vol.17報告(3/3)―言語イベント運営者座談会。舞台裏、ノウハウ、苦労話など話題は尽きぬ

TechLION取材班のまつうらです。6/26(木)に都内で開催しましたTechLION vol.17のレポート最終回をお送りします。(レポートその1その2はこちら)

LL TimeLines
vol17開演時、Twitter上でもツイートバトルが繰り広げられていた!?

今回のテーマは言語イベント。ステージ上では各種LLのキーマン達によるトークバトルが繰り広げられていましたが、実は場外でも密かにトークバトル(?)が繰り広げられていたことに気が付きましたか? TechLIONではいつもステージ横で、観戦者がつぶやくツイートをリアルタイム中継していますが、今回は4言語がキーワードとして含まれるツイートを、それぞれのタイムラインで追跡。これによりどの言語が最も盛り上がっているかを中継していたのです。

それでは、あたかも4大言語イベントの第0日のようになったトークの模様(注1)を、ダイジェストでご覧ください。

(注1)このセッションの録画を公開しています。是非こちらもご覧ください。(撮影協力:日本仮想化技術様)

■第二部後半 「LLとコミュニティの過去・現在・未来」座談会

4大+1言語イベント運営者勢揃い二部後半はこんな感じ(写真)で、4大言語イベント実行委員長に加え、LLイベント運営者の一人ということで法林GMもパネリストとして参戦。馮P一人になってしまったMC側には、第一部のゲスト小山さんが代打で加わるという、TechLION史上初の展開で進行。

出された質問への回答をボードに書きつつ発表するといういわゆる大喜利形式にて、イベント運営者視点での舞台裏話や運営ノウハウ、悩みなどなどが語り合われる座談会となりました。

最初に触れた言語と、今の言語への出会いは?

運営者達が最初に触れた言語
今各言語イベントを仕切る運営者達も、最初に触れた言語はそれぞれ違う

馮P: ではまず無難なところで、「初めて触ったプログラミング言語」を聞いてみたいなと思います。ちなみに小山さんは?
小山さん: 私は最初BASICですね。名前何だったかなぁ。
法林GM: 『中学1年 PC-8001のBASIC』 これはうちの親が「これからはコンピューターの時代だ」といって、泊り込みのパソコンセミナーに僕を参加させたんです。
和田さん: 『JAVA』 僕はJavaですね。大学2年の情報処理の授業で。その時の課題でゲームを作ろうということになって「ジャバシックパーク」というのを作りました。話が進むと、恐竜になるか、ダメな恐竜になるか、不良恐竜になるか、という(笑)。
前島さん: 『C++ 16-17(歳)』たぶんC++、もしくはJavaだったと思うんです。高専の授業で。でも全然真面目に勉強してなくって、あんまり触ってないですけど。
角谷さん: 『N88-BASICだと思う』 記憶が定かじゃないんだけど、母親の実家に帰省したら、離れに叔父さんのヤバい部屋があって。ゲームがしたい一心でベーマガのリスト打ち込んで……。
鈴木さん: 『FORTRAN』 私も高専の1年か2年の時にやったんですけど、世代の違いがすごいなあと。C++なんて存在していない頃ですよ。
法林: やっぱり世代の差は感じますね。初めてがJavaとか、いくつですかって感じですよ。
和田: でもJavaわかんなかったですけどねえ。わからなくて、Cで作るとかのほうが面白かったですね。

