるいはイベントと言った観点で、日本の場合、無料での参加ができるものが多いのではという問いに対し「これはコミュニティやイベントだけにかかわらず、何か結果を求めるにはお金を使わないと回せないはず。とくに継続性を担保したいのであれば、強い思いとともにお金を回す意識も必要です。事業と同じですね」と、VCの立場でさまざまなスタートアップを観てきた小笠原さんならではのメッセージをいただきました。

もう1つ、そういったコミュニティやイベントを認知させる点に話が変わると、TECHFEEDを運営する白石さんが「とにかくタイトル重要・名前重要」と、イベントやコミュニティに加え、メディア運営者ならではのコメントが上がりました。結局、中身まで理解するには、まずタイトル(見た目)が大事ということです。

この点は「たとえば、今ならDeep Learningや人工知能のようにバズワードを入れるとイベント参加者の数が上がる」(田中さん)と同様の意見が上がりました。

一方で、「マイナーだったり、すぐに理解しづらいタイトルや名前は、認知された場合の価値はすごい高い」(小笠原さん)と、何かわからないものが定着したときのブランドとしての強さにも言及しました。僕たちのTechLIONも「よくわからないけど強そうだし(笑)。何より多くのエンジニアにここまでリーチできているがすごいですね」と、ご評価いただきました。

キーワードで読み解くIT/ネットの次に来るもの

第一部だけでもそのまま続きそうな中、第二部ではイベントのコンセプトにもなったケヴィン・ケリー著『〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則』の12のキーワードをもとにトークを展開しました。

シェアエコノミー、その先にある価値は?

その中からまず僕が最初に取り上げたのが「SHARING(シェア・共有する)」というキーワード。その理由は昨今のシェアエコノミーブームと実際、また、自分自身が関わる電子出版とも紐付けながら、皆さんの意見が聞きたかったからです。

まず、白石さんが開口一番「シェアは減らない。発信する側にとっては相対的価値が上がるのみ」と、昨今のシェアエコノミーに対し懸念される損得に対し、情報のシェアが持つ意味とそこから生まれる価値、インプットとアウトプットを例に説明しました。つまり、シェアとはみんなに何かを共有することであり、価値の提供をすること。逆の見方をすれば価値を提供できる価値を持っているという強みになり、それが結果として、相対的に価値を上げていくことにつながるというわけです。

また、田中さんから「セミナーと勉強会を例に言うと、セミナーはStudying/Learning/Teaching、勉強会はSharingと区別して考えています。つまり、座学なのかハンズオン(あるいは参加型)なのかとうことです。そして、いずれも回し続けた結果がコミュニティになります」と、まず、コワーキング運営の立場から見た、セミナーと勉強会について話されました。その上で「回し続けるという観点では、セミナーのような一方向だと限界に陥りやすいです。やはり、勉強会のように、(主催者・参加者という区別ではなく)全員が当事者で共有するという気持ちが生まれる場が、結果として継続しやすいように思います」と述べました。

小笠原さんはビジネスの観点からシェアについてお話されました。まず、最近ようやく導入が始まってきたスマートロックについて。これは、鍵をシェアするプロダクトであるわけですが、「スマートロックの価値は単に鍵を持ち運ぶ手間が減ることだけではありません。これもまた1つのシェアエコノミーなんです。スマートロックのID/Passを、場所や時間でシェアすることでさまざまな価値を作れます。たとえば、物流と合わせて使うことで再配達という無駄を減らせます。他にも民泊でも使えますね。つまり、シェアをすることで無駄を減らし合理化され、結果として、新たなビジネスが生まれ育つわけです。シェア・シェアエコノミーの本来の価値はそこに持っていくべきですね」と、ただシェア(共有)することで直接的な利益を得るだけではなく、その次につなげていける点こそが、シェアが持つ本当の価値ではないかと提示しました。一方で「とは言え、まだまだ物質的な価値だったり所有欲というのはなくなりません。おそらく東京と他の地域の差は皆さんが考えている以上のものでしょう」(小笠原さん)と、人の価値観は1つではないという点にも触れました。

