TechLIONvol.7報告―名古屋へ遠征!名古屋人の「なごやこわい」行動力に圧倒されてきた!

こんにちは。USP MAGAZINE編集長のまつうらです。

これまで一度だけ大阪に出張したことのあるTechLIONですが、今回再び遠征です。場所は名古屋……。これまた大阪とは違う意味でスゴいのです。出演者は勿論、参加者も皆アクティブ。これが「なごやこわい」ってヤツなんでしょうか?では、5/14(月)開催のVol.7レポートをお届けします。

会場の名古屋GeekBarは満員御礼

所狭しと集まったGeek達、おかげで満員だ(来場ありがとー!)
満員だ(来場ありがとー!)
名古屋のGeek達の隠れ家「名古屋GeekBar」
名古屋GeekBar

今回おじゃましたのは名古屋の繁華街、栄(新栄)にある名古屋Geek Barさん。普段はピアノバーとして開いているお店なのですが、月曜日だけ名古屋ギーク達の隠れ家に変身するのです。今日は、エイチームの有志の皆さんはじめ、こちらを根城にしている地元ギークの方々の手引きでやってきました。(ありがとうございました)

開場前から今か今かとオープンを待つ参加者の皆さんが詰めかけ、開場の7時になるとあっと言う間に満席に……。その勢いに、始まる前から驚かされました。美味しい料理も酒もスタンバイしてTechLION Vol.7スタート!

ある意味予想通りな濃いゲスト様方

司会はこの二人(ゼネラルマネージャー法林&プロデューサー馮)
法林GM&馮P

さーて始まりましたTechLION Vol.7。司会は法林&馮コンビです。この度それぞれ、ゼネラルマネージャー(GM)とプロデューサーに就任したらしいですが、いつもの二人ですね。

さて今日はどんなトークが飛び出すことやら……。と、その前に。今日は名古屋側スタッフとしても尽力してくださったエイチームさんから来場者に萌えサプリのスペシャルプレゼントが。これで栄養補給して今夜も乗り切れ!というわけですね。ありがとうございます。

ステージには一人目のゲストを向かえ、まずは「かんぱーい!」 グイっと飲んで、さぁトークの始まりです。

Aチームさん差し入れ「萌えサプリ」(ありがとー!)
萌えサプリ
みなさん、かんぱーい!
かんぱーい!

#1 矢島卓さん―ケータイエンジニアよ、取り残されるな!

矢島卓さん(きんちゃんって呼んでください)まずは矢島卓@エイチームさん。自己紹介を始めるなり「きんちゃんと呼んでください。はい、せーの」と。いきなり飛ばしてました。題目は「【ザックリわかる】モバイルコンテンツ開発の過去未来」です。動画はコチラ(12:32~)と、コチラコチラです。

その名の通りガラケー(フィーチャーフォン)からスマホに至るまでの携帯端末の歴史や仕様をおさらいしていきます。昔の携帯端末はHTML,CSS,画像フォーマットへの対応が貧弱だったり、Cookieは使えなかったりでそれはもう大変でしたが、一方で、ユーザーレベルでは偽ることのできない端末固有IDを通信会社が送信してきたので、ログイン管理という点では優れていました。

キーワードは「モバイルファースト」
「モバイルファースト」
ケータイエンジニアよ、取り残されるな!
取り残されるな!

ところが、スマートフォンが普及して状況は180度変化。PCブラウザ並の能力を身につけ、HTML,CSS,Cookieへのきちんとした対応は当たり前(HTML5,CSS3はドラフトだけど)になった一方、端末の自由度があがった為に端末認証は偽装が容易になって使えなくなってきました。

そんなモバイルコンテンツの開発でここ数年重要になってきているキーワードは「モバイルファースト」。余分な情報を削ぎ落として本当に必要なものは何かを捉え、まず携帯端末向けの構成を考えてから、それに肉付けする形でPC版の構成を考えていくというやり方です。

「ケータイエンジニアよ、取り残されるな」 ― きんちゃんこと矢島さんはそう訴えてましたが、取り巻く環境が激変しているケータイ業界においてはホントその通りですね。

#2 山本一道さん―デザイン・システム分離で、みな幸せに

山本一道さん続いては山本一道@アップルップルさん。題目は「CMSを作って10年のappleple」です。動画はコチラ(10:13~)