出会いに関する質問
言語との出会いのみならず、イベントはまた別の出会いももたらすみたいです

馮: 今、みなさん別の言語のイベントを仕切られているわけですが、言語のチェンジってどのタイミングであったんですか。
法林: 僕の場合は大学3年の時、学科にUnixが入ってきて、シェルを触った時に変わりました。僕のLLイベントにつながる原点はそこで、LLの精神の一つでもあると思うんです。
和田: 僕も近いものがあります。いきなりJavaやったのも大学にUnixがあったからなんです、研究とかやる都合上。それでGUIのIDEを使ってやる環境もあったんですけど、だんだん面倒臭くなって、そのあたりの頃が分かれ目だったのかもしれません。
前島: 私は社会人になって初めて使った言語がPHPだったので、それがきっかけですね。仕事がきっかけで、そのまま今に至る感じですね。
角谷: コードをちゃんと書いたのって、就職してから。’98年くらいにオブジェクト指向が流行っていたので勉強しようと思ったんだけどよくわからなくて……。そんな時にRubyを動かしたら「なにこれ、超便利!」ってなって、それからRuby厨ですね。
鈴木: 私はなんだろ。会社に入って、Javaの研修を受けてこいって言われ。でも皆が使いだしたらJavaはめんどくさいなと思うようになって……。それでPerl4を書いてたんですけどそろそろなんか違うのやりたいな、って思ってRubyにトライしたんですけど挫折して。その頃Zope(編註:Pythonで書かれたWebサーバー・フレームワークの一種)というのがありまして……、
小山: Zope!? 使ったことあるよー。やっぱりZopeからPython入るんだ。

法林: 話聞いてると、Javaで挫折した人多いですね。
馮: 会場でJavaで挫折した方はどれくらいいらっしゃいますか? おぉ、結構いますね。
鈴木: いや、挫折したわけではないんですけどね。

イベントの収支 ― なるべくトントンを目指している

イベント運営者が抱く2つの疑問
やる気の引き出し方にお金の取り扱い方、運営者であってもどちらも気になる話

和田: ちょっと重たいテーマなんですけど『お金周り』。100人くらいだったら懇親会を設けたり、足りなくなったら肩代わりするとかでなんとかなりますけど、500人、1000人ってなったらみなさんどうしてます? ちなみに、YAPCの場合はJPAっていう法人立てて余剰金をプールしやすくしてるんですが。
法林: LLイベントの場合、財布はJUSが持っていて少々の赤字は大丈夫ですが、方針としてトントンにするというのを目標にしています。あと、スポンサーはとらず、参加費だけで賄える範囲のイベントにするということを基本ポリシーにしてます。
小山: 私もLLのスタッフですけど、スポンサーになりたいという会社は結構あるんです。懇親会や景品でという特例はありますけど、基本お断りしてるんです。企業に頼っていると、不景気になった時にイベントできなくなっちゃうのは嫌だよね、って。
前島: PHPConは参加費貰っていないので、基本的にスポンサーさんのお金でやり繰りしてます。方針的にはやはりトントンになるように考えています。かかる費用は会場と印刷物くらいですし、余らず足りなくならない程度に調整しています。
和田: お金の出し入れをする場所は?
前島: 今はアシアルさんという会社にお世話になってます。
角谷: RubyKaigiでは一般社団法人でお金を管理してます。スポンサー協賛は募集するけど、カンファレンスの運営はそれをアテにしないような設計でやってます。あとお金持っていてもしょうがないので、「なるべくトントンにしようよ」って。

和田: 他の地域でやっているRubyKaigiとかに補助っていうのをしている?
角谷: そうですね。たとえば派遣する講師の交通費を出してあげたりとか。まあできれば独立採算的にお金の管理は各地でやってもらって、こっちは事務的な事を手伝うとか。
和田: JPAも同じことやってますね。地方のPMで開くイベントに、講師を呼びたいっていう申請などあれば。
鈴木: PyConは一般社団法人を作っていて、お金の管理はそこでやってます。やっぱり同じ感じで、イベント単体ではできるだけトントンを目指してます。あんまり余らせてもバランスが良くないよなと思うので。RubyやPerlみたいに地域サポートもやりたいですけど、まだうまくできてなくて、まだ目標段階です。

スタッフとの人数と、その連絡手段は?