ここでMCから「今までのシェアに対しては性善説が前提で成立するものがほとんどです。たとえば、それを悪意のある形で利用した場合、昨今のキュレーションメディアのような問題も出てくるのでは?」と質問を投げかけると「インターネットの成り立ち自体が性善説であり、ことネットの体験はまず性善説で考えたほうが良い」と、スタートに関しての性善説の重要性を小笠原さんは述べました。同じく白石さんも、「ネットサービスはもちろん、コミュニティも性善説ではじめないと成り立たないですね。ルールばかり作っていくと閉塞感しか残らない。改めて自生的秩序について考える時期なのかもしれません」と、ハイエクの言葉を引用しながら、同様に性善説の重要性に触れました。

新しい環境下におけるルールとは?

「ルールといえば、私は新しいことを始める際、まず、作ったものからルールを2つ削ることからはじめます」と、小笠原さんから非常にユニークなコメントもいただきました。
「コミュニティに関してはノイジーマイノリティが強くなりがち。(ルールに対して原理主義だったり)ネガティブなコメントをする人のほうが声が大きくなります。そこをどうつくっていくかもコミュニティにとって大切なポイントでしょう」と、コワーキングスペースから観たコミュニティへの印象と押さえどころを田中さんが教えてくれました。

さらに「何かをする場合、ポジティブアプローチとギャップアプローチを考えると、良いものを良くするポジティブアプローチは、価値が高く良いものが生まれやすいが、時間がかかります。一方、ギャップアプローチは悪いものを良くするので、課題解決に近づきやすいです。なので、ギャップアプローチが増えますが、自分の中で何がいいかとか、正解はわからないわけですから、ポジティブアプローチ(こうありたい)をつねに持っていることは、私は大切だと思います」と、多くの事業立ち上げ・投資の観点から成功につなげるヒントを小笠原さんがコメントされました。

「今の話の期待値という点で、ネットコミュニケーションの鍵もまさに期待値コントロールですね。コミュニティを円滑にする際、参加者の期待値をきちんとコントロールできるかどうかも、運営する立場には求められるように思います」と、HTML5Jなど、多くの参加者を抱えるコミュニティ経験から、白石さんも期待値の大切さを紹介しました。

2030年に向けて、2017年という1年は?

あっという間に時間が過ぎ、最後の第三部へと移ります。ここは会場からの質問を受け、パネリストに回答してもらうスタイルで進行しました。今回はその中から「みなさまの来てほしい遠い未来(2030年くらいとしましょうか)と、そこに向けての来年一年はどうなるか」という質問とその回答を紹介します。

これについて、僕は「未来を考えるとき、そのタイミングと同じ時間の過去を振り返る」アプローチを取ることがあります。たとえば、2030年であれば今から14年後、つまり、14年前の2002年と今を比較するわけです。そうすると、FacebookやTwitterなどのソーシャルネットはもちろん、(今のような)スマートフォンがまったくない世界、一方で、携帯電話(ガラケー)全盛の時代だったのが、2016年こうなっているのです。

この事実に基づく経験比較を投げかけたところ、「たとえば10年前にコワーキングをこのように運営するなんてまったく考えていなかった」(田中さん)というコメントや、「はやく世界に対して日本がプラットフォーム植民地から脱却したい」(小笠原さん)など、まったく想像できない世界、一方で、現状での問題点からの脱却など、未来に対しては非常に振り幅のある回答が出てきました。

その中で近い将来という点で、「AIなどの普及から、来年あたりはテクノロジーに対して倫理の壁をどうするかを本格的に議論する年になるのでは」(小笠原さん)や「人の倫理とテクノロジーのざらつきをどう扱うか」(白石さん)など、単に便利なだけではなく、人が使うテクノロジーを、きちんと人間が考えていく、その始まりとなる年になると予想しました。

