vol.17報告(3/3)―言語イベント運営者座談会。舞台裏、ノウハウ、苦労話など話題は尽きぬ

TechLION取材班のまつうらです。6/26(木)に都内で開催しましたTechLION vol.17のレポート最終回をお送りします。(レポートその1その2はこちら)

LL TimeLines
vol17開演時、Twitter上でもツイートバトルが繰り広げられていた!?

今回のテーマは言語イベント。ステージ上では各種LLのキーマン達によるトークバトルが繰り広げられていましたが、実は場外でも密かにトークバトル(?)が繰り広げられていたことに気が付きましたか? TechLIONではいつもステージ横で、観戦者がつぶやくツイートをリアルタイム中継していますが、今回は4言語がキーワードとして含まれるツイートを、それぞれのタイムラインで追跡。これによりどの言語が最も盛り上がっているかを中継していたのです。

それでは、あたかも4大言語イベントの第0日のようになったトークの模様(注1)を、ダイジェストでご覧ください。

(注1)このセッションの録画を公開しています。是非こちらもご覧ください。(撮影協力:日本仮想化技術様)

■第二部後半 「LLとコミュニティの過去・現在・未来」座談会

4大+1言語イベント運営者勢揃い二部後半はこんな感じ(写真)で、4大言語イベント実行委員長に加え、LLイベント運営者の一人ということで法林GMもパネリストとして参戦。馮P一人になってしまったMC側には、第一部のゲスト小山さんが代打で加わるという、TechLION史上初の展開で進行。

出された質問への回答をボードに書きつつ発表するといういわゆる大喜利形式にて、イベント運営者視点での舞台裏話や運営ノウハウ、悩みなどなどが語り合われる座談会となりました。

最初に触れた言語と、今の言語への出会いは?

運営者達が最初に触れた言語
今各言語イベントを仕切る運営者達も、最初に触れた言語はそれぞれ違う

馮P: ではまず無難なところで、「初めて触ったプログラミング言語」を聞いてみたいなと思います。ちなみに小山さんは?
小山さん: 私は最初BASICですね。名前何だったかなぁ。
法林GM: 『中学1年 PC-8001のBASIC』 これはうちの親が「これからはコンピューターの時代だ」といって、泊り込みのパソコンセミナーに僕を参加させたんです。
和田さん: 『JAVA』 僕はJavaですね。大学2年の情報処理の授業で。その時の課題でゲームを作ろうということになって「ジャバシックパーク」というのを作りました。話が進むと、恐竜になるか、ダメな恐竜になるか、不良恐竜になるか、という(笑)。
前島さん: 『C++ 16-17(歳)』たぶんC++、もしくはJavaだったと思うんです。高専の授業で。でも全然真面目に勉強してなくって、あんまり触ってないですけど。
角谷さん: 『N88-BASICだと思う』 記憶が定かじゃないんだけど、母親の実家に帰省したら、離れに叔父さんのヤバい部屋があって。ゲームがしたい一心でベーマガのリスト打ち込んで……。
鈴木さん: 『FORTRAN』 私も高専の1年か2年の時にやったんですけど、世代の違いがすごいなあと。C++なんて存在していない頃ですよ。
法林: やっぱり世代の差は感じますね。初めてがJavaとか、いくつですかって感じですよ。
和田: でもJavaわかんなかったですけどねえ。わからなくて、Cで作るとかのほうが面白かったですね。