Googleスプレッドシート
Googleスプレッドシートって、複数人で同時に編集できたりして、確かに便利ですね

鈴木: 『スタッフは何人くらい?』 イベントスタッフってどれくらいいるのか、そしてどうやりとりしてるのか興味あります。
馮: そうですね、使っているコミュニケーションツールとかも言っていただけたら。
法林: 一番古い(そうでもないか)、LLイベントは今30人くらい。開催日だけな人も含めればもう少しいるかな。やり取りは古くてメーリングリスト(ML)なんですけど、MLだと皆読まなくなってきてるので考えた方がいいなーって最近……。
和田: YAPCは8月末でもう近いんですけど、現状のスタッフは10人弱ですね。じつは僕にとっての初回なので、クオリティーコントロールしたくてまだだいぶ一人で動いてます。でもこれから当日のスタッフを募集するので、+20~30人の予定です。コミュニケーションにMLは全く使ってなくて、Facebookグループを使ってます。メアドを聞くのが面倒だったりするんで。ドキュメント管理は、Google Docsでやってます。
小山: Facebookグループは「いいね!」を押すだけで誰が読んだかわかるのがいいよね。
前島: PHPConはスタッフの数は30人から40人くらい。やり取りは同じでFacebookグループ3,4年使ってます。ファイルもそのFacebookグループにあげるか、Google Docsでやるか、って感じです。
角谷: RubyKaigiの運営スタッフは10人くらいですが、会期中になると当日スタッフを募って30人くらいです。2011年(シーズン1)の1000人規模の時は50人くらいだったんですが、この規模だと大変だなぁと思っていて……。コミュニケーションツールについては、一番偉いのがGitHub Issueで、去年からずっとこれでやってます。
鈴木: PyConはたぶん今30人強のスタッフがいて、コミュニケーションにはSlackっていうチャットツールを使ってます。マスターの情報についてはJIRAのIssue管理でやっています。

法林: LTの時、作業日(Work day)があると言ってましたが、作業日には皆来るんですか?
鈴木: 昨日たまたまやっていて14,5人くらい。毎月やってるんですけど、その前は20人くらい。でも最近はこれだけだとちょっと意思疎通がとれてないので、作業チームごとにミーティングをお願いしています。
和田: エンジニアがイベント業をやると、ExcelやGoogle スプレッドシートの使い方に戸惑って、勉強していく、みたいなことありません?
馮: Google周りは特にそうかもしれませんね。
角谷: Google スプレッドシートはねぇ、「これ便利だね!」って。

運営上の苦労話

試合多い
試合が多くても燃え尽きない秘訣は、「時々休むこと」、「コンプリートしたがる習性を抑えること」。

法林: 『スタッフにやる気を出させるには?』 今の僕の最大の悩みです。あれをやってください、これをやってくださいと言うんだけどやってくれない……。どうしたらいいと思いますか。
鈴木: Issueをすごく書いてます。Issueのいいところは、まず書いた本人に期日を設定してもらえるじゃないですか。だから「約束したよね?」って言いやすい。あとは「作業日」(顔を合わせて手を動かす日)を決めています。
小山: Issue管理って、やっていくとどんどん数が減るじゃないですか。
鈴木: そうそう、気持ち「終わらせてやった!」って。
角谷: 「作業日」いいですよね。作業して、打ち合わせしているうちにいろいろ決めちゃえます。
鈴木: そうなんです。ただ弊害もあります。最近(作業をこなすばかりで)ミーティングをやらないので、前後関係を把握する機会が無くなっちゃうんですよ。そこがトレードオフというか。
小山: 両方それぞれ日を設けては? 頻度は高くなるけど、第2,第4水曜というふうにして毎回決めちゃうと、皆ある程度「その日は予定空けておこう」ってなるので。あと、オンラインだと止まっていたものは、顔を合わせると動き出すってことも。まあ、それでやる気がでるかどうかは人それぞれですよね。
前島: 時間が解決してくれるのを待つしかないかなぁとも思います。「あ、そろそろこれやらないとヤバいんじゃないですか、○○さん」ってFacebookグループで名指しで言ってみるとか。
法林: 経験上、LLプログラマーって、仕事は早いんだけど始めるのがすごく遅いです。その瞬間的な仕事ぶりには感心しますけど……
小山: 僕も法林さんの血圧を高める側だったりもするけど、やってみるとあっという間に終わるんだよねー(笑)

馮: 会場からもちょっと質問を拾ってみましょう。
参加者: 呼んだ人が来なかったり、呼んだら呼んだで大変だったこととかありますか?
和田: 断られることも結構あって、ある方には3年連続で断られてます。それとあと、ドタキャン。
小山: ドタキャンって連絡無しに来ないの?
和田: そういうわけじゃないんですけど、色々あります。事件があったりとか、飛行機トラブルとか、やりとりの時差で決定が遅くなったりとか、英語の問題とか……。
前島: PHPConも結構呼んでる人が多くて毎年苦労するんですけど……。でも割と来てほしい人には来てもらえてますね。
角谷: (飛行機から)降りる降りないで時間がかかってドキドキすることが人によってはありますね。

