もっと浮かれてみよう!IT/ネットの未来をすばらしいものにするために~TechLION vol.28報告

TechLIONプロデューサーの馮です。こんにちは。

早いもので2016年もあと2週間あまり。皆さんにとってどんな一年でしたか?

さて、TechLIONの2016年ラストバトルTechLION vol.28、去る12月7日に行われました。今回の開催にあたっては先日のブログでも書いたように、僕自身かなり思い入れのあるテーマ設定、そして、実際に、パネリスト3名、MCの法林GMとともに楽しい話で盛り上がることができました。

それでは当日の模様をお届けします。

2016年最後のTechLIONは「トーク」のみで勝負!
(撮影:小山哲志氏)

三者三様のバックグラウンド、テクノロジー・ビジネス・コミュニティ

今回、白石さん(テクノロジー)、小笠原さん(ビジネス)、田中さん(コミュニティ)というセグメントでお声がけさせていただきました(3名ともすべてのセグメントに精通しているのはもちろんのこと)。

まず最初にテクノロジーに関して、「テクノロジーの変化とユーザ体験」という切り口で白石さんに投げかけたところ、「そもそも今のHTML5でやっていることは、実はFlashでも実現できていたことです。つまり、テクノロジーが進化するというのはユーザが気が付かないうちに浸透することの結果でもあります」と、新しいテクノロジーかつ有用なテクノロジーというものは常にユーザが無意識に使っているという示唆に富んだコメントをいただきました。

また、最近はテクノロジーをコアに人が集まるケースが増え、その1つが勉強会であり、コワーキングスペースを運営する田中さんは「勉強会の目的はあくまで集まった人が勉強することで、運営者の負荷を高めることではありません。とくにテクノロジー系のイベントの場合、運営側に負荷がかかる場合があるのですが、私が運営するCo-Edoでは、主催者にお金の管理させず(負荷をかけず)、ユーザに負荷分散してもらう(参加費を払う)ことで、勉強会の本質を担保しています」と、昨今の勉強会ブームに対し、田中さんが考える「(本来の)勉強会」についておしえていただきました。

この点については、ハードウェアコワーキングスペースDMM.make Akibaを立ち上げ、運営する小笠原さんも同意していました。さらに小笠原さんは「DMM.make Akibaにあるさまざまな機材・工具はちょっとしたメーカのものよりもはるかにレベルの高いものを揃えています。その理由は、モノづくりをする環境を整えるときに、なるべく良いツールを使ったほうがアウトプット(モノ)にもつながるからです。また、秋葉原を選んだ理由は、これまでアキバ(秋葉原)と言えば工作好きの聖地。にもかかわらず、そういったコアな人間が集まれる場所がなかったからここ(アキバ)を選びました」とコメントしました。つまり、コワーキングを始め、コミュニティはその人たちが集まるための理由とともに、集まる場所にも大きな意味があるというわけです。このあたりは今後の技術系コミュニティにとって大変参考になる内容ではないかと思います。

もう1点、コミュニティあるいはイベントと言った観点で、日本の場合、無料での参加ができるものが多いのではという問いに対し「これはコミュニティやイベントだけにかかわらず、何か結果を求めるにはお金を使わないと回せないはず。とくに継続性を担保したいのであれば、強い思いとともにお金を回す意識も必要です。事業と同じですね」と、VCの立場でさまざまなスタートアップを観てきた小笠原さんならではのメッセージをいただきました。

もう1つ、そういったコミュニティやイベントを認知させる点に話が変わると、TECHFEEDを運営する白石さんが「とにかくタイトル重要・名前重要」と、イベントやコミュニティに加え、メディア運営者ならではのコメントが上がりました。結局、中身まで理解するには、まずタイトル(見た目)が大事ということです。

この点は「たとえば、今ならDeep Learningや人工知能のようにバズワードを入れるとイベント参加者の数が上がる」(田中さん)と同様の意見が上がりました。

一方で、「マイナーだったり、すぐに理解しづらいタイトルや名前は、認知された場合の価値はすごい高い」(小笠原さん)と、何かわからないものが定着したときのブランドとしての強さにも言及しました。僕たちのTechLIONも「よくわからないけど強そうだし(笑)。何より多くのエンジニアにここまでリーチできているがすごいですね」と、ご評価いただきました。

キーワードで読み解くIT/ネットの次に来るもの

第一部だけでもそのまま続きそうな中、第二部ではイベントのコンセプトにもなったケヴィン・ケリー著『〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則』の12のキーワードをもとにトークを展開しました。

シェアエコノミー、その先にある価値は?