出会いに関する質問
言語との出会いのみならず、イベントはまた別の出会いももたらすみたいです

馮: 今、みなさん別の言語のイベントを仕切られているわけですが、言語のチェンジってどのタイミングであったんですか。
法林: 僕の場合は大学3年の時、学科にUnixが入ってきて、シェルを触った時に変わりました。僕のLLイベントにつながる原点はそこで、LLの精神の一つでもあると思うんです。
和田: 僕も近いものがあります。いきなりJavaやったのも大学にUnixがあったからなんです、研究とかやる都合上。それでGUIのIDEを使ってやる環境もあったんですけど、だんだん面倒臭くなって、そのあたりの頃が分かれ目だったのかもしれません。
前島: 私は社会人になって初めて使った言語がPHPだったので、それがきっかけですね。仕事がきっかけで、そのまま今に至る感じですね。
角谷: コードをちゃんと書いたのって、就職してから。’98年くらいにオブジェクト指向が流行っていたので勉強しようと思ったんだけどよくわからなくて……。そんな時にRubyを動かしたら「なにこれ、超便利!」ってなって、それからRuby厨ですね。
鈴木: 私はなんだろ。会社に入って、Javaの研修を受けてこいって言われ。でも皆が使いだしたらJavaはめんどくさいなと思うようになって……。それでPerl4を書いてたんですけどそろそろなんか違うのやりたいな、って思ってRubyにトライしたんですけど挫折して。その頃Zope(編註:Pythonで書かれたWebサーバー・フレームワークの一種)というのがありまして……、
小山: Zope!? 使ったことあるよー。やっぱりZopeからPython入るんだ。

法林: 話聞いてると、Javaで挫折した人多いですね。
馮: 会場でJavaで挫折した方はどれくらいいらっしゃいますか? おぉ、結構いますね。
鈴木: いや、挫折したわけではないんですけどね。

イベントの収支 ― なるべくトントンを目指している

イベント運営者が抱く2つの疑問
やる気の引き出し方にお金の取り扱い方、運営者であってもどちらも気になる話

和田: ちょっと重たいテーマなんですけど『お金周り』。100人くらいだったら懇親会を設けたり、足りなくなったら肩代わりするとかでなんとかなりますけど、500人、1000人ってなったらみなさんどうしてます? ちなみに、YAPCの場合はJPAっていう法人立てて余剰金をプールしやすくしてるんですが。
法林: LLイベントの場合、財布はJUSが持っていて少々の赤字は大丈夫ですが、方針としてトントンにするというのを目標にしています。あと、スポンサーはとらず、参加費だけで賄える範囲のイベントにするということを基本ポリシーにしてます。
小山: 私もLLのスタッフですけど、スポンサーになりたいという会社は結構あるんです。懇親会や景品でという特例はありますけど、基本お断りしてるんです。企業に頼っていると、不景気になった時にイベントできなくなっちゃうのは嫌だよね、って。
前島: PHPConは参加費貰っていないので、基本的にスポンサーさんのお金でやり繰りしてます。方針的にはやはりトントンになるように考えています。かかる費用は会場と印刷物くらいですし、余らず足りなくならない程度に調整しています。
和田: お金の出し入れをする場所は?
前島: 今はアシアルさんという会社にお世話になってます。
角谷: RubyKaigiでは一般社団法人でお金を管理してます。スポンサー協賛は募集するけど、カンファレンスの運営はそれをアテにしないような設計でやってます。あとお金持っていてもしょうがないので、「なるべくトントンにしようよ」って。

和田: 他の地域でやっているRubyKaigiとかに補助っていうのをしている?
角谷: そうですね。たとえば派遣する講師の交通費を出してあげたりとか。まあできれば独立採算的にお金の管理は各地でやってもらって、こっちは事務的な事を手伝うとか。
和田: JPAも同じことやってますね。地方のPMで開くイベントに、講師を呼びたいっていう申請などあれば。
鈴木: PyConは一般社団法人を作っていて、お金の管理はそこでやってます。やっぱり同じ感じで、イベント単体ではできるだけトントンを目指してます。あんまり余らせてもバランスが良くないよなと思うので。RubyやPerlみたいに地域サポートもやりたいですけど、まだうまくできてなくて、まだ目標段階です。

スタッフとの人数と、その連絡手段は?