合同で言語イベントやりたいね

何でもできる!法林: 僕はねー、4年に1回、この言語全部集まってイベントやりたい。
馮: それはなんだか今の感じだと実現しそうですね。
和田: いろんな団体と組みたいけど一つ挙げるならPyConですかね。よく開催日被るので(笑)。逆にRubyKaigiとは組みたくない。だってファンになりかねない(笑)。イベント設計がスゴいですよね。
前島: 組みたいところは、うーんPyCon。開催日がよくかぶりますからね(笑)。
鈴木: 私は、ビッグサイトのあっち側とこっち側みたいな感じでどことでも組んでみたいですね。チケットが一緒で、どっちにも入れるんだけど「両者勝手にやってます」みたいな感じで。
和田: 幕張メッセでやりますか! 合同で、各ホールを占拠して。
鈴木: それ会計担当の人が死ぬと思う(笑)。
馮: 面白そうですねー。このメンバーだったらやろうと思えばできますよ!

といった感じで、舞台裏から運営ノウハウ、苦労話、今後の抱負的なことまで、普段のイベントではまず聞けないであろうレイヤーの話題がたくさん交わされました。それにしてもビッグサイトや幕張メッセのような巨大ホールを占拠した合同イベントが開催されるとなったら、ものずごく興味ありますね。そうしたら、より一層大規模なWi-Fi環境の構築ノウハウなども積まれていくのでしょうか。

ゲストの皆様、ありがとうございました。(マウスカーソルを重ねるとポーズが変わります)

■次回は9/25(木)開催予定

さて、次回TechLION vol.18も既に動き出しています。開催日は9/25(木)で、場所は同じく六本木SuperDeluxe。

ゲストも現時点で既にお二方が予定されています。お一人は、増井俊之先生@慶應大。携帯端末やOSの日本語予測変換システムとしてお世話になった方も多いであろうPOBoxの開発者。もうお一人は寺薗淳也先生@会津大。あの小惑星イトカワへ60億kmものおつかいに行って戻ってきた探査機はやぶさのプロジェクトに関わっていた方です。

まだ増えるかもしれませんよ。とにかく今後のアナウンスに注目していてください。というわけで、次回もお楽しみに!

vol.17報告(2/3)―イベントの看板を背負った実行委員長達の、宣伝LT

TechLION取材班のまつうらです。先週に引き続き、6/26に開催しましたTechLION vol.17のレポートです。

本日のドラ娘
本日のドラ娘 (TechLIONスタッフ高坂さん)

前回は、コミュニティやイベントの歴史、イベント主催者に降りかかる検討課題などを、歩くITイベント大辞典(by 法林GM)こと小山さんに話していただいた第一部をレポートしましたが、第二部はいよいよ4大言語イベント実行委員長が勢揃い。法林GMを交えてトークバトルを繰り広げるわけですが、その前に……。各イベントの看板を背負った皆さんがイベント宣伝LTを繰り広げましたので、今回はその模様(注1)をレポート。各イベントの趣旨をおさらいしながら、この夏・秋の開催概要を予習しましょう。

(注1)このセッションの録画を公開しています。是非こちらもご覧ください。(撮影協力:日本仮想化技術様)

■第二部前半 4大言語イベント主催者LTセッション

いくら貴重なイベントの宣伝とはいえLT形式ですから、時間が来たら容赦なくドラを鳴らさねばなりません。ということでドラ娘もスタンバイ。今回はTechLIONスタッフが務めました。では、よろしくお願いします。

#1 YAPC::Asia Tokyo 2014実行委員長 和田裕介さん

和田裕介さん最初はPerlイベントから。YAPC::Asia Tokyo 2014実行委員長を務める、ゆーすけべーこと和田裕介さんです。(LTのスライド)

本名よりニックネームで知っているという方も多いかもしれませんね。普段はあの「ボケて」というサービスのバックエンドを担当していたり、在宅でWebエンジニアをやっていたり、そしてPerlコミュニティJpan Perl Associationの理事をしているそうです。