そして最後に小笠原さんから「2030年はちょっと先ですが、その10年前の2020年、日本は東京オリンピックという非常に重要で、大事な出来事を抱えています。さまざまな問題はありますが、ここは視点を変えて、うまく利用してとにかく“浮かれる”、その気持ちを持って、モノづくり、サービスづくり、仕事など、未来につなげていくのが良いと考えます」と、未来に向けて、“浮かれる”ことの大切さを持って、フリートークを締めくくってもらいました。

2017年のTechLION、新たなるフィールドへ

今回、イベント終了後に改めてこの回を設定して良かったと感じました。とくに最後の「浮かれる」というキーワード、これは、ネット/ITの世界で上手に使うことが大事になっていくように思います。TechLIONも良い意味で浮かれていきます。

ということで。次回、2017年のTechLION vol.29は2月22日、ゲストに現在は株式会社一休CTOを務める伊藤直也氏をお迎えして開催します。

さらに5年間ホームグラウンドとしてお世話になった六本木SuperDeluxeさんから、新たな戦場として、ちょうどvol.28の開催日である12月7日から新規オープンした渋谷の東京カルチャーカルチャーさんにて開催。

渋谷に移転した東京カルチャーカルチャー。次はここ!
(写真は内覧会時撮影のもの)

どんなTechLIONになるのか?どのぐらい浮かれるのか?皆さま、お楽しみに。

開催概要

 

最後に。少し早いですが、今年も多くの方々に大変お世話になりました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

良いお年を。

vol.28、ありがとうございました!& 次回予告

TechLION vol.28、ご来場そしてご観覧いただき、誠にありがとうございました!
今回vol.28は「IT/ネットの次に来るもの ~テクノロジー・コミュニティ・ビジネスの視点から」をテーマにお送りしました。

Togetterのまとめはこちらです!
TechLION vol.28 【IT/ネットの次に来るもの ~テクノロジー・コミュニティ・ビジネスの視点から】 #techlion

次回TechLION vol.29は 2017年2月22日(水)
伊藤直也さん 参戦決定!!
ほか現在交渉中です。
vol.29は、お台場から渋谷へ移転したばかりの東京カルチャーカルチャーにて開催します。

追加情報は適時更新いたしますので、
引き続き当ウエブサイトのチェックをお願いいたします!
TechLION vol.29

みちのくTechLION、東北初開催となる宮城・仙台でアツいトークが繰り広げられた!

TechLIONプロデューサーの馮です。こんにちは。

早いもので2016年もあと3ヵ月ほど。秋風も漂い始めたこの季節、僕たちTechLIONは初めて東北の地へ足を踏み入れました。場所は東北最大の都市、別名「杜の都」と呼ばれる宮城県仙台市。東北や仙台と言って思い浮かべることはいろいろある中、日本に住んでいる人にとって忘れることが出来事の1つは2011年3月11日に起きた東日本大震災。今回の開催地仙台も大きな被害を受けました。

そして。TechLIONの旗揚げも同じく2011年3月。あれから5年が経ち、どうなっているのか。実は僕個人としてはそのあたりについても知りたく、今回の候補地として仙台を挙げさせていただき、開催に至りました。

前置きが長くなりましたが、初めての東北の地、とは言え、実は東京から新幹線で1時間半ほどで着くというとても立地の良い場所の仙台で、仙台に縁のある4名をゲストにお迎えして、TechLION vol.27として法林GMと2人でアツいトークバトルを繰り広げたので、その模様をお届けします。

会場となったのは、仙台駅から徒歩10分ほどにあるLive Dome「スターダスト」さん。めっちゃカッコイイスペースでした。

stardust

なお、本記事で使用している写真はすべて、TechLION vol.17でスピーカーとしてご出演いただき、また、毎回参加してくださっている小山哲志さん撮影によるものです。この場を借りて御礼申し上げます。