Googleスプレッドシート
Googleスプレッドシートって、複数人で同時に編集できたりして、確かに便利ですね

鈴木: 『スタッフは何人くらい?』 イベントスタッフってどれくらいいるのか、そしてどうやりとりしてるのか興味あります。
馮: そうですね、使っているコミュニケーションツールとかも言っていただけたら。
法林: 一番古い(そうでもないか)、LLイベントは今30人くらい。開催日だけな人も含めればもう少しいるかな。やり取りは古くてメーリングリスト(ML)なんですけど、MLだと皆読まなくなってきてるので考えた方がいいなーって最近……。
和田: YAPCは8月末でもう近いんですけど、現状のスタッフは10人弱ですね。じつは僕にとっての初回なので、クオリティーコントロールしたくてまだだいぶ一人で動いてます。でもこれから当日のスタッフを募集するので、+20~30人の予定です。コミュニケーションにMLは全く使ってなくて、Facebookグループを使ってます。メアドを聞くのが面倒だったりするんで。ドキュメント管理は、Google Docsでやってます。
小山: Facebookグループは「いいね!」を押すだけで誰が読んだかわかるのがいいよね。
前島: PHPConはスタッフの数は30人から40人くらい。やり取りは同じでFacebookグループ3,4年使ってます。ファイルもそのFacebookグループにあげるか、Google Docsでやるか、って感じです。
角谷: RubyKaigiの運営スタッフは10人くらいですが、会期中になると当日スタッフを募って30人くらいです。2011年(シーズン1)の1000人規模の時は50人くらいだったんですが、この規模だと大変だなぁと思っていて……。コミュニケーションツールについては、一番偉いのがGitHub Issueで、去年からずっとこれでやってます。
鈴木: PyConはたぶん今30人強のスタッフがいて、コミュニケーションにはSlackっていうチャットツールを使ってます。マスターの情報についてはJIRAのIssue管理でやっています。

法林: LTの時、作業日(Work day)があると言ってましたが、作業日には皆来るんですか?
鈴木: 昨日たまたまやっていて14,5人くらい。毎月やってるんですけど、その前は20人くらい。でも最近はこれだけだとちょっと意思疎通がとれてないので、作業チームごとにミーティングをお願いしています。
和田: エンジニアがイベント業をやると、ExcelやGoogle スプレッドシートの使い方に戸惑って、勉強していく、みたいなことありません?
馮: Google周りは特にそうかもしれませんね。
角谷: Google スプレッドシートはねぇ、「これ便利だね!」って。

運営上の苦労話

試合多い
試合が多くても燃え尽きない秘訣は、「時々休むこと」、「コンプリートしたがる習性を抑えること」。

法林: 『スタッフにやる気を出させるには?』 今の僕の最大の悩みです。あれをやってください、これをやってくださいと言うんだけどやってくれない……。どうしたらいいと思いますか。
鈴木: Issueをすごく書いてます。Issueのいいところは、まず書いた本人に期日を設定してもらえるじゃないですか。だから「約束したよね?」って言いやすい。あとは「作業日」(顔を合わせて手を動かす日)を決めています。
小山: Issue管理って、やっていくとどんどん数が減るじゃないですか。
鈴木: そうそう、気持ち「終わらせてやった!」って。
角谷: 「作業日」いいですよね。作業して、打ち合わせしているうちにいろいろ決めちゃえます。
鈴木: そうなんです。ただ弊害もあります。最近(作業をこなすばかりで)ミーティングをやらないので、前後関係を把握する機会が無くなっちゃうんですよ。そこがトレードオフというか。
小山: 両方それぞれ日を設けては? 頻度は高くなるけど、第2,第4水曜というふうにして毎回決めちゃうと、皆ある程度「その日は予定空けておこう」ってなるので。あと、オンラインだと止まっていたものは、顔を合わせると動き出すってことも。まあ、それでやる気がでるかどうかは人それぞれですよね。
前島: 時間が解決してくれるのを待つしかないかなぁとも思います。「あ、そろそろこれやらないとヤバいんじゃないですか、○○さん」ってFacebookグループで名指しで言ってみるとか。
法林: 経験上、LLプログラマーって、仕事は早いんだけど始めるのがすごく遅いです。その瞬間的な仕事ぶりには感心しますけど……
小山: 僕も法林さんの血圧を高める側だったりもするけど、やってみるとあっという間に終わるんだよねー(笑)

馮: 会場からもちょっと質問を拾ってみましょう。
参加者: 呼んだ人が来なかったり、呼んだら呼んだで大変だったこととかありますか?
和田: 断られることも結構あって、ある方には3年連続で断られてます。それとあと、ドタキャン。
小山: ドタキャンって連絡無しに来ないの?
和田: そういうわけじゃないんですけど、色々あります。事件があったりとか、飛行機トラブルとか、やりとりの時差で決定が遅くなったりとか、英語の問題とか……。
前島: PHPConも結構呼んでる人が多くて毎年苦労するんですけど……。でも割と来てほしい人には来てもらえてますね。
角谷: (飛行機から)降りる降りないで時間がかかってドキドキすることが人によってはありますね。