YAPCの楽しみ方は一つじゃない

YAPC::Asiaというのは世界中で開かれているPerlカンファレンスの一つ。昨年は1131人もの来場があったという大規模イベントです。

YAPCの“P”はPerlを意味してはいるものの、YAPC::Asiaは必ずしもPerlにこだわるイベントではなくて、今年のトークの中にはGo言語やJava、そして小飼さんSwiftについて話す予定になっていたりするそうです。というのもPerlにはThere Is More Than One Way To Do It!(やり方は一つじゃない)というモットーがあるように、YAPCにはそこから派生した
There Is More Than One Way To Enjoy It!(楽しみ方は一つじゃない)
という考え方があって、そもそも技術者にとってのお祭りの意味合いが強いそうです。

Perlだけに限らない
YAPC::Asiaは必ずしもPerlにこだわるイベントではない

お祭りということなので、ビールも自由に飲んでよく(飲食禁止のホールは除く)、参加者は皆勝手に飲むそうです。また、発表以外にも初心者向けにワークショップをやってみたり、今年はさらに登壇者と観客が盛り上がれるゲリライベントを予定しているらしですよ。(←予定してたらゲリラ的じゃない!)

今年のYAPC::Asia Tokyoは、8/28(木)~8/30(土)、慶應義塾日吉キャンパス開催チケットスポンサー登壇者は只今募集中とのことなので、是非参加しましょう。(なんと今年はLarry Wallもやってきますよ!)

#2 PHPカンファレンス2014実行委員長 前島有貴さん

前島有貴さん次はPHPイベント。PHPカンファレンス2014で実行委員長を務めるゆちみりこと前島有貴さんです。当日のLTで用いたスライドも公開されているので是非そちらもご覧ください。

前島さんはPHP歴7年。まつもとパパの根城である島根出身ですが、Rubyは得意じゃないそうです。PHPコミュニティーのスタッフとしては5年。ドラ娘担当でしたが、そろそろ引退かな……と思っていたらいつの間にか委員長になっていてビックリしたとか。

委員長が燃え尽きてしまうくらい毎年全力開催!

PHPカンファレンス(PHPCon)は、2000年から続いている歴史の長いPHP言語イベント。今年で14回目だそうです。あれ? 毎年開催すると今年は15回目な気がしますが……、実はカンファレンスが終わるとスタッフが燃え尽き、次の年の準備が遅れてしまうのだとか。それはつまりスタッフが全力で取り組むってことですね! ちなみに、燃え尽きるので委員長は毎年変わるそうですよ。

委員長毎年交代
実行委員長は全力を出して燃え尽き、毎年代わる!

PHPConの特徴の一つは、初回以来ずっと参加費無料なこと。費用の安い公共施設を活用し、ノベルティーにもお金をかけず、気軽に参加してもらえるようにしているそうです。また、毎回3つ以上のトラックを並列進行させて、気になるセッションが見つかりやすくもしていて、こういった配慮もあって、毎年1000人近い来場者が訪れるイベントになっています。

気になる今年の内容は、
「知りたい、が あなたを変えていく。」
とちょっと自己啓発的なテーマを掲げていますが詳細は未定だそうです。ただ、過去最大のセッション数(予定)!! 豪華海外ゲスト(予定)!! ということで、期待が高まります。これはやはり燃え尽き覚悟なんでしょうか!?

そんな今年のPHPカンファレンスは10/11(土)、大田区産業プラザPiO開催されます。若い人を呼ぶ秘策を用意しているそうなので、特に若きエンジニアの皆さん、要チェックですよ!

#3 RubyKaigi 2014実行委員長 角谷信太郎さん

角谷信太郎さん三番目はRubyイベント。現在のRubykaigi実行委員長を務める角谷信太郎さんです。個人事業主として活動する傍ら、日本Rubyの会の理事をされています。

「電車で行ける、海外のカンファレンス」を目指す

RubyKaigiは日本のRubyコミュニティのイベントです。しかしRubyKaigiといえば、TechLION vol.2にて、高橋征義さんがRubyKaigiを終わらせるという話をしていました。当時の話によれば、いつの間にか自分達の想像以上に規模が大きくなって限界を感じたということでしたが、「このままでは燃え尽きるどころか、焼け死んでしまう」という危機感があり、一回休んでから昨年「シーズン2」として再スタートしたそうです。

RubyKaigi2014
海外Rubyカンファレンスとまつもとさんの取り合いが起こる!