 

仙台のWeb業界事情 / 佐藤 裕

トップバッターを務めるのは、仙台でWeb制作受託を中心に業務を行う、株式会社メキメキ代表取締役 / クリエイティブ・ディレクターの佐藤裕さん。ご自身が15年続けてきた「Webの仕事」を通じて見えたこと・感じたことから、仙台のWeb業界事情や課題についてお話いただきました。

佐藤さんご自身、Webの仕事を始めてすぐに持った葛藤、それは(同業者との)つながりが皆無であるということ。そして、表に出てみよう!とCSS Niteに参加したことが、今の自分を作ったきっかけになったと言います。sato

最初は参加者だった佐藤さんが、CSS Nite in SENDAIの主催者側に周り、積極的にイベントを開催し、交流の場を広げていったそう。それもご自身が感じていた葛藤や課題を解決するために取った行動の1つなのです。

また、メキメキを立ち上げたターニングポイントの1つとして3.11を挙げました。とくに1人でできることの限界を感じ、複数人で行うことの可能性を求め、2012年に3人で立ち上げ、2016年となった今年には新人も採用したとのこと。この点について、「新人を採用することは1つのチャレンジですが、これもまた自分の葛藤だったことを解決することの1つでもあります」と、その想いを述べました。

こうしてご自身の経歴を振り返り、最後に、仙台だけでの人的交流には限界があること、またそもそもとしての人材不足を痛感しているのが現状で、とくに「仙台で限って言えば“スター不足”が大きな問題である」と、問題提起をし、仙台に今いる若手や新しい人材のさらなる活躍に期待し、トークを締め括りました。

 

しあわせに、くらしたい。―地方都市における技術者文化に関する一考察および提案 / 澤田 周

続いて登場したのは、一般社団法人LOCAL代表理事を務め、この4月に設立した株式会社インフィニットループ仙台支社の代表でもある澤田周さん。

冒頭から「やばい、自分が話すことの8割同じことを佐藤さんに話されてしまった(苦笑)
」と、トーク内容が被るというハプニングからスタートしました。

同じとは表現していたものの、元々札幌で活動していた澤田さんが仙台に来た背景、また、北海道という日本の中でもサイズ的にも立地的にも特殊な場所でコミュニティを立ち上げ運営してきた経験を元に、「地方で“幸せに”暮らすには」というテーマでお話いただきました。sawada

澤田さんご自身が北海道、そして現在は仙台で暮らす中、共通して感じる「地方都市」のメリットとして「食べ物がおいしい」「家が広い」「遊ぶところがたくさんある」「家族両親がいる」「東京より幸せに暮らせる(という価値観もある)」を挙げ、一方で、「支店経済」であることや「面白味のある仕事が地場から発生しづらい」「IT系イベントが少ない」などのデメリットについても取り上げました。

その上で、なぜLOCALという社団法人を立ち上げたのか、そこについては同団体の合意点である「地元が大好き」「地元で技術者が幸せに暮らせる環境を作りたい」「面白いことをやりたい」「学生さんにもできれば残ってもらいたい」という理念を紹介しながら説明してくださいました。

MCの立場で聞いている中で、僕が感じたのは、結局楽しいの定義は自分自身の中にあるということ。その上で、“より”楽しむために周りがサポートする、LOCALは北海道という土地の団体でそれを実現するための団体として“必然的に”生まれた団体のように思いました。押し付けではなく、選択肢を増やすこと。澤田さんが目指しているコミュニティ像はそのあたりにあるんじゃないかと想像します。

トークの最後には、冒頭でも引用されていた澤田さんの大学時代の恩師の言葉「澤田よぉ。楽しいってのはよぉ、楽ってことじゃねえんだよ」を改めて引用することで、楽しさが持つさまざまな意味、そして、それを掴むためには当事者意識が大事であることを伝えてくれたように感じました。