合同で言語イベントやりたいね

何でもできる!法林: 僕はねー、4年に1回、この言語全部集まってイベントやりたい。
馮: それはなんだか今の感じだと実現しそうですね。
和田: いろんな団体と組みたいけど一つ挙げるならPyConですかね。よく開催日被るので(笑)。逆にRubyKaigiとは組みたくない。だってファンになりかねない(笑)。イベント設計がスゴいですよね。
前島: 組みたいところは、うーんPyCon。開催日がよくかぶりますからね(笑)。
鈴木: 私は、ビッグサイトのあっち側とこっち側みたいな感じでどことでも組んでみたいですね。チケットが一緒で、どっちにも入れるんだけど「両者勝手にやってます」みたいな感じで。
和田: 幕張メッセでやりますか! 合同で、各ホールを占拠して。
鈴木: それ会計担当の人が死ぬと思う(笑)。
馮: 面白そうですねー。このメンバーだったらやろうと思えばできますよ!

といった感じで、舞台裏から運営ノウハウ、苦労話、今後の抱負的なことまで、普段のイベントではまず聞けないであろうレイヤーの話題がたくさん交わされました。それにしてもビッグサイトや幕張メッセのような巨大ホールを占拠した合同イベントが開催されるとなったら、ものずごく興味ありますね。そうしたら、より一層大規模なWi-Fi環境の構築ノウハウなども積まれていくのでしょうか。

ゲストの皆様、ありがとうございました。(マウスカーソルを重ねるとポーズが変わります)

■次回は9/25(木)開催予定

さて、次回TechLION vol.18も既に動き出しています。開催日は9/25(木)で、場所は同じく六本木SuperDeluxe。

ゲストも現時点で既にお二方が予定されています。お一人は、増井俊之先生@慶應大。携帯端末やOSの日本語予測変換システムとしてお世話になった方も多いであろうPOBoxの開発者。もうお一人は寺薗淳也先生@会津大。あの小惑星イトカワへ60億kmものおつかいに行って戻ってきた探査機はやぶさのプロジェクトに関わっていた方です。

まだ増えるかもしれませんよ。とにかく今後のアナウンスに注目していてください。というわけで、次回もお楽しみに!

vol.17報告(2/3)―イベントの看板を背負った実行委員長達の、宣伝LT

TechLION取材班のまつうらです。先週に引き続き、6/26に開催しましたTechLION vol.17のレポートです。

本日のドラ娘
本日のドラ娘 (TechLIONスタッフ高坂さん)

前回は、コミュニティやイベントの歴史、イベント主催者に降りかかる検討課題などを、歩くITイベント大辞典(by 法林GM)こと小山さんに話していただいた第一部をレポートしましたが、第二部はいよいよ4大言語イベント実行委員長が勢揃い。法林GMを交えてトークバトルを繰り広げるわけですが、その前に……。各イベントの看板を背負った皆さんがイベント宣伝LTを繰り広げましたので、今回はその模様(注1)をレポート。各イベントの趣旨をおさらいしながら、この夏・秋の開催概要を予習しましょう。

(注1)このセッションの録画を公開しています。是非こちらもご覧ください。(撮影協力:日本仮想化技術様)

■第二部前半 4大言語イベント主催者LTセッション

いくら貴重なイベントの宣伝とはいえLT形式ですから、時間が来たら容赦なくドラを鳴らさねばなりません。ということでドラ娘もスタンバイ。今回はTechLIONスタッフが務めました。では、よろしくお願いします。

#1 YAPC::Asia Tokyo 2014実行委員長 和田裕介さん

和田裕介さん最初はPerlイベントから。YAPC::Asia Tokyo 2014実行委員長を務める、ゆーすけべーこと和田裕介さんです。(LTのスライド)

本名よりニックネームで知っているという方も多いかもしれませんね。普段はあの「ボケて」というサービスのバックエンドを担当していたり、在宅でWebエンジニアをやっていたり、そしてPerlコミュニティJpan Perl Associationの理事をしているそうです。