RubyKaigiシーズン2のコンセプトは、
「パスポートも時差も無し、電車で行ける海外カンファレンスっぽいもの」
だそうです。曜日は木金土と普通に平日にかぶらせたり、参加費も1万8000円くらいにしてきちんとしたカンファレンスが開催できるようにしたり。そして大きな特徴は、海外から訪れた登壇者(英語)に通訳を付けず、逆に日本語の登壇者には英語への通訳を付けるという点だそうです。海外カンファレンス的にしたいけど、まつもとさんが日本の方とあって国内の方が話題が豊富なこともあり、また海外の人に対しても「日本のカンファレンスはこんな雰囲気」ということを伝えたくて、日本でこういう形のカンファレンスを開くことにしたそうです。

ちなみに、このように世界を意識したカンファレンスなため、日程かぶり問題も国際的。他地域とかぶらないようにするのが大変だそうですよ。かぶるとまつもとさんの取り合いになりますし……

今年のRubyKaigi 2014は9/18(木)~9/20(土)、江戸川区のタワーホール船堀開催されます。お祭り的なイベントとはまた違う、国際的な「会議」の雰囲気が、海外渡航費用無しで味わえるのはとても貴重ですね。(スポンサーも募集中)

#4 PyCon JP 2014 Chair(座長) 鈴木たかのりさん

鈴木たかのりさん最後はPythonイベントから。PyCon JP 2014のChairを務める鈴木たかのりさんです。当日のLTスライドも公開されていますので是非ご覧ください。

Rediscover with Python (パイソンで再発見)

PyConというのはその名のとおりPythonのカンファレンスですが、世界中で開催されているそうです。スライドで紹介されていた開催地図にあるピンの数を数えると、30本も立ってますね。日本におけるPyConの歴史は2010年、シンガポールのPyConに参加したメンバー4人が食事をしながら「PyConやりたいねー、日本でも」という話になったことがきっかけだったそうで、2011年から毎年PyCon JPが開催されるようになりました。

PyCon in the world
PyConは、世界各地のコミュニティーによって自由に開かれている

3年目の今年のPyCon JPは、
「Rediscover with Python(Pythonで再発見)」
がテーマ。Pythonがきっかけで再発見したこと、Python自身の再発見などの講演を広く募っているそうです(もちろんその他も)。キーノート(基調講演)には、有名なrequestsモジュール原作者のKennethさんと、「コーディングを支える技術」の著者西尾さんが登壇予定。

カンファレンスがメインではあるものの、初日には入門者向けのチュートリアルが設定されていますし、最終日にはDevelopment Sprintと題したハッカソン的なイベント(無料)も用意されているそうです。

PyCon JP 2014は、9/12(金)~9/15(月・祝)、東京台場の東京国際交流館プラザ平成開催予定。明日(この記事の公開翌日の7/10)までに申し込むと7,500円で参加できるそうですので(以降は10,000円)、興味はあるけどPythonってまだよくわからないという人も安心。気軽に参加しましょう。(演題スポンサーも募集中)

次回はいよいよ4大イベント実行委員長トークバトル

イベントの予習はできましたか? 幸いにして、今年はどれも日程かぶりは(LLイベントも含めて)起こりませんでしたので、今年の後半は忙しくなりますね!

さて、次回はいよいよ4大言語イベント実行委員長にLLイベントの法林GMも混じえてのトークバトル。舞台裏の話や興味深いノウハウの話が、いろいろと飛び交うことでしょう。

次回もお楽しみに。

vol.17報告(1/3)―イベントの一般化は我々が15年くらいかけて獲得してきたこと

TechLION取材班のまつうらです。今週そして来週のブログは、6/26に開催したTechLION vol.17のレポートをお届けします。

歩くOSSコミュニティ・イベントの生き字引(?)
「歩くOSSコミュニティ・イベントの生き字引」とまで言わしめるほどのイベント通

さて、今回vol.17のテーマは言語イベント。この夏から秋にかけて、プログラミング言語に特化した大規模イベントが次々開催されていきますが、今回はそれらイベントの実行委員長を迎え、さらにLLイベントの中心人物、我らが法林GMまで加わってトークバトルを繰り広げるという、めったに無い対戦カードが組まれていたのです。