その中からまず僕が最初に取り上げたのが「SHARING(シェア・共有する)」というキーワード。その理由は昨今のシェアエコノミーブームと実際、また、自分自身が関わる電子出版とも紐付けながら、皆さんの意見が聞きたかったからです。

まず、白石さんが開口一番「シェアは減らない。発信する側にとっては相対的価値が上がるのみ」と、昨今のシェアエコノミーに対し懸念される損得に対し、情報のシェアが持つ意味とそこから生まれる価値、インプットとアウトプットを例に説明しました。つまり、シェアとはみんなに何かを共有することであり、価値の提供をすること。逆の見方をすれば価値を提供できる価値を持っているという強みになり、それが結果として、相対的に価値を上げていくことにつながるというわけです。

また、田中さんから「セミナーと勉強会を例に言うと、セミナーはStudying/Learning/Teaching、勉強会はSharingと区別して考えています。つまり、座学なのかハンズオン(あるいは参加型)なのかとうことです。そして、いずれも回し続けた結果がコミュニティになります」と、まず、コワーキング運営の立場から見た、セミナーと勉強会について話されました。その上で「回し続けるという観点では、セミナーのような一方向だと限界に陥りやすいです。やはり、勉強会のように、(主催者・参加者という区別ではなく)全員が当事者で共有するという気持ちが生まれる場が、結果として継続しやすいように思います」と述べました。

小笠原さんはビジネスの観点からシェアについてお話されました。まず、最近ようやく導入が始まってきたスマートロックについて。これは、鍵をシェアするプロダクトであるわけですが、「スマートロックの価値は単に鍵を持ち運ぶ手間が減ることだけではありません。これもまた1つのシェアエコノミーなんです。スマートロックのID/Passを、場所や時間でシェアすることでさまざまな価値を作れます。たとえば、物流と合わせて使うことで再配達という無駄を減らせます。他にも民泊でも使えますね。つまり、シェアをすることで無駄を減らし合理化され、結果として、新たなビジネスが生まれ育つわけです。シェア・シェアエコノミーの本来の価値はそこに持っていくべきですね」と、ただシェア(共有)することで直接的な利益を得るだけではなく、その次につなげていける点こそが、シェアが持つ本当の価値ではないかと提示しました。一方で「とは言え、まだまだ物質的な価値だったり所有欲というのはなくなりません。おそらく東京と他の地域の差は皆さんが考えている以上のものでしょう」(小笠原さん)と、人の価値観は1つではないという点にも触れました。

ここでMCから「今までのシェアに対しては性善説が前提で成立するものがほとんどです。たとえば、それを悪意のある形で利用した場合、昨今のキュレーションメディアのような問題も出てくるのでは?」と質問を投げかけると「インターネットの成り立ち自体が性善説であり、ことネットの体験はまず性善説で考えたほうが良い」と、スタートに関しての性善説の重要性を小笠原さんは述べました。同じく白石さんも、「ネットサービスはもちろん、コミュニティも性善説ではじめないと成り立たないですね。ルールばかり作っていくと閉塞感しか残らない。改めて自生的秩序について考える時期なのかもしれません」と、ハイエクの言葉を引用しながら、同様に性善説の重要性に触れました。

新しい環境下におけるルールとは?