 

仙台から世界に発信 -グレープシティを探る- / 福地 雅之

第二部は、仙台から世界を舞台に活躍する大手ITソフトウェアベンダ、グレープシティ株式会社にて第2ツール開発事業部に所属し、現在は同社のモバイルアプリ用コンポーネントツール「Xuni」のプロダクトマネージャとして活躍するエンジニアです。

最初のお2人とは異なり、企業に属するいわゆる“サラリーマン”の立場として長年経験してきたこと、そして、前職を含めずっと東北・仙台で働いてきた立場からの話が進みました。fukuchi

まず、グレープシティという会社について。元々は文化オリエントという名前で、Microsoft関連のツールを扱い、その後、Javaなどのオープン技術、そして現在は、クライアントコンピュータ以外のスマートデバイスやクラウド環境まで、非常に多種多様なプラットフォームに対応した製品を扱っています。この変化については福地さん自身、よく質問されるとのこと。

それについては「たしかに扱う製品の幅は広がったかもしれませんが、軸は同じです」と、福地さんは力強くコメントしました。というのも、グレープシティで扱っているのはすべてエンジニアの「開発支援ツール」だからです。つまり、企業としての軸は変わらず、周辺環境が変化していることが現状(の製品体系)になっているというわけです。

そして、福地さん自身、もう何度も耳にしている「なぜ?仙台に本社があるのですか?」という質問について。これについは冒頭では、地方特有のメリットを紹介しながら、最後に福地さんが関わっている「Xuni」の開発体制をもとに説明しました。

Xuniは現在、日本を中心に、アメリカ、中国、ロシア、インド、ミャンマー、ウルグアイの計7ヵ国で開発が進んでいるとのこと。ここまで多様な国・地域での開発を行うと、さまざまな問題があるそうで、たとえば、時差だったり、国ごとの生活風習や政治・宗教的背景だったり。

とは言え、コミュニケーションについては「英語」を軸とし、あとはプロダクト自体がコミュニケーションツールにもなるそうで、福地さんいわく「結局、自分たちができるのはベストなものを提供すること。だから会社がどこにあるかはあまり関係なく、与えられた環境の中で活動するだけで、それこそ、なぜ本社が仙台にあるのか?というのも無駄な質問なんです」と、ある意味悟りの境地のような、それでいて含蓄のあるメッセージでプレゼンテーションを締め括りました。

 

未経験ビジネスに踏み込んでいくレバレッジの利かせ方 / 小泉 勝志郎

個別プレゼンのトリを務めたのは、株式会社テセラクト代表取締役の小泉 勝志郎さん。さまざまな事業や企画に取り組む小泉さんは「仕事何してるんですか?」より「仕事してるんですか?」と聞かれるぐらい多様なスキルをお持ちです。ご自身は「永遠の18歳」として、業務であるかないかにかかわらず、ITを軸にさまざまなことに取り組むことをポリシーとされています。

そんな小泉さんがテーマに上げたのは「レバレッジの利かせ方」。

いきなり小泉さんが関わっている萌えキャラ「渚の養成 ぎばさちゃん」の紹介からスタート。ちなみに現在萌えキャラグランプリ2016にエントリ中とのことで、まず参加者への投票のお願いからプレゼンがスタートしました。koizumi

続いて、1人目の佐藤さんの話にも通ずる横のつながりの話題として、小泉さんが中心の1人となって動いている東北デベロッパーズコミュニティの紹介があり、そこで法林さんと出会ったことも話されました。ちなみに僕は2012年に開催した察知人間コンテストというARアプリ開発イベントが小泉さんとの出会いの場でした。

このように、ITやプログラミングに関わるイベントが人と人との出会いのきっかけとなったほか、3.11で被災した宮城県松島湾にある浦戸諸島の再生プロジェクト「うらと海の子再生プロジェクト」で、日本でのクラウドファンディングの概念が一般化する前から、ネットを使った支援プラットフォームを開発するなど、ITが持つチカラをつながりに変え、そこから東北ファンの獲得、復興を目的とした集まりを大きくできたとのこと。