山本さんはWCAN(だぶきゃん)を運営するなど、Webデザイナー/エンジニア業界で活躍なさっています。もう軽く10年以上も携わっているそうで、これまで、a-news、a-column、絵日記.jp、a-blog等様々なサービスをリリースして戦ってきたそうです。これらのサービス、ブレイクする前の芸人さんとかももクロとか、安倍元総理の奥様とか、津田大介氏とか、結構いろいろな方に愛用されていたんですね。(その度、会場からお~!の声が)

しかしいくつかのサービスでは失敗を経験し、様々なことを学んだそうです。例えば、ブログに今でこそ当たり前のコメント機能を実装していなかったとか、マネタイズを考えた設計になっていなかったりといったことですが、それら失敗談は聞いててとても参考になります。

エンジニアが最終工程に来ないテンプレ
皆で幸せに
絵日記.jp、若手芸人さん達も愛用していた
絵日記.jp

そして2009年にa-blog cmsをリリース。最大の特徴は「システムとデザインの分離」。Web開発でありがちなのは、クライアントからのリクエストがディレクター、デザイナー、コーダーを経てエンジニアに降りてくるというスタイル。しかし、これだとエンジニアが納期に押し潰されがちになってしまいます。a-blog cmsは前述の分離によって、デザイナーとエンジニアが平行して作業をできるように設計し、デザイナーさんに易しく、エンジニアさんも納期に苦しまなくて済むよう工夫されているそうです。「システムとデザインの分離は大事」という点を強調なさってましたが、ここにも今までの苦労や失敗経験が活かされているんでしょうね。

当日の山本さんのスライドはSlideShareにて公開されていますので、是非そちらもご覧ください。

#3 terurouさん―地域独自性がコミュニティー運営の秘訣

terurouさん休憩を挟んで3人目のゲストはterurou@コスモルート,DSTokaiさんです。題目は「なごやこわいとか地方コミュニティのはなし」。今回のTechLIONにおける最大のナゾ、「なごやこわい」が明かされる時がやってきました。動画はコチラ(52:58~)

本職はSI/研究開発ということで、SI業の傍らRIAビッグデータ等々の研究をしているそうです。それから社内でGeQuu(ジクウ)といソーシャル・ロギング・サービスに関わっており、社長の趣味で最終的に脳波のデータを集める(なんだそりゃ!)のだとか……。

「なごやこわい」って何ですか?
「なごやこわい」
DSTokai(DSってなんだ!?)
DSTokaiとは

さて本題。DSTokaiという東海地域のメタコミュニティー(メタコン)を運営しているそうです。メタコンとは各種勉強会の核となるコミュニティーのことで、DSTokaiは適度な参加人数でうまく機能しているそうです。このGeekBarもそのうえで重要な拠点になっているといいます。ところでDSって何の略なのでしょう?? いろいろあって定かではないらしい(→参考)ですが、でらスタディー(でらは有名な名古屋弁)だったということに急遽決定。

そして出てきた「なごやこわい」。どうもDSTokaiで形成された独特な文化を言い表す言葉みたいです。その特徴の一つは「関数型の聖地」。どーいうわけか関数型言語に強い(というか関数型大好き人間?)の人達が多いらしいのです。地元の人すら置いてけぼりにしかねないその独特さは、名古屋人さえもおののいて、「なごやこわい」と言わしめるほど。うぁー、楽しそうだー!GeekBarに集う人達がすっごく積極的な理由がわかった気がします。

#4 河口信夫先生―学術研究と民間サービスの間を埋める

河口信夫先生本日最後のゲストは河口信夫@名古屋大学先生。これまた興味深いお話盛りだくさんでした。題目は「ユビキタスなシステムの作り方」ということで、動画はコチラ(1:22:42~)です。

河口先生は大学教授というアカデミックな職業の方。研究して論文を書いてこそというお仕事をされているのですが、120万ダウンロードされたというあの駅.Lockyも開発した方なのです。駅.LockyとはiOSで動くとても便利な時刻表アプリなのですが、便利なサービスの開発とアカデミズムがどう結びつくのか。実はこれ、無線LAN(Wi-Fi)による位置推定の可能性を研究するという、純粋な研究活動(現在Locky.jpプロジェクトとして継続中)からスタートしたのだそうです。

