vol.17報告(1/3)―イベントの一般化は我々が15年くらいかけて獲得してきたこと

TechLION取材班のまつうらです。今週そして来週のブログは、6/26に開催したTechLION vol.17のレポートをお届けします。

歩くOSSコミュニティ・イベントの生き字引(?)
「歩くOSSコミュニティ・イベントの生き字引」とまで言わしめるほどのイベント通

さて、今回vol.17のテーマは言語イベント。この夏から秋にかけて、プログラミング言語に特化した大規模イベントが次々開催されていきますが、今回はそれらイベントの実行委員長を迎え、さらにLLイベントの中心人物、我らが法林GMまで加わってトークバトルを繰り広げるという、めったに無い対戦カードが組まれていたのです。

法林GMが一人の選手として参加するため、レフェリー(=MC)役が一人少なくなってしまいます。それを支えるべく(?)迎えたもう一人のゲストが、馮Pに「歩くOSSコミュニティ・イベントの生き字引」と言わしめ、TechLIONにも何度も観戦しに来てくださっている小山哲志さん。

今週はまず、小山さんを迎えての第一部の模様(注1)をご覧ください。

(注1)当日の全セッションの模様の録画(第一部第二部#1第二部#2エンディング)を公開しています。(撮影協力:日本仮想化技術様)

■第一部 獅子王たちの夕べ(小山哲志さん)

小山哲志さんというわけで本日のメインゲストは、@koyhogeこと小山哲志さんです。メインゲストといっても、本日の第二部後半ではMC側にまわるという展開が待っているので少し不思議な感じですが……。

小山さんは現在フリーで活動しているプログラマー。ライターとしても活動していて、Webサイトなど様々なところにも関わっているそうです。あと、しょっちゅうアニメを見ながら前職の会社が展開しているアニメチェックサービスで作品登録に携わっているとか。(うらやましい)

さて、トークのタイトルは「LLとイベントとコミュニティと」(→当日のスライド)。数多くのIT系イベントに参加したり運営も手掛けたりと、IT系イベントに精通している立場から、イベントの舞台裏や運営ノウハウについて語ってもらいました。

ITコミュニティの歴史

小山さんが話していたITコミュニティの歴史を、ごくごく掻い摘んでお伝えするとこんなかんじです。

1961年、アメリカでDECUSが誕生。DEC社製コンピューターユーザーの集まりで、これが恐らくIT系コミュニティの発祥ではないかと。日本にもその流れを汲む組織があったようですが現存しません。日本ではその後’83年に日本UNIXユーザ会や、’88年に日本サン・ユーザ・グループが設立されましたが、80年代のこの頃、パソコン通信のBBS上のコミュニティが次々に誕生して、これが日本のITコミュニティのはしりだったんだろうと思います。

’98年、’99年、2000年前後くらいになると、オープンソース系のユーザーグループがカンブリア爆発的に増えてきました。LUG(Linuxユーザーグループ)とかBUG(BSDユーザーグループ)とか。そしてLL系のイベントもこのころから開催されるようになって、恐らくPHPカンファレンスが最古で2000年からやってます。あと、YARPC19101(RubyとPerlのイベント)とか。2003年からはLLイベントも始まって、LLという言葉がいつの間にか定着していきましたね。

ところでLLって?
LL(Lightweigt Langages)という言葉は英語圏では定着しなかったけど本当は外来語

ちなみに、今では国際的には通じない言葉ですがLL(Lightweight Languages)という言葉はもともと外来語です。アメリカMITで2001年に開かれたワークショップでこの言葉が出てきたんですが、むこうでは定着しませんでした。LLを和製英語だと言っているのは、Languageの後ろに“s”を付けないヤツを言ってます、もともとは。

イベント運営者に降りかかる様々な課題

歴史をおさらいした後は、イベントをやるうえで主催者にふりかかる様々な課題についての話でした。どれも言われてみれば考えないわけにはいかない話ばかりです。でも、これら全部を考慮しなければならないって相当大変なことだと思います。

1. イベント運営体制をどうするか:
大組織でしっかりやるか、小規模でできることだけやるか。スポンサーを募るか否か。シングルトラックかマルチトラックか。発表者を募るか否か。カンファレンス路線にして堅くするか、お祭り路線にするか……

2. チケット販売はどうするか:
2008年にATNDというイベント予約サービスが登場して、これが革命的だったんですが、現金当日払いは人数多いと大変だし、当日ドタキャンされると痛いですね。
LLイベントの2回目で、チケットぴあに頼んだのがこの業界でたぶん初めて。有料イベントに対応したATNDの類似サービスも増えて来たものの、根本解決はまだまだ難しいです。