さらに最初に紹介したぎばさちゃんもこの復興というアプローチから生まれたもの。というのも、ぎばさというのは海藻である「アカモク」の別称。アカモクも震災の影響で減少したものを、コスプレや萌えキャラを使うことで宣伝し、支援につなげているそうです。
こうして、IT→コミュニティ→復興→地域というように、ITからスタートしてさまざまな領域へ展開が広がっているのです。その他にも、GIFアニメ作成アプリFlip Animeがきっかけで漫画家デビューをしたり、最近では大学で教鞭を取るなど、一エンジニアの枠では収まらない活動をされるようになりました。

これこそが今回小泉さんが発表のテーマにもした「未経験ビジネスに踏み込んでいくレバレッジの利かせ方」の実践です。

最後に小泉さんは、(おもにプロレスファンの法林さん向けw)の締め括りとして「総合格闘技ではなく異種格闘技を目指しましょう」と会場とネット越しの聴講者へアドバイスを伝え、プレゼンの幕を閉じました。

(資料は準備でき次第公開いたします)

 

フリートーク:地方都市とITとコミュニティ

フリートークの中心は、4名のトークでさまざまな角度から取り上げられた「地方都市」と「コミュニティ」、そして、それをつなぐITについて。

今回改めて感じたのは、ITが持つの可能性は無限に大きい一方で、たとえば佐藤さんが言っていた「横のつながりのさらなる拡張」であったり、また、Twitterからの質問に上がった「ITコミュニティ(勉強会)の知名度の低さ」といった問題点はまだまだ顕在化しているということ。

27

さまざまな見解があるとは思いますが、こうした問題解決には各自が取り組む以外に解決策はなく、こうしたイベントをはじめ、1つのきっかけをどのように広げられるかが大事ということもわかりました。ですから、福地さんがおっしゃったように「どこが大事かではなく、(エンジニアとして)大事なのはベストなものを提供すること」だったり、小泉さんが実践しているように、ITを含め自分が得たスキルを未知の領域で適用させていく意識と行動というのは、地方に限らず、日本・世界で働く上で非常に重要だと感じます。

また、澤田さんがLOCALの理念にもしている、新しいことをやりたい人を応援する環境というのは、IT/ネットコミュニティの特長の1つでもあります。ぜひその状況を、周囲はもちろん、次の世代にもつなげていくことが、さらなる業界の活性化につながるのではないでしょうか。

今回、東北初となる仙台で開催し、地方という観点を皮切りに、今、IT/ネット業界で浮き彫りになってきた課題の解決策が見えたように思いました。改まして、4名のスピーカー、そして、参加してくださった皆さまありがとうございました。

今回のまとめ→TechLION vol.27 #techlion

all

 

次回TechLION vol.28は12月7日!

最後に。次回TechLION vol.28の開催は2016年12月7日、ホームグラウンドの六本木SuperDeluxeです。さくらインターネット株式会社 フェロー、株式会社ABBALab 代表取締役の小笠原治さん、TechFeed、株式会社オープンウェブ・テクノロジーCEO、HTML5 Experts.jp編集長の白石俊平さんほかのゲストとともに「IT/ネットの次に来るもの ~テクノロジー・コミュニティ・ビジネスの視点から」をテーマにお届けします。お楽しみに!

