TechLIONプロデューサーの馮です。こんにちは。先日の台風18号は本当に凄かったですね。京都や大阪など関西地域への多大な被害、自然災害の脅威を改めて思い知らされました。被災された皆さまにはお見舞い申し上げるとともに、いち早い復旧を願っています。
ちょうど台風18号が北上してくる中、北の大地、北海道で初めてのTechLION vol.14が開催されました。今回、MCの立場からその模様を写真(撮影:小笠原豊さん)とともにお届けします。
北海道初開催のTechLION
日本全国津々浦々、今ではIT/Web系に関するコミュニティやイベント・勉強会が多数開催されています。vol.14の開催場所となった北海道も例外ではなく、今回は前日開催されていたOSC Hokkaido 2013のタイミングに合わせての開催となりました。会場には、OSCに引き続いてご参加いただいた来場者の皆さんも多数見られました。
会場となったのは、札幌大通公園・すすきのの南に位置する「HIPPIES SAPPORO」。鴨々川沿いにある、オシャレなライブハウス&カフェバーです。
開始2時間前から準備を始め、18:00に北海道初となるTechLION vol.14が開演しました。
環境を変えることの重要性~ワンランク上を求めて
トップバッターを務めたのは、@mrknこと、村田賢太さん。現在クックパッドのエンジニア、そしてcRubyのコミッタとして活躍しています。北海道前後という切り分けでトークが進みました。
村田さん(以降むらけんさん)は、若いときからコンピュータに触れており、インターネットコミュニティへの参加は、19歳のときKondara Poject(Linuxディストリビューションの1つ)にジョインしたのが最初とのこと。このときはKondara Pojectの主要メンバーが首都圏にいたため、つねにオンラインでの参加となっていたそうです。その後、社会に出たそうですが、初めからRubyに触れていたわけではなく、業務アプリの開発などに携わっていたのです。
その後、2007年にRuby札幌にジョインし、2008年にRuby会議に、KaigiFreaksとして参加したのが1つの転機だったといいます。そして、2010年にRubyコミッタになり、2011年7月にクックパッドの社員がRuby札幌に遊びに来て出会いがあり、今の仕事につながったわけです。
こうした一連の流れについてむらけんさんは「さまざまな出会いときっかけ、そして運があった」と言いますが、その裏付けとして伝わってきたのが「自分で何かをやりたいと思ってそれを実現できないと感じたら、自分から環境を変えることが大事」という考え方です。実際、コミュニティに参加したり、転職したりといくつかの転機を迎える中、共通しているのが、次のステップ、上のステージを目指している意識ではないかと思います。
そして、むらけんさん自身「クックパッドに入ってから周りに優秀なエンジニアがたくさんいて刺激を受け満足できる環境に身を置くことになりました。それでも物足りない部分はあるわけで、それをコミュニティで補っていますね」と、クックパッドに入ってからコミュニティの捉え方が変わったと話しました。具体的には
- 職場では触れない技術について知る場所
- 職場で会えないエンジニアと交流する場所
- 勉強やコードなどにこだわらない
といった点を挙げていました。
最後のまとめとして、「今の環境でやりたいことができないのであれば転職すると良い(環境を変えると良い)」と、環境の重要性を強調し、発表を終えました。
かかりつけ医になることの大切さ・難しさ
続いて登場したのは、たくさんのヒット書籍を執筆し、Webコンサルタントとして、またWeb関係の活動ではCSS Niteの運営にも関わるなどアクティブに活動をするサイバーガーデン益子貴寛さん。一部ではカニ好きWebプロデューサーとしても有名です 🙂
益子さんは、先ほどのむらけんさんとは逆のパターンで、東京在住の立場から北海道に移住しました。きっかけの1つとして東日本大震災があったと言います。
