Vol.8報告(2/2)―Twitterゆかりのゲスト達がソーシャルメディアの道筋を語り合った

引き続きUSP MAGAZINEまつうらです。TechLION Vol.8の報告後半しゅっぱーつ!前半をご覧になっていない方は是非読んできてください。

今回のTechLION第二部はTwitterゆかりのゲスト達を招いてTwitter談義をするという、Twitter祭りを開催しました。それぞれに人生あり、ノウハウあり、考え方あり、そして思い描く未来あり。たかがTwitterでは終わらせられない深い話が多数飛び出しました。

Twitterゆかりのゲストお三方

本日のかんぱーい!申し遅れましたが第二部のサブタイトルは「ジャングルバス.com」。Twitterについて、開発者目線、ユーザー目線で熱く語っていただくわけですが、まずは第二部から登場したゲストをご紹介。

とその前に、第一部でやり忘れていた本日の乾杯を出演者+ゲストみんなでしました。

かんぱーい!

そして、LT風にお三方が順番に自己紹介。

ユーザー代表 高橋真弓@Six Apartさん

高橋真弓@SixApartさんMovable Typeで有名なSixApartで広報とマーケティングをなさっているという高橋さん。Twitter上では、 @mayumine(本人)、 @sixapartkk(会社)、 @tophlove(「トフ」という会社のマスコット)、の3種の人格(1つは動物?)を使い分けているそうです。本人はもちろん本人、会社は会社らしく清廉潔白に、トフは「トフ」しか喋れないアカウントだそうです。(我TechLIONにもてっくんというマスコットが……) またURAMAYUというブログを書いているブロガーでもあり、GIZMODO JAPANNAVERまとめ等もなさっているそうです。

Twitterで一番印象深い出来事は2009年、国内のTwitterの盛り上がりもあってニュース番組ワールドビジネスサテライトで会社が取材され、こともあろうに酒が入った状態で受けたインタビューの様子がオンエアー。でもまぁそれはチャンスとばかりにブログに記事を書いたところ、放送から1週間でフォロワー数が2000~3000人増えたということがあったそうです。

開発者代表 藤川真一(えふしん)さん

藤川真一(えふしん)さん現在F’s Garageというブログを運営中。

2007年4月、日本のTwitter黎明期。会社員をやりつつ日本初の携帯電話向けTwitterクライアント「movatwitter (現モバツイ)」をリリース。

当時はまだ日本にiPhoneが無かった頃であり、数少ないモバイル向けTwitterクライアントとして支持されたことや、2009年に国内でTwitterがブレイクしたことも手伝って、最終的に160万ユーザーを抱えるまでに成長したそうです。

2010年にこれを運営するための会社を設立(その話は自伝として本にもまとめたそうです)、業界がスマートフォンへシフトする中でスマートフォン向けクライアントもリリースしましたが、今年5月、熟慮の末に会社を売却して現在に至ったといいます。

開発者代表 山本裕介さん

山本裕介さんジュノンボーイにも同姓同名の方がいたりしますがあちらは俳優界のイケメン、山本さんエンジニア界のイケメン。二児の父で、実はイクメン(育休中)でもあります。

コンピューターとの出会いは、ファミコン買ってとせがむ兄に与えられた MSX1。そしてBASIC・Z80マシン語から手を染め(筆者はここに感動ですよ!)、Pascal, Fortran, Java, C/C++  と様々な言語を使いこなせます。

2007年、Java向けのTwitter API、Twitter4Jを制作。仕事面では、エンタープライズIT系企業を経て、RedHatでオープンソースの世界を垣間見つつ、先程のTwitter4Jも相まってTwitter APIポケットリファレンスを執筆。そんな実績がTwitter社の目に留まり、オファーを受け、Twitter Japanでデベロッパーアドボケイト(開発者支援役)として働き始め、大規模Webシステムを学んだそうです。

Twitter座談会:

以上のお三方+第一部に引き続き砂原先生と、司会の二人(馮P&法林GM)の計六人でTwitter座談会スタート。かなり要約してしまっておりますが、以下、会話形式でお送りします。

Twitterにまつわる人生の変遷

: 一度Twitterをテーマとしてやりたいって思っていました。そんなわけで今日お三方をお呼びしたのですが、気付いてみればえふしんさんと山本さんはお呼びした後、ポジションが変わっていてあれ?みたいな。えふしんさんはどのくらいのタイミングでバイアウトを考えていたんですか?