YAPCの楽しみ方は一つじゃない

YAPC::Asiaというのは世界中で開かれているPerlカンファレンスの一つ。昨年は1131人もの来場があったという大規模イベントです。

YAPCの“P”はPerlを意味してはいるものの、YAPC::Asiaは必ずしもPerlにこだわるイベントではなくて、今年のトークの中にはGo言語やJava、そして小飼さんSwiftについて話す予定になっていたりするそうです。というのもPerlにはThere Is More Than One Way To Do It!(やり方は一つじゃない)というモットーがあるように、YAPCにはそこから派生した
There Is More Than One Way To Enjoy It!(楽しみ方は一つじゃない)
という考え方があって、そもそも技術者にとってのお祭りの意味合いが強いそうです。

Perlだけに限らない
YAPC::Asiaは必ずしもPerlにこだわるイベントではない

お祭りということなので、ビールも自由に飲んでよく(飲食禁止のホールは除く)、参加者は皆勝手に飲むそうです。また、発表以外にも初心者向けにワークショップをやってみたり、今年はさらに登壇者と観客が盛り上がれるゲリライベントを予定しているらしですよ。(←予定してたらゲリラ的じゃない!)

今年のYAPC::Asia Tokyoは、8/28(木)~8/30(土)、慶應義塾日吉キャンパス開催チケットスポンサー登壇者は只今募集中とのことなので、是非参加しましょう。(なんと今年はLarry Wallもやってきますよ!)

#2 PHPカンファレンス2014実行委員長 前島有貴さん

前島有貴さん次はPHPイベント。PHPカンファレンス2014で実行委員長を務めるゆちみりこと前島有貴さんです。当日のLTで用いたスライドも公開されているので是非そちらもご覧ください。

前島さんはPHP歴7年。まつもとパパの根城である島根出身ですが、Rubyは得意じゃないそうです。PHPコミュニティーのスタッフとしては5年。ドラ娘担当でしたが、そろそろ引退かな……と思っていたらいつの間にか委員長になっていてビックリしたとか。

委員長が燃え尽きてしまうくらい毎年全力開催!

PHPカンファレンス(PHPCon)は、2000年から続いている歴史の長いPHP言語イベント。今年で14回目だそうです。あれ? 毎年開催すると今年は15回目な気がしますが……、実はカンファレンスが終わるとスタッフが燃え尽き、次の年の準備が遅れてしまうのだとか。それはつまりスタッフが全力で取り組むってことですね! ちなみに、燃え尽きるので委員長は毎年変わるそうですよ。

委員長毎年交代
実行委員長は全力を出して燃え尽き、毎年代わる!

PHPConの特徴の一つは、初回以来ずっと参加費無料なこと。費用の安い公共施設を活用し、ノベルティーにもお金をかけず、気軽に参加してもらえるようにしているそうです。また、毎回3つ以上のトラックを並列進行させて、気になるセッションが見つかりやすくもしていて、こういった配慮もあって、毎年1000人近い来場者が訪れるイベントになっています。

気になる今年の内容は、
「知りたい、が あなたを変えていく。」
とちょっと自己啓発的なテーマを掲げていますが詳細は未定だそうです。ただ、過去最大のセッション数(予定)!! 豪華海外ゲスト(予定)!! ということで、期待が高まります。これはやはり燃え尽き覚悟なんでしょうか!?

そんな今年のPHPカンファレンスは10/11(土)、大田区産業プラザPiO開催されます。若い人を呼ぶ秘策を用意しているそうなので、特に若きエンジニアの皆さん、要チェックですよ!

#3 RubyKaigi 2014実行委員長 角谷信太郎さん

角谷信太郎さん三番目はRubyイベント。現在のRubykaigi実行委員長を務める角谷信太郎さんです。個人事業主として活動する傍ら、日本Rubyの会の理事をされています。

「電車で行ける、海外のカンファレンス」を目指す

RubyKaigiは日本のRubyコミュニティのイベントです。しかしRubyKaigiといえば、TechLION vol.2にて、高橋征義さんがRubyKaigiを終わらせるという話をしていました。当時の話によれば、いつの間にか自分達の想像以上に規模が大きくなって限界を感じたということでしたが、「このままでは燃え尽きるどころか、焼け死んでしまう」という危機感があり、一回休んでから昨年「シーズン2」として再スタートしたそうです。

RubyKaigi2014
海外Rubyカンファレンスとまつもとさんの取り合いが起こる!