益子さんの演題は“「情報の医者」としてのWebデザイナー論”。厳密には“「インターネットでの情報発信の医者」としてのWebデザイナー論”です。今回の発表内容は、5年前にWeb専門誌に投稿した記事「Web制作者の働き方の未来像~かかりつけ医と専門医~」がもとになっていて、当時から意識していたことだったそうです。そして,5年が経ち改めて見なおしてみると「あれ?(状況は)変わってない?むしろ悪くなっている?」というのが益子さんの印象だと言います。そこには、Webデザイナーという職種を考えたとき、
- 参入障壁の低さ
- 高年齢化
- 増えつづける必須スキル
- 上がらない単価
といった課題があり、加えて自分たち自身が歳を取り、(自分たちを)取り巻く環境が変化していることで状況が複雑化、ときに厳しくなっていると述べました。こうした状況を解決するにはどうするのか、益子さんは次の6つのポイントを挙げました。
- なんでも屋になる
- 二足のわらじをはく
- 再就職する
- 新技術に特化する
- 得意分野に特化する
- 得意分野に特化する
これを、
- かかりつけ医
- 二足のわらじをはく
- 勤務医
- 先端医療
- 専門クリニック
- 総合病院
このように置き換え、Webデザイナーとしてこの先進む道の1つとして、一番上の「かかりつけ医」≒「なんでも屋になる」というのが今の時代を生き抜くための1つの方法ではないかと提示し、発表を締め括りました。今回このお話を聞いて、広義の意味でのWebデザインというのは、クライアントあるいはチーム内での課題解決をするためのポジションであり、だからこそ(その状況に合わせて)なんでもできるスタンスでいることが大切なんだと考えさせられました。
偶然から生まれた大ヒットソーシャルゲーム開発
休憩を挟んで、3番目に登場したのは北海道札幌に拠点を置くWeb/ソーシャルゲーム開発企業、株式会社インフィニットループ代表取締役 松井 健太郎さんです。北海道に拠点を置くという立ち位置から「地方IT企業が成功していくための3つのポイント」と題して、企業から現在に至るまでの経緯、その中で感じた「北海道」にある企業としての理念と理想についてアツく語りました。
松井さんはインフィニットループ以外に、ke-tai.org管理人を務めたり、LOCAL正会員として活動していました。そんな中、1つの転記を迎えたのがソーシャルゲーム「ブラウザ三国志」の開発案件と、その後の、ゲームのヒットだそうです。
「本当に偶然で受託したんですよ」というように、この案件は、たまたま「札幌 PHP」といった何の気なしのキーワードで検索された結果に、インフィニットループが表示され、仕事の発注が来たと言います。その後、発注元から正式にオファーされゲーム開発に至ったとのこと。余談ですが、僕自身ブラウザ三国志にハマって(しかも人生で唯一課金したソーシャルゲームw)なので、この話で、初対面の松井さんにいきなり親近感がわきました 🙂
この案件を受けたとき、インフィニットループの会社規模は社員3名だったのが、ゲームの盛り上がりとともにあれよあれよとスタッフが10名になってしまったことを振り返りました。そして、今では従業員数90名を数える規模に成長しています。
こうした経緯について、松井さんが振り返ったポイントは、
- 運とタイミングに助けられた
- やりたいようにやった(ユニークに)
- 技術に特化した
- 地方ならではの利点(リモートでのコミュニケーション活性)
といったものです。いずれもどの企業でも重要なポイントだとは思いますが、松井さんのお話を伺って、自社が北海道にあるということのメリット・デメリットをご自身できちんと捉え、デメリットはメリットに、メリットはさらに大きなメリットにするような意識を持っていたように感じます。
最後のまとめとして、地方企業のこれからについてこのように述べました。
「一社だけでは限界があることを理解したうえで、多様性を持たせることが大切だと考えています。また、人材については、北海道から東京に出て行ってしまうことは避けられないと思うので、であれば、僕たちはいつでも戻ってこられる環境を整えておくことが大切。そして、仕事をするときに、“この仕事は本当にここでしかできないのか?”を自問自答して突き詰めていることが大事だと思います」と、北海道企業ならではの想いと願いを語り、締め括りました。
世界はつながっている