えふしん: バイアウト自体は今年の頭くらいですね。2010年設立のマインドスコープの役割はTwitterから離れることだと思ってました。(黎明期を支え終えて)ご苦労さんって言われて会社が潰れちゃうのはリスクですから、それ以外の柱を持たなきゃいけないっていうのがありましたし。

: ご自身で何か新しいものを創りたいとか思いますか。

えふしん: まあ……明確にやりたいものがあればマインドスコープで行ったと思うんですが、そういうことではなくて一からやり直そうと。これまで5年間ずっとケータイ中心で、ケータイもだいぶレガシーになってきてますし。

: 山本さんはどういう経緯で?

山本: 僕はやっぱデベロッパーアドボケイト(開発者を支援する役)なんですよ。WebのAPIを使っていろんなサービスが広がったら面白いなあと思うんです。それでTwitter4Jも作って。アプリをやりたいなと思うこともあるけど、Twitter4Jなんかにもいっぱい要望が来て忙しいし、やっぱAPI面白いし。
そんな感じでフリーランスやりながら本書いたりして頑張ってた時、Twitter社から声が掛かって、それで給料貰えるならいいかなと思って。でも次第に、本国に来て開発を……という流れになり、それもちょっとやりたいことと違うなとモヤモヤしてきました。既に僕には家族もいますし。それでイクメンしながら好きなアプリケーション作って飯食えたらいいなって思ったんです。

: Twitterが登場した2006年からたかだかこの5,6年でこれだけ人生が変わるような出来事が起こるんですね。高橋さんは昔と今で、使い方変わってきてたりしますか?

高橋: 当初は友人とのコミュニケーションツールとして使っていたんですけど、フォロワーが増えてきて、最近はあんまりプライベートなつぶやきとかしなくなっちゃいましたね。Twitterは情報発信系に、そしてプライベートはFacebookに。

法林: Twitter自体があまりアクセス制限の仕組みとかないですよね。だからプライベートなことには実はあまり向いてないという。

Twitterを如何なるツールと捉えるべきか

山本: Twitter社自身も「TwitterはSNSではないですよ」と言ってます。SNSの括りに入れられたりしますけど、ソーシャルグラフではなくインタレストグラフなんだと。片思いできるのが特徴ですからね。

(編注:このあたりで山本さんが、#techlionのタイムラインをリアルタイムに舞台のスクリーンに表示するという計らいを……。すると!観覧者から多数の静かなツッコミが入っていたことがあらわになり、その後も激しいツッコミの応酬に……)

#techlionハッシュタグタイムライン1砂原ミクシィは完全に閉じてて、Facebookは何となくコントロールできてて、Twitterは完全にオープンで、僕は書きかけて消すツイートが最近結構あるんだよね。一般的な例えで言うなら、「原発賛成!」みたいなのとかね(飽くまで一般例だからね!)。
慎重に言うべきこともあるだろうけど、でもあえて言わなきゃならないこともあると思うんだよね。そういうのって何か意識してる?

高橋: 少なくとも酔っぱらってる電車の中では投稿しないっていうルールを作りました(笑)。

砂原: そう、人によっては酔っぱらってる時ずーっとツイートしてて「こいつ大丈夫か?」って思う奴もいるし、何もわからないこどもなんかもそうだし、でもわかってて意図的にやってる人もいるんだよね。
ここらへんのバランス感覚をどう考えてますか。こどもにTwitterという道具を与えるとしていつなら大丈夫かとか。

観客からの静かなツッコミの応酬山本: うちの子は既にデジタルネイティブ世代ですねー。テレビをタッチして「これもう一回再生しろ」みたいな(笑)。 いつからTwitterをっていうと、もう生まれる前から専用のアカウントを持ってやってます。「生まれたよ」とか。

高橋: 大人になったらそのアカウントをお子さんに明け渡すんですか?

山本: 本人が嫌がらなければ。もしかしたら「ざけんじゃねー」とかいって最近出た全削除ツールで消されるかもしれませんが(笑)。
それで僕自身としてツイートする時は、今はTwitterの中の人としての発言になってしまうのでそこはやっぱり社内のレギュレーションとかありますね。 指針としては、競合他社に関して発言するときは批判的なことは言うなとか。

#techlionハッシュタグタイムライン2えふしん: Twitterは「つぶやく人が放送局になれるのが素晴らしい」と言うんだけど、「有益な情報を発信してフォローしてまじめに使いましょう」って言っても普及しないんですよ。Twitterのつぶやき欄に“What are you doing?(今何してる?)”って出てくるけど、日本人にとってみれば結局何を書けばいいのかわからないですから。逆にたからこそ、ギーク達が独自の使い方を産み出して、これ面白いじゃんといって普及していったと思うんですよ。そうしてやがて有名人の情報拡散装置になったり、バカ発見器になったりしていったと。