 

vol.27@仙台、ありがとうございました!& 次回予告

TechLION vol.27、ご来場そしてご観覧いただき、誠にありがとうございました!
今回は「みちのくのテクノロジー・エンジニアリング事情の今」をテーマにお送りしました。
 
今回のTogetterのまとめはこちら☆
TechLION vol.27 #techlion
 
次回TechLION vol.28は我らがホーム、六本木SuperDeluxeです。
vol.28は「IT/ネットの次に来るもの ~テクノロジー・コミュニティ・ビジネスの視点から」をテーマにお送りします。
出演は小笠原 治さんほか、現在交渉中です。
 
%e6%ac%a1%e5%9b%9e%e4%ba%88%e5%91%8a
 
年末の慌ただしい中ですが、みなさまのお越しをお待ちしております!
 
追加情報は適時更新いたしますので、
引き続き当ウエブサイトのチェックをお願いいたします!
TechLION vol.28
 

【新しさは歴史の中に】‐TechLIONvol.26報告‐

こんにちは、レポート担当の田中です!

さて、6月28日(火)にTechLION vol.26が開催されました。

今回は「テクノロジー温故知新」がテーマとなっただけあって、トレンドも少し交えながらも日本のIT界に関する歴史に重点が置かれた会になりました。

心なしか、出演された方々、そして来場された方々の平均年齢も少し高めの会場の様子。

DSC07818_original
会場の様子(撮影:ともちゃ)

 

それでは早速、当日の模様をお届けします。

———————————————————-

【jcode.plの作者があの時の“日本の”インターネット技術を振り返る】歌代和正

最初の登壇者は、JPCERT/CCの代表理事を務められていて、ウィキペディアではなんと『翻訳家』として紹介されている歌代和正さん。最近は、トライアスロンやウインドサーフィンなどアクティブに活動されているご様子。

新卒で入られたSRA時代から、NFSやjcode.pl開発、TechLION vol.10にお越し頂いた村井純先生のお名前も挙がった「WIDEプロジェクト」やIIJでのインターネット関連の活動など様々な経歴をお持ちで、今回のセッションも日本のインターネット黎明期を担ってこられた方にしか話せない、興味深いお話しがどんどん飛び出しました。

DSC_2318_original
歌代和正さん(撮影:ともちゃ)

 

その中でも印象的だったのが、 1994年以降のIIJ所属時代にファイアウォールサービスを売り出す際の 「言っちゃったから、作らなきゃだめだね」という言葉。

当時、ユーザーに対して「あくまでインターネットに接続するのは自己責任」とは言っても難しい状況があったそう。(今でもなかなか難しいことですよね…!)インターネット接続を商品として提供していくにあたって、それ以上の付加価値をつけたり、サービスを提供していく側の責任をどうするか、ということからファイアウォールサービスに繋がるという経緯があったそうです。

 

「できない」が前提にある状況で、いかに「できる」ように変えていくか

というお考えのもと、jcode.plの開発など目の前にある不自由な状況を便利な方向に変えてこられたのですね。

また、このような知見をお持ちであることが、

「jcode.plは日本語に関するものだが、日本人しか使えないようにするのではなく、どんな環境でも動くようにすることで利用者に広がりが生まれ、次の何かにつながるかもしれない。」

という将来への考えに繋がっているのでしょう。

———————————————-

【NetBSD, on the Road】蛯原純

続いての登場は「えびじゅん」こと蛯原純さん。

NetBSD関連の仕事を長く続けられていて、オープンソースカンファレンスについても最多出場グループ記録をお持ちの蛯原さんに「NetBSD, on the Road」というテーマで、ハードウェアとOSにまつわる濃い話を語っていただきました。

DSC_2354_original
蛯原純さん(撮影:ともちゃ)

NetBSDでのサポートの面白さを、CPUやワークステーションを作った人の意図「なぜこのように設計したのか」を解き明かしていくところにあると仰います。

集めたハードウェアをNetBSDでサポートする過程において、動かないものをUnixの枠組みの中で試行錯誤し、ハードウェア情報を採集して動かしていくことが必要ですが、それができるとパズルが解けたような感覚が味わえるとのこと。