RubyKaigiシーズン2のコンセプトは、
「パスポートも時差も無し、電車で行ける海外カンファレンスっぽいもの」
だそうです。曜日は木金土と普通に平日にかぶらせたり、参加費も1万8000円くらいにしてきちんとしたカンファレンスが開催できるようにしたり。そして大きな特徴は、海外から訪れた登壇者(英語)に通訳を付けず、逆に日本語の登壇者には英語への通訳を付けるという点だそうです。海外カンファレンス的にしたいけど、まつもとさんが日本の方とあって国内の方が話題が豊富なこともあり、また海外の人に対しても「日本のカンファレンスはこんな雰囲気」ということを伝えたくて、日本でこういう形のカンファレンスを開くことにしたそうです。

ちなみに、このように世界を意識したカンファレンスなため、日程かぶり問題も国際的。他地域とかぶらないようにするのが大変だそうですよ。かぶるとまつもとさんの取り合いになりますし……

今年のRubyKaigi 2014は9/18(木)~9/20(土)、江戸川区のタワーホール船堀開催されます。お祭り的なイベントとはまた違う、国際的な「会議」の雰囲気が、海外渡航費用無しで味わえるのはとても貴重ですね。(スポンサーも募集中)

#4 PyCon JP 2014 Chair(座長) 鈴木たかのりさん

鈴木たかのりさん最後はPythonイベントから。PyCon JP 2014のChairを務める鈴木たかのりさんです。当日のLTスライドも公開されていますので是非ご覧ください。

Rediscover with Python (パイソンで再発見)

PyConというのはその名のとおりPythonのカンファレンスですが、世界中で開催されているそうです。スライドで紹介されていた開催地図にあるピンの数を数えると、30本も立ってますね。日本におけるPyConの歴史は2010年、シンガポールのPyConに参加したメンバー4人が食事をしながら「PyConやりたいねー、日本でも」という話になったことがきっかけだったそうで、2011年から毎年PyCon JPが開催されるようになりました。

PyCon in the world
PyConは、世界各地のコミュニティーによって自由に開かれている

3年目の今年のPyCon JPは、
「Rediscover with Python(Pythonで再発見)」
がテーマ。Pythonがきっかけで再発見したこと、Python自身の再発見などの講演を広く募っているそうです(もちろんその他も)。キーノート(基調講演)には、有名なrequestsモジュール原作者のKennethさんと、「コーディングを支える技術」の著者西尾さんが登壇予定。

カンファレンスがメインではあるものの、初日には入門者向けのチュートリアルが設定されていますし、最終日にはDevelopment Sprintと題したハッカソン的なイベント(無料)も用意されているそうです。

PyCon JP 2014は、9/12(金)~9/15(月・祝)、東京台場の東京国際交流館プラザ平成開催予定。明日(この記事の公開翌日の7/10)までに申し込むと7,500円で参加できるそうですので(以降は10,000円)、興味はあるけどPythonってまだよくわからないという人も安心。気軽に参加しましょう。(演題スポンサーも募集中)

次回はいよいよ4大イベント実行委員長トークバトル

イベントの予習はできましたか? 幸いにして、今年はどれも日程かぶりは(LLイベントも含めて)起こりませんでしたので、今年の後半は忙しくなりますね!

さて、次回はいよいよ4大言語イベント実行委員長にLLイベントの法林GMも混じえてのトークバトル。舞台裏の話や興味深いノウハウの話が、いろいろと飛び交うことでしょう。

次回もお楽しみに。

vol.12報告(1/2)―小飼弾「PerlってLISPだったの!?」その衝撃も学生時代の出会いから

@dankogaiこんにちは、USP MAGAZINEまつうらです。今年も新年度を迎えましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。私はあまり実感がないんですよね。新人と呼ばれたのもだいぶ昔ですし、どこか別の部署に異動して新しい人や環境と出会う……などということもなく、思えば平凡な日々になってしまっております。