TechLION vol.14、トリを務めたのは、一般社団法人LOCAL理事でもあり、ISCO日本支部プログラム委員としてワールドワイドに活躍される、三谷公美さん。演題の「世界はつながっているということ」とはどういうことか、ご自身の体験をふまえながら説明しました。
まず、ご自身が積極的にコミットしているLOCALについて詳しく紹介しました。LOCALは、北海道における技術系地域コミュニティの活動を支援し、コミュニティ間の連携イベント企画を開催するなどして、地域を盛り上げることを目的とした有志団体です。今回のTechLION開催にもご尽力いただきました。
LOCALを説明する中で、僕がとくに響いた言葉が三谷さんがおっしゃった「私達は北海道が好きだ」というセリフです。まさに、地域活性をしていくうえで、最も大切な“気持ち”であり、活動の根源になっていると思います。
そして、地域活性はもちろん、たとえばオープンソースカンファレンスやPHP Matsuriなど、他地域のイベントとの連動を図ることで、北海道←→全国をつなげるHUBとしての存在の大きさを改めて知ることができました。
こうした活動の背景として、三谷さん自身の「私達の地元に技術者文化を根付かせたい」という想いが強くあるそうです。だからこそ、「地域だけで閉じるのではなく、全国とつながっていくことも大切」と語りました。三谷さんご自身、先日のLLまつりに参加するなど、他イベントに武者修行に行くとおっしゃっていましたが、そこは法林GMから「いやいや(若手を)鍛えに行くでしょw」というツッコミも。
さらに、三谷さんの活動は日本にとどまらず、ISOC (Internet Society)を通じてワールドワイドに広がっています。ISOCは、インターネットのオープンな開発/進歩/利用を保証することを目的に、“The Internet is for everyone!”というキーワードを掲げてさまざまな標準・教育・方針についてリーダーシップを提供する団体です。
三谷さんはこのISOC日本支部において、IETFへのフィードバックやグローバルIPv6支援など日本サイドの活動支援の旗振りをされているメンバーの一人になります。
余談ですが、MCをしながらエピソードを聞いている際、途中途中に村井純先生や高橋徹氏といった日本のインターネットを作ってきた主要人物の名前がポンポンと出てくるのを聞いていて、改めて「この人はインターネット界の重鎮なんだなぁ」と思った次第です(偉そうにスミマセンw) 🙂
三谷さんは、ご自身のセッション、そしてイベントの締め括りとして「要はきっかけが大事。何か気になるものを見つけたら、それは動き出すチャンスです。今回、LOCALやISOCといった団体を紹介しましたが、世の中にはいろいろな場所や環境があり、一歩踏み出せばつながっていけます。みんなつながっているので、ちょっとでも興味を持ったらまず見て、参加してみてください」と、コミニティが持つ「つながり」の価値を強く訴え、イベントを終えました。
北でコミュニティのアツさを体感できたイベント
以上、各セッションを駆け足で振り返ってみました。北海道から東京へ、東京から北海道へ、北海道に軸足を置いて、北海道から世界へ、四者四様、さまざまな考え方と働き方、活動の仕方をお話しいただきました。その中で共通して感じたのが、技術への思い、自分が大切にしていることをぶらさない気持ちでした。
そして、最後のセッションで三谷さんがお話した「みんなつながっている」ということ。これこそが、コミュニティの活力になっていることを改めて知ることができました。
TechLIONでは、これからもたくさんの地域・場所で開催し、一人ひとりをつなげていける、そういうトークセッションを目指していきたいと思います。
改めまして、北海道の皆さん、ありがとうございました!!またぜひ!!
次回ブログは法林GMが担当します!vol.15の最新情報です!(たぶん)。お楽しみに!
ps
今回、5年ぶりの北海道ということで、サッポロビールに味噌ラーメンを堪能。さらに、人生初の一人ジンギスカンも体験w まさに孤独のグルメ状態です(画像は「孤独のカメラ」を使用)。
その後、台風18号の影響で千歳空港を2時間以上遅れで出発し、羽田空港についたのが日をまたいだ深夜1時過ぎでした。これまた貴重な思い出となりました。