「ルールといえば、私は新しいことを始める際、まず、作ったものからルールを2つ削ることからはじめます」と、小笠原さんから非常にユニークなコメントもいただきました。
「コミュニティに関してはノイジーマイノリティが強くなりがち。(ルールに対して原理主義だったり)ネガティブなコメントをする人のほうが声が大きくなります。そこをどうつくっていくかもコミュニティにとって大切なポイントでしょう」と、コワーキングスペースから観たコミュニティへの印象と押さえどころを田中さんが教えてくれました。

さらに「何かをする場合、ポジティブアプローチとギャップアプローチを考えると、良いものを良くするポジティブアプローチは、価値が高く良いものが生まれやすいが、時間がかかります。一方、ギャップアプローチは悪いものを良くするので、課題解決に近づきやすいです。なので、ギャップアプローチが増えますが、自分の中で何がいいかとか、正解はわからないわけですから、ポジティブアプローチ(こうありたい)をつねに持っていることは、私は大切だと思います」と、多くの事業立ち上げ・投資の観点から成功につなげるヒントを小笠原さんがコメントされました。

「今の話の期待値という点で、ネットコミュニケーションの鍵もまさに期待値コントロールですね。コミュニティを円滑にする際、参加者の期待値をきちんとコントロールできるかどうかも、運営する立場には求められるように思います」と、HTML5Jなど、多くの参加者を抱えるコミュニティ経験から、白石さんも期待値の大切さを紹介しました。

2030年に向けて、2017年という1年は?

あっという間に時間が過ぎ、最後の第三部へと移ります。ここは会場からの質問を受け、パネリストに回答してもらうスタイルで進行しました。今回はその中から「みなさまの来てほしい遠い未来(2030年くらいとしましょうか)と、そこに向けての来年一年はどうなるか」という質問とその回答を紹介します。

これについて、僕は「未来を考えるとき、そのタイミングと同じ時間の過去を振り返る」アプローチを取ることがあります。たとえば、2030年であれば今から14年後、つまり、14年前の2002年と今を比較するわけです。そうすると、FacebookやTwitterなどのソーシャルネットはもちろん、(今のような)スマートフォンがまったくない世界、一方で、携帯電話(ガラケー)全盛の時代だったのが、2016年こうなっているのです。

この事実に基づく経験比較を投げかけたところ、「たとえば10年前にコワーキングをこのように運営するなんてまったく考えていなかった」(田中さん)というコメントや、「はやく世界に対して日本がプラットフォーム植民地から脱却したい」(小笠原さん)など、まったく想像できない世界、一方で、現状での問題点からの脱却など、未来に対しては非常に振り幅のある回答が出てきました。

その中で近い将来という点で、「AIなどの普及から、来年あたりはテクノロジーに対して倫理の壁をどうするかを本格的に議論する年になるのでは」(小笠原さん)や「人の倫理とテクノロジーのざらつきをどう扱うか」(白石さん)など、単に便利なだけではなく、人が使うテクノロジーを、きちんと人間が考えていく、その始まりとなる年になると予想しました。

そして最後に小笠原さんから「2030年はちょっと先ですが、その10年前の2020年、日本は東京オリンピックという非常に重要で、大事な出来事を抱えています。さまざまな問題はありますが、ここは視点を変えて、うまく利用してとにかく“浮かれる”、その気持ちを持って、モノづくり、サービスづくり、仕事など、未来につなげていくのが良いと考えます」と、未来に向けて、“浮かれる”ことの大切さを持って、フリートークを締めくくってもらいました。

2017年のTechLION、新たなるフィールドへ

今回、イベント終了後に改めてこの回を設定して良かったと感じました。とくに最後の「浮かれる」というキーワード、これは、ネット/ITの世界で上手に使うことが大事になっていくように思います。TechLIONも良い意味で浮かれていきます。

ということで。次回、2017年のTechLION vol.29は2月22日、ゲストに現在は株式会社一休CTOを務める伊藤直也氏をお迎えして開催します。

さらに5年間ホームグラウンドとしてお世話になった六本木SuperDeluxeさんから、新たな戦場として、ちょうどvol.28の開催日である12月7日から新規オープンした渋谷の東京カルチャーカルチャーさんにて開催。

渋谷に移転した東京カルチャーカルチャー。次はここ!
(写真は内覧会時撮影のもの)

どんなTechLIONになるのか?どのぐらい浮かれるのか?皆さま、お楽しみに。

開催概要

 

最後に。少し早いですが、今年も多くの方々に大変お世話になりました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

良いお年を。