WarDriving(自転車で測定)
Wi-Fi基地局調査

初期は学生にノートパソコンを改造した装置(右写真)を背負わせ、「お前、これでデータ集めてこい!」などと言いながら、自転車で名古屋市の広範囲を走り回るなどして地道に無線LAN基地局の情報を収集したりしたそうです。名古屋市中心部の1km四方で900個近い基地局が見つかる等、その調査結果は論文にもなっています。

でもむしろ、無線LANによる位置推定が威力を発揮するのはGPSの届かない屋内です。そういう場所でいかに位置推定をするかという研究こそが本題であり、早速名古屋の地下鉄全83駅・地下街などでも基地局を測定(回数は実に2万8000回以上!)。結果、その場所には合計1700以上の基地局があることがわかったそうです。そして、収集した基地局データを使えば実際に位置推定が可能になるはずです。駅.Lockyは元々、これを実証するための実験から生まれたサービスだったというわけです。

情報ボランティア支援組織"Lisra"立ち上げ
ボランティア支援組織"Lisra"
みるみるうちに99%の駅の時刻表がアップロードされた!
99%の駅の時刻表を網羅

駅.Lockyはユーザーの位置を推定した後、最寄駅の時刻表データを表示するというアプリですが、そこで位置情報と同様に重要なものが時刻表データ。こちらは現在全国のユーザー(鉄道マニア)のボランティアで集められています。現在なんと全国99%の駅を網羅するに至っているのですが、この過程で考え始めたことがあったそうです。それは「こういったボランティア・そして駅.Lockyのようなサービスを支える仕組みはどうあるべきか」ということ。しかし研究活動が本分の大学にこういった仕組みの運営は向いていないということは薄々気づいていたため、別組織を設立しようと考え、Lisraという組織を設立。実証実験と民間サービスの間を埋める方法を考えているそうです。

駅.Lockyが研究活動の一環で生まれたものだったとは……、学術の世界と商業サービスの世界の間の不思議な関係が実に面白いですね。尚、河口先生のお話もSlideShareにて公開されいますので、ぜひそちらも読んでみてください。

 トークの後も、まだ熱かった

ゲストトークの後は恒例のプレゼント抽選会→TechLION次回予告ときて、それでだいたい終了を迎えるわけですが、今日は違いました。

参加者も「次回予告」……半分以上の人がイベント告知してましたよ、スゲぃ
参加者皆でイベント告知大会!

「参加者も、何か告知があればどうぞ」と募ったら、なんと半分以上の方々が何らかの告知をしました。ステージの前には行列が……。こんな光景見たことありませんよ。皆さん恐ろしいほどにアクティブです。なごやこわいわー。

その告知を一つご紹介。今週末の5/20(日)、株式会社ニューキャスト セミナールームにて名古屋Node予備校 vol.1を開催するそうなのですが、只今発表者を大募集中だそうです。俺のNode.js話を聞けぇという方は是非参加してみてはいかがでしょうか。

次回は7/26、再び東京・六本木

次回TechLION(Vol.8)は7/26日六本木ですよ!話が前後しますが次回予告です。

Vol.7を開催したこの日、次回TechLIONの場所と日時が確定しました。TechLION Vol.8は7/26(木)六本木SuperDeluxeで開催します。

ここまでで確定しているゲストは、vol.6で観客として参加され「私も出演しなければいけない気がする」とつぶやいていた日本のインターネットの草分け的人物、砂原秀樹@慶應義塾大学さん。モバツイの開発で有名な藤川真一@マインドスコープさん、他Twitterに縁の深い方をお招きする予定です。お楽しみに!

ゲストの皆様、観客の皆様ありがとうございました

そんなわけで、今回も面白くて驚かされる話満載のTechLIONにすることができました。私自身は初の地方遠征でしたが、こんなにも地域によって独自性があるとは想像していませんでした。ここは参加者誰しもがアクティブ!いやぁ、れからのイニシアチブは名古屋で決まり、という某フレーズに物凄く現実味を感じますよ、これは。東京もウカウカしてられません。

ゲストの皆様、観客の皆様、ご参加ありがとうございました。