法林GMが一人の選手として参加するため、レフェリー(=MC)役が一人少なくなってしまいます。それを支えるべく(?)迎えたもう一人のゲストが、馮Pに「歩くOSSコミュニティ・イベントの生き字引」と言わしめ、TechLIONにも何度も観戦しに来てくださっている小山哲志さん。

今週はまず、小山さんを迎えての第一部の模様(注1)をご覧ください。

(注1)当日の全セッションの模様の録画(第一部第二部#1第二部#2エンディング)を公開しています。(撮影協力:日本仮想化技術様)

■第一部 獅子王たちの夕べ(小山哲志さん)

小山哲志さんというわけで本日のメインゲストは、@koyhogeこと小山哲志さんです。メインゲストといっても、本日の第二部後半ではMC側にまわるという展開が待っているので少し不思議な感じですが……。

小山さんは現在フリーで活動しているプログラマー。ライターとしても活動していて、Webサイトなど様々なところにも関わっているそうです。あと、しょっちゅうアニメを見ながら前職の会社が展開しているアニメチェックサービスで作品登録に携わっているとか。(うらやましい)

さて、トークのタイトルは「LLとイベントとコミュニティと」(→当日のスライド)。数多くのIT系イベントに参加したり運営も手掛けたりと、IT系イベントに精通している立場から、イベントの舞台裏や運営ノウハウについて語ってもらいました。

ITコミュニティの歴史

小山さんが話していたITコミュニティの歴史を、ごくごく掻い摘んでお伝えするとこんなかんじです。

1961年、アメリカでDECUSが誕生。DEC社製コンピューターユーザーの集まりで、これが恐らくIT系コミュニティの発祥ではないかと。日本にもその流れを汲む組織があったようですが現存しません。日本ではその後’83年に日本UNIXユーザ会や、’88年に日本サン・ユーザ・グループが設立されましたが、80年代のこの頃、パソコン通信のBBS上のコミュニティが次々に誕生して、これが日本のITコミュニティのはしりだったんだろうと思います。

’98年、’99年、2000年前後くらいになると、オープンソース系のユーザーグループがカンブリア爆発的に増えてきました。LUG(Linuxユーザーグループ)とかBUG(BSDユーザーグループ)とか。そしてLL系のイベントもこのころから開催されるようになって、恐らくPHPカンファレンスが最古で2000年からやってます。あと、YARPC19101(RubyとPerlのイベント)とか。2003年からはLLイベントも始まって、LLという言葉がいつの間にか定着していきましたね。

ところでLLって?
LL(Lightweigt Langages)という言葉は英語圏では定着しなかったけど本当は外来語

ちなみに、今では国際的には通じない言葉ですがLL(Lightweight Languages)という言葉はもともと外来語です。アメリカMITで2001年に開かれたワークショップでこの言葉が出てきたんですが、むこうでは定着しませんでした。LLを和製英語だと言っているのは、Languageの後ろに“s”を付けないヤツを言ってます、もともとは。

イベント運営者に降りかかる様々な課題

歴史をおさらいした後は、イベントをやるうえで主催者にふりかかる様々な課題についての話でした。どれも言われてみれば考えないわけにはいかない話ばかりです。でも、これら全部を考慮しなければならないって相当大変なことだと思います。

1. イベント運営体制をどうするか:
大組織でしっかりやるか、小規模でできることだけやるか。スポンサーを募るか否か。シングルトラックかマルチトラックか。発表者を募るか否か。カンファレンス路線にして堅くするか、お祭り路線にするか……

2. チケット販売はどうするか:
2008年にATNDというイベント予約サービスが登場して、これが革命的だったんですが、現金当日払いは人数多いと大変だし、当日ドタキャンされると痛いですね。
LLイベントの2回目で、チケットぴあに頼んだのがこの業界でたぶん初めて。有料イベントに対応したATNDの類似サービスも増えて来たものの、根本解決はまだまだ難しいです。