3. イベント会場どうするか:
ホールにも有料、無料があります。ホール自体が高くても、参加者数が500、600くらいになってくると実はそんなに高くないということも……。
自治体系は結構大きくて安いけど、予約が1年以上前とか多いので計画的な運営が必要です。やりたくなくても、もう箱が決まってるからやらざるを得ないなんてことも……。あと大学のホールを借りるという手もありますけど、先生とのコネが最重要。最近は、IT系の企業が貸してくれる流れにもなっていて、ありがたいですね。

開催日かぶり問題
これだけイベントが増えてきたら、どうしても重なっちゃいますよね

4. 開催日かぶり問題:
こんだけイベントがあれば当然かぶります。かぶらないようにしたかったら、早めに日程を公開するしかないですけど、それでもぶつかるときはぶつかっちゃいます。
ハシゴをする一部強者を除けば、かぶるとお互いに集客減るし、メディアは取材に行けなくなるし……。ITイベントカレンダーを見てお互いうまいこと調整しましょ。

5. 会場インフラ問題:
この手のイベントだと電源とWi-Fiは潤沢に確保したいとこだけど、これがまた難しいです。会場側がWi-Fiを用意していることもありますが、何百人もが同時に使うことなど想定されてないからそりゃ破綻しちゃいます。
ただ大規模Wi-Fiノウハウは、頑張って身内でノウハウをためてきてはいますね。

6. 集客プロモーション:
公式Webページやブログ、それに最近は当然のように公式Twitter、Facebookアカウントがあったり……。それにメディアとタイアップするという手もありますし、あとは招待した大物スピーカーがポロッてつぶやいてくれてそれが宣伝になることもあります。

7. 物販、書籍問題:
まず会場によって可否がありますが、オライリーさんは呼ぶとガチャガチャとかいろいろやってくれますね。あとは、RubyKaigiが開発した手法として書店(ジュンク堂)さんを呼んでしまうというのもあります。おかげで、RubyKaigiがあった週はジュンク堂のIT書売り上げランキングがおかしなことに……。

8. ネット配信:
昔はリアルネットワークスのライセンスをかき集めて100配信するといった涙ぐましいノウハウがありましたけど、UstreamYouTubeニコ生といったサービスが全てを変えてしまいました。大規模配信がお金を掛けずにできるようになってしまったという……。
ちなみに、生中継したり、さらに録画まで配信すると来場者が減るんじゃないかとまだまだ言われますけど、実際は配信して来場者が減るっていうのは無いと思うんです。どうでしょう?

9. コミュニティの法人化:
コミュニティは規模がでかくなるとお金の問題がどうしても絡むようになります。例えば収入や支出を誰がどう管理するのか。それから、交渉事(会場を借りるなど)で個人だと相手にしてもらえないこともあります。こういう問題に対応するため、コミュニティの法人化を検討しなければならないことがあります。
PostgreSQLのJPUGは2006年にNPO法人になりましたけど、同じ年に公益法人制度改革法案が成立して一般社団法人を作るのがだいぶ簡単になったんです。

イベントが一般化してきている

イベント一つ開催するにもこのようにたくさんの課題があります。しかしカレンダーを見ればわかるように、イベントはどんどん増えています。これについて小山さんはトークの終盤でこう言いました。

要はイベントの壁が低くなったということです。10人くらいの勉強会だったら、それこそ10分くらいでいろいろ決められますし、動画やスライドを残すことも簡単にできますし、実際残すと「あれがよかった」ってクチコミがすごく広がるじゃないですか。
これはすごい世界ですよ。80年代、90年代はこうやってマイクを持ってお客さんの前でしゃべることはけっこう特別なことだったんですけど、ITのおかげ。我々が15年くらいかけて獲得してきたことなんです。

最後の一言には重みを感じますね。ブログサービス、SNS等のコミュニケーションメディア、チケット予約サービス、スライドや動画を公開するサービス、……等々、今では当たり前に使えるこういったサービスですが、これらが無かった時代の主催者達は、どんな手段で、どんな苦労をしながらイベントを開催していたのか……、なかなか想像するのが難しいです。

私も、イベント会場で帰り際にゴミを見つけたら拾うなどして、イベント運営者の見えざる努力に少しでも報いられればと思います。ありがとうございました。第二部もよろしくおねがいします!

次回レポートに続きます。

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