えふしん: 震災とかの有事の時にネットワークとして使うっていう考えもあるけど、例えば「僕は無事ですよ」とつぶやいたって相手が見てなきゃ伝わらないんです。Twitterって要するに、日常のどうでもいいようなところで使われているからこそ価値があって、だからミクシィなんかとも使い分けられてきたんですよ。みんなそんな有益なことできないですもの。無駄を許容したところが、設計的にTwitterが偉大だったところですよ。

クジラ(高負荷)に見る、Webの設計思想

砂原: 3・11の時にさぁ、Twitterでクジラ出なかったの何でなんだろう思わない?あの時にクジラ出てたら、震災の時Twitter使えるなんて誰も言わなかったでしょ。

法林: クジラってあの、Twitterが処理しきれなくてサーバーが落ちてる時のアレね。

砂原: あれ、裏ですごかったでしょ?俺もちょっとその話聞いたんですよ。そういう事って知らないじゃん、みんな。だけどそういう事を知ってもらうことによって、例えばサーバーの仕組みは本当にこれでいいのかとかそういう話ができるんだよ。ごめん、話を遮って(笑)。

ぶっちゃけバルスの方が大変ですよ山本: 震災発生当時はやっぱ大変でしたね。でもぶっちゃけ「バルス」の方が大変だったですよ。

: モバツイなんかもあの時落ちないようにされたんですか?

えふしん: やっぱあの時はひたすらサーバー増やしましたね。都会でも帰宅困難者がいっぱいいてケータイ使いましたらからね。サードパーティの役割としてやっぱ落としちゃいけないなって。あの時は利益度外視でしたね。テレビも広告一斉に消えましたし、メディア全体がそうでしたから。

: 山本さん、改めて伺ってみたいのですが…

山本: (編注:この時ツイートしていて端末いじり中だった)あ!はい。技術的な観点で僕は学ぶことがいっぱいありました。最初エンタープライズ畑にいたのでそことはだいぶ考え方が違うんだなと。Webは絶対落ちちゃいけない、じゃなくてとにかくできる限りサービスを継続することが大事っていう。そこはアーキテクチャもよく考えられてるなと思いました。
例えば、ツイートは受け付けるんだけども、非同期。すぐに書き込まないとか。あとフォロワーがたくさんいる時。一言ツイートするだけで何万人ものタイムラインに現れますけど、そこを従来のメールと同様の作りにしていると全然追いつかない。そのために極端な話「時々失敗してもいいかな」くらいの作りをしている。そこはエンタープライズと全然違う考え方で対策をしているんです。
ホエールウォッチングそれでクジラもどんどん出なくなってきた。でも寂しいですよね。そろそろまた会いたいなーみたいな(笑)

(編注:山本さん、ここでクジラの画面を披露。これは、このURLを開くといつでも見られるという。更にクジラでないパターンも。)

観客: クジラを釣ってる鳥の数直しましたよね。偶数羽でないと釣れないはずなんだけど、最初奇数羽いたっていう。

法林: スゴいポイント見てますね!

Twitter、そしてソーシャルメディアの今後は?

: Twitter以前だと2004年のミクシィがあったり、最近だとLINEが5000万ユーザーを突破したりなど、人を繋ぐいろんなツールが登場してきました。ではTwitterの今後のポジションについて、皆さんどう思われますか?予想や意見、あるいは自分はどう付き合っていくかなど、お聞かせください。

山本: クローズドなmixi、オープンなTwitter、中間くらいのFacebookと、ソーシャルツールは一通り出てきた感はありますけど、LINEってあれはあれで画期的な気がします。電話を通じたソーシャルな繋がりっていう意味で。今後は電話帳を登録しない人が出てくるのかとか、既存のTwitterなどとどう繋がっていくのかなとか。
あと個人的にはAPI提供してくれると面白いなと。LINEの人にメール送ってみたり したいですよ。だから「よかったらLINE4J作るよー」って言ってるんですけどね。

えふしん: Twitterの最大の特徴はやっぱり140文字を守り続けることではないかと思うんです。最初電子メールが登場しましたが、その中の需要の一部にとってはそんな特徴を持つTwitterの方がより適切で移っていった。それと同じでTwitterの一部の人達にとってみると更にLINEに移る方がいいかもしれません。でもTwitterはTwitterとして、有名人とふらっと繋がるとか、ちょっとしたECがお客と繋がったり、そういうところが洗練されれば今後も残り続けると思うし、他メディアもそうだと思います。

高橋: えふしんさんの言うとおり、140文字というシンプルさだけは変えないでほしいです。300文字以上つぶやけるようになりましたとか、SNS機能が付きましたとかいったらTwitterの価値が無くなっちゃうと思います。
多分ですけど、Twitterはインフラ的な方向に寄っていくんじゃないかなと思っています。今iOSに統合されていますけど、よりいろいろな所に不可欠ものとして取り入れられる形で成長していくのかなと思っています。

: 砂原先生はどうお考えですか?