3. イベント会場どうするか:
ホールにも有料、無料があります。ホール自体が高くても、参加者数が500、600くらいになってくると実はそんなに高くないということも……。
自治体系は結構大きくて安いけど、予約が1年以上前とか多いので計画的な運営が必要です。やりたくなくても、もう箱が決まってるからやらざるを得ないなんてことも……。あと大学のホールを借りるという手もありますけど、先生とのコネが最重要。最近は、IT系の企業が貸してくれる流れにもなっていて、ありがたいですね。

開催日かぶり問題
これだけイベントが増えてきたら、どうしても重なっちゃいますよね

4. 開催日かぶり問題:
こんだけイベントがあれば当然かぶります。かぶらないようにしたかったら、早めに日程を公開するしかないですけど、それでもぶつかるときはぶつかっちゃいます。
ハシゴをする一部強者を除けば、かぶるとお互いに集客減るし、メディアは取材に行けなくなるし……。ITイベントカレンダーを見てお互いうまいこと調整しましょ。

5. 会場インフラ問題:
この手のイベントだと電源とWi-Fiは潤沢に確保したいとこだけど、これがまた難しいです。会場側がWi-Fiを用意していることもありますが、何百人もが同時に使うことなど想定されてないからそりゃ破綻しちゃいます。
ただ大規模Wi-Fiノウハウは、頑張って身内でノウハウをためてきてはいますね。

6. 集客プロモーション:
公式Webページやブログ、それに最近は当然のように公式Twitter、Facebookアカウントがあったり……。それにメディアとタイアップするという手もありますし、あとは招待した大物スピーカーがポロッてつぶやいてくれてそれが宣伝になることもあります。

7. 物販、書籍問題:
まず会場によって可否がありますが、オライリーさんは呼ぶとガチャガチャとかいろいろやってくれますね。あとは、RubyKaigiが開発した手法として書店(ジュンク堂)さんを呼んでしまうというのもあります。おかげで、RubyKaigiがあった週はジュンク堂のIT書売り上げランキングがおかしなことに……。

8. ネット配信:
昔はリアルネットワークスのライセンスをかき集めて100配信するといった涙ぐましいノウハウがありましたけど、UstreamYouTubeニコ生といったサービスが全てを変えてしまいました。大規模配信がお金を掛けずにできるようになってしまったという……。
ちなみに、生中継したり、さらに録画まで配信すると来場者が減るんじゃないかとまだまだ言われますけど、実際は配信して来場者が減るっていうのは無いと思うんです。どうでしょう?

9. コミュニティの法人化:
コミュニティは規模がでかくなるとお金の問題がどうしても絡むようになります。例えば収入や支出を誰がどう管理するのか。それから、交渉事(会場を借りるなど)で個人だと相手にしてもらえないこともあります。こういう問題に対応するため、コミュニティの法人化を検討しなければならないことがあります。
PostgreSQLのJPUGは2006年にNPO法人になりましたけど、同じ年に公益法人制度改革法案が成立して一般社団法人を作るのがだいぶ簡単になったんです。

イベントが一般化してきている

イベント一つ開催するにもこのようにたくさんの課題があります。しかしカレンダーを見ればわかるように、イベントはどんどん増えています。これについて小山さんはトークの終盤でこう言いました。

要はイベントの壁が低くなったということです。10人くらいの勉強会だったら、それこそ10分くらいでいろいろ決められますし、動画やスライドを残すことも簡単にできますし、実際残すと「あれがよかった」ってクチコミがすごく広がるじゃないですか。
これはすごい世界ですよ。80年代、90年代はこうやってマイクを持ってお客さんの前でしゃべることはけっこう特別なことだったんですけど、ITのおかげ。我々が15年くらいかけて獲得してきたことなんです。

最後の一言には重みを感じますね。ブログサービス、SNS等のコミュニケーションメディア、チケット予約サービス、スライドや動画を公開するサービス、……等々、今では当たり前に使えるこういったサービスですが、これらが無かった時代の主催者達は、どんな手段で、どんな苦労をしながらイベントを開催していたのか……、なかなか想像するのが難しいです。

私も、イベント会場で帰り際にゴミを見つけたら拾うなどして、イベント運営者の見えざる努力に少しでも報いられればと思います。ありがとうございました。第二部もよろしくおねがいします!

次回レポートに続きます。