また、オープンソースカンファレンスで見つけたものをNetBSDのパッケージソースに追加すれば世界中に紹介、再配分することができるという新たな気づきがあったとのことです。一つあれば今まで作られた全てのソフト/ハードウェアを好きなように動かせるようなOSの作成、という目標も夢ではないように感じられます。

テクノロジーという共通言語を用いて世界中のプログラマーが未来を作っていくその内側を覗けたように感じる、情熱に溢れた内容でした。

 

蛯原さんのスライドシェアはこちらから!

http://www.slideshare.net/junebihara18/netbsd-on-the-road-2016

———————————————

【いる? いらない?──tech系メディアの未来を考える】 風穴江

最後に登壇したのはテックジャーナリストで、コラムニストの風穴江さん。

月刊アスキー編集部、フリーランスを経て現在はtech@サイボウズ式編集部でテクメディアを扱われている風穴さんにテクノロジーとメディアの関係についてこれまで辿ってきた歴史も踏まえて語って頂きました。

DSC_2362_original
風穴江さん(撮影:ともちゃ)

情報への読者の要望に対し、テクメディアは雑誌やメールマガジン、ブログ、SNSとウェブの進化に伴い多様な媒体を用いて応えてきました。他のメディアとの相違点は作り手と読者とのつながり方、コミュニケーションのとりかたにあるのだといいます。新聞を始めとした各種メディアは権力と市民の間にある対立構造に対抗する手段として誕生した背景があり、現状もその構造は変わらず作り手側もどこか固さが残っているそう。

対してテクメディアは上記のような対立構造とは異なり、テクノロジーという“好きなモノ”で書き手、作り手と読み手が繋がっているコミュニティーの中から生み出される。「共感者を作り、一緒に考える」という構造にあるようです。

時代に合わせてメディアの形が変容してきたという歴史から見ると、セミナーや勉強会といったリアルで繋がる機会の普及や、電子書籍の躍進も現状に合った新しいメディアの形態であると考えられるでしょう。まだ見ぬ新しいメディアが登場した際にテクノロジーはどう関わっていくのか、考えていくとワクワクしますね。

 

———————————————

最後に白熱したパネルディスカッションが行われ、あっという間に時間が過ぎていきました。

DSC07925_original
パネルディスカッション(撮影:ともちゃ)

 

ご来場された方々からは、下記の様な沢山のお声を頂戴することが出来ました。

 

「楽しい話、なつかしい話だけでなくて、今これから何を考えて何をしようかと前向きになれる、良い言葉を多く聞けて、自分にとって本当によい時間を過ごせました。」

「えびじゅん無双は誰も止められなかった。異質な昔話とこれからの話し、よかったです。人選がすばらしいです!」

「歴史を刻んできた方のお話しは懐かしく、また、今になって振り返ると意義を再認識できるところもありました。」

「古い情報は必要かどうかというテーマがとても興味深かったです。楽しかったです。」

 

中には「日本にこのイベントがあることを幸せに思っています。」という嬉しいお声もあり、スタッフとして非常に嬉しい限りです。TechLIONもまさに「作る」「書く」「読む」人が同じ地平にいる、テクメディアの一形態としてまだまだ進化を続けていきます!ありがとうございました!

p.s.今回は終了後に参加者全員で集合写真を撮るという初の試みも。皆さん良い笑顔ですヾ(=^▽^=)ノ

27357021624_cfe5059fb0_z
参加者の集合写真(撮影:小山哲志さん)

 

vol.26ありがとうございました&次回は仙台!

TechLION vol.26、ご来場そしてご観覧いただき、誠にありがとうございました!
今回は「テクノロジー温故知新」をテーマにお送りしました。

今回のTogetterのまとめはこちら☆
TechLION vol.26 #techlion

次回TechLION vol.27は初の仙台開催です!
東北のみなさまとお会いできるのをスタッフ一同、心待ちにしております☆

追加情報は適時更新いたしますので、
引き続き当ウエブサイトのチェックをお願いいたします!