砂原:  俺は全然違う事考えててね。
いろいろなサービスが出てきたけど、それが一企業の提供するサービスである限り、その先は無いと思ってる。TwitterはTwitterの人がやるし、FacebookはFacebookの人がやるっていう……。ミクシィ、LINEもね。これを更に考え直してアーキテクチャが変わると思う。ただ通信するだけのメディアだったインタネットが今HTTP(Web)レイヤーで接点を持つ段階に上がって来たけど、将来は更にその上のレイヤーに接点ができて、そこにいろんなサービスが乱立してくると思う。

大学の先生みたいなこと言いますね法林: (ここまで全然それっぽくなかったのに)大学の先生みたいなこと言いますね。

砂原: (苦笑)でもそれができなかったら次は無いと思う。JUNET始めた時、今こんなになってるなんて誰が想像したか。その段階に来たときに、今の学生やこれからの人達がいろいろ考えてくれるはずなんだよ。えふしんさんや山本さんもたぶんそんなことを考えるから、次の展開へと足を踏み出してるんだと思うんだよね。

法林: そういう曲がり角に来ている時期なのかもしれないってことですね。

: そういった形にで積み重なっていって、5年後10年後、これまでゲストに来て下さった方達も交えてまた話をしてみたいですね。今日は皆さんどうもありがとうございました。

座談会を振り返って

会場で交わされたTwitter談義。ブログなんかじゃとても全てをお伝えすることはできませんが、他にも興味深い話、大切な話がたくさん出てきました。その補足も兼ねてちょっとだけ書かせていただきますが、今回の座談会の中で筆者が個人的に考えさせられたのは、いわゆるバイアウトの話とバカ発見器的側面の話でした。

司会の馮さんはバイアウトの話を振っていましたが、あれは、世間で思われがちな「バイアウト=勝ち組」な印象が本当にそうなのか今一度問いたいという意図があってのことでした。実際、実体験者のえふしんさんのお話を聞いた限りでは決してそんな華やかなものではないと感じました。売却して出来たお金で遊んで暮らそうなどという雰囲気ではとてもありません。そもそも価値あるサービスの創造で先行投資したぶんがようやく返ってきたとも言えるでしょうし、人生もまだまだこれから。飯を食うためにはどうしなきゃいけないか、そして一技術者として今後をどうデザインしていくべきなのか。そういったことを考える苦労は皆と変わらないのだなという印象でした。

そしてこのレポートの要約文中では用語としてはあまり出てきませんでしたが、Twitterの座談会中はバカ発見器的な側面も議題になりました。皆さんご存知の通り、ソーシャルツール、とりわけTwitterで、思わぬ失言によって地位を失墜させてしまう人が多数います。でも砂原先生もおっしゃったように時には言わなければいけないことだってあります。言うべきことを言わなければ、最近の不正コピー品ダウンロード刑事罰化DVDリッピング違法化など、異論を残したままの法案が強引に成立するといったような事態が起こってしまいます。(この法律のことについても今回触れられていました)

我々はもっと技術者としての立場から物を言わなければならないと思います。そういう意味では、まだまだTwitterをはじめとしたソーシャルツールを使いこなせていないのかもしれません。ソーシャルと繋がれるソーシャルツールを産み出したのは我々技術者なのですから、我々こそが使いこなすお手本になるべきだし、私はなりたいと思います。

ご参加ありがとうございました

Vol.8キャスト揃ってファイティングポーズ!今回のレポートブログ、大変長くなってしまいましたが、参加してくださった皆様(ゲストも観客も、スタッフも)、ありがとうございました。互いのメッセージから何かしら考えるものが得られていれば幸いです。

いつものように、記念に出演者勢揃いしてのファイティングポーズ写真を載せておきます。(お、砂原先生!気合い入ってますねー)

さて、次回は……、またまた遠征で10月4日、今度は神戸に乗り込みます!神戸は我らが司会の法林GMのホームでもありますが、神戸の皆様よろしくお願いします。ちなみに東京の次回は11月を予定しておりますので、こちらもお楽しみに。ということで、改めて次は高坂さんよろしくおねがいします。

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