しかし、今回のTechLION vol.12は、そんなふうにしてある意味日々に対する感覚の鈍っていた私などにとっては、ちょっとハッとするトークが聴けた回でした。テーマは「出会い」なのですが、よくあるミーハーなものを想像していたとしたら大変に勿体ない!そこはやはりTechLION、深いです。深いうえに、語られる出会いエピソードもエンジニアならではのオチがついているという……。

さて、前置きはこれくらいにして、今回もレポートをご覧ください。まずは前半戦の様子から。尚、当日の録画(1部2部3部エンディング)も視聴可ですので、併せてご覧ください。(撮影協力:日本仮想化技術様)

■第一部 獅子王たちの夕べ(小飼弾氏)

小飼弾さん第一部はメインゲストを迎えて大いに語ってもらうセッションですが、本日のメインゲストはダンコーガイこと小飼弾さん。Perlの雄、また404 Blog Not Foundを運営するアルファブロガーとしても知られ、そして名前に負けない弾丸トークの主。

今回のトークに明確なタイトルは付けられませんでしたが、全体を通してのキーワードは「出会い」、そしてもう一つ、意外かもしれませんがコンピューター言語“LISP”だったように思います。

以下、弾さんの発言を要約してレポートします……

社会人は、出会いがお膳立てされない

「出会い」というテーマをいただいたんですけども、今日は新社会人の方ってどれくらいいらっしゃいますか?……あれ、意外と少ないですね。実は今日温めてきたのは、「社会人と学生の一番の違いはどこか」ということで、それは「社会人は、出会いをお膳立てしてもらえない」という話なんです。

学生の頃だと例えばクラス替えとかで新しい人と出会ったりします。そうやって出会いを演出されているんですが、そうであることに気付かない程、学生というのはたくさんの出会いをお膳立てされているんですね。でもそういった出会いというのは、何も「人と人との出会い」だけじゃないというのが今日の本題です。

あなたはどこで出会った?今使っているその言語に

Fizz Buzz with Perl6
Perl6で”Fizz Buzz”を解く(右はRuby2.0による結果がまだ残っている)

それじゃここで、有名なFizz Buzzをやってみましょう。入社試験とかではこの「Fizz Buzzが2分以内で書けないとプログラマーとして失格」みたいですけど、まぁそれは置いといて……。

まずはPostScriptで……。はい、PostScriptでプログラム書いてる人は?……あれ、いませんか。じゃあメジャーどころのRuby 2.0でやってみましょう。……えーとそれから、僕はPerlの人として紹介されるみたいなので、じゃあ今度はPerl6で。……あとはPython 3.2。で、それからCで……、Brainf*ckで……

……と、数ある言語のほんの一部を紹介しましたが、じゃああなたは、今使っている言語とどこで出会いましたか?会場の方に何人か聞いてみましょう。

観戦者Aさん「大学1,2年の頃、JavaCに、プログラミングとは何ぞやという状態で出会いました。それで今は、それらで仕事してます」

者Bさん「会社に入る前に自習しておこうと、本屋でJava入門という本を見つけたのが言語との出会いでした」

者Cさん(実はスタッフ)「今仕事で使うのはCPythonAWKシェルスクリプトですが、初めてはC++Pascalで、大学一年の時に触りました」

者Dさん「出会ったのはC言語。大学院生の頃に石田晴久先生の『UNIX入門』を読みながらVAX 11/730を、まだ助手だった村井純という人に弄らせてもらっていました。その前はFortranとか、メインフレームのVOS3系のコマンドプロシージャとか」

観覧者Eことmasuidriveさんうーん、なるほど。もう一例いってみましょうかね。ではこの中に「私の触った言語にはevalがある」という人はいませんか?

者E(実はvol.10ゲストmasuidrive)さん「僕はMSXZ80 アセンブリです。あれはバイトコードをプログラム内に置いておけばevalができます。メモリが64KBと少ないから、そうやって自己書き換えしないと規模の大きいアプリが書けなかったんで……」

おいおい!そっちの方に来たかよぉぉぉー! まぁそれはそうだなぁ……。BASICもPEEKとPOKE命令だけ使って実質アセンブリでできるし……って、こんなに変態ばかりが観客だなんて聞いてないぞ(笑)

僕の言語との出会い

ブライアン・ハーヴェイ氏のWebページ
学生時代に授業を履修していたというブライアン・ハーヴェイ氏のWebページ

なんでこんな質問したかっていうと、「果たして僕は、学校に通ってなかったらこういうものと出会えただろうか?」って思うんです。学生の頃、ブライアン・ハーヴェイという先生の下でSchemeというLISPの方言を習ったんですけど、それに出会わなかったら僕は今「PHP最高」とか言ってたんじゃないかなぁ。

僕は元々コンピューターサイエンス専攻じゃなかったんですよ。最初の専攻は生化学だったんですけど、あまりにもつまらなくて文句言ったんです。そしたら「じゃあお前、こっち来い」って言われて習ったのがさっきのあれで……。そこではCアセンブリをやらされて、最後はMIPSのエミュレーターを書かされたんです。このクラスも今はPythonになってしまったのが残念なんですけど……

何が残念って、こういう言語に外で出会う機会ってあんまりないと思うんですよね。こういっちゃ何ですけど、PythonPerlあたりって、特にコンピューターサイエンスを習おうと思わなくても出会えると思うんですよね。つまり出会いを演出されなくてもわりと自然に使う言語なんですよ。

結局、僕に言語との出会いを演出したのは大学だった

僕の仕事は、言語の美しさがどうのこうのとか重要ではなくて、純粋に仕事をやっつけられればよかったんです。それで気が付いた頃にはPerlで仕事してたんですが、最初にPerl5を見た時はビックリしましたよ。「なんだこの矢印は。なんだよ”use strict”って。フザケんな!」と。

ところが、チャーチ数をPerlで書けるということを知って、Perlが単なるお仕事やっつけ言語じゃないかも、って気が付かされたんです。「待てよ、PerlってLISPだったの!?」くらいの衝撃でした。ちなみに、Jcode.pmは仕事やっつけ言語として使っている時に、作ったものだったんですけどね。それでその頃堀江さんに襟首掴まれてオン・ザ・エッヂで仕事したりで……。

だから今振り返っても、実は出会いを演出してくれたのって大学だったんです。その頃にあのカッコだらけのヘンな言語(=LISP)に出会わなければ、こういった話というのも無かったんじゃないかなって思うんです。ホント、大人になってから純粋に「出会う」っていうのは難しいんですよね。皆さんも薄々感じているとは思うんですが、それはむしろキツいんですね。社会人の今から、まるで別のパラダイムの言語に出会うというのは本当に難しいことで。もちろん大人になってからも出会いというのはあるんですけど、もう学校とか親戚とかがお膳立てしてくれはしないので自分で積極的に出会いにいかないといけないんです。

「機会」というものを逃さないで!

Haskell Tシャツ
この日、弾さんが着ていたTシャツはHaskellだった

僕が今着てるTシャツはHaskellなんですけど、僕はオードリー・タングという友人に紹介されて知り、感銘を受けました。LISPも一応関数型言語なんですけど、スペシャルフォームっていうある意味ズルい仕組みでifやforを実現してたんです。遅延評価の概念を実装すればそんなもの要らないことはわかってたのにLISPはそれを長年サボってて……。でもHaskellはそれを本気で実装し、きっちりした関数型言語になってたんです。これはLISPをマジメに勉強していた人ほど衝撃的だと思います。こういった言語も今なら気の利いた学校へ行けば教えてくれるでしょうけど、社会人になると例え見知っても、感銘を受け、つまり真の意味で出会える機会なんてホントにないんですよ。

というわけで、今日は新社会人の方々に、「機会というものを逃さないでくださいよ」って言って、オチをつけるつもりだったんですが……。今日の皆さんは既に相当ご存知ですね(笑)

◇ ◇ ◇

小飼弾さん、ありがとうございました。新社会人じゃありませんが、私にもそのメッセージ、響きました。毎年この時期、街中で卒業生や新入生を見かける度、「あの頃はいろんなイベントがあったけど、社会人になってしまえば以後そういうのが途端に減ってしまって寂しいものだ」なんて思ってました。が、「寂しい」などと言ってないで、私も積極的に機会を見つけに行かなきゃ、と、トークを聴いて思いました。

さて、この後は2組のITカップルを迎えての後半戦へと移るのですが、そのレポートはまた次回に……。どうぞご期待ください。