Vol.8報告(1/2)―はちゃめちゃトークの中に砂原流プロジェクト立ち上げ術を見た

おはようございます。USP MAGAZINE編集長兼TechLION取材班のまつうらです。TechLION Vol.8に参加なさってくださった皆様、お疲れ様でした。

こちら公式ページのレポートなわけですが、既に当日のアツい雰囲気や感動的なお話を伝えるレポートがまとめTogetterニュースサイト様等で公開されておりまして、ありがたく思うものの、まとめの巧さにプレッシャーを感じております。

では、公式として何を報告すべきか?……私は、自分で描いたこのポスターを思い出しました。TechLIONの見どころの一つは、ゲストの人間臭さが見られる点なんですよ。そこに惚れるからこそ、ゲストが言わんとしているメッセージの意味を、深く理解できるんです。だから今回は、「ゲストの人間臭さ」という切り口でこの報告をしようと思います。

メインゲスト、砂原先生が現れた

さてTechLION Vol.8の準備をしていると、本日のメインゲスト砂原秀樹先生@慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科がやってきました。Tシャツ着てます。イベント告知の段階から背中を遊び道具にしていて、ユーモアのある方だなと思っていたら、当日も背中で見せてくれました。

砂原研特製Tシャツ2012Tシャツの後ろに何か描いてある!「ん?」と思って覗き込む法林GM(ゼネラルマネージャー)。するとこんな感じになっていたんですね。(→写真)「うちの学生が作ってくれたんだよ。これ一枚だけしかないんだ」と先生。それにしても先生、満面の笑みですね

Tシャツといえば、Vol.5で来てくださったよしおかさんがプロの酔っ払い特製Tシャツを着てこられた時のことを思い出して「まさか、この展開は」なとど、脳裏に1時間少々未来の様子が思い浮かんでいましたが、いやいや……実際は想像以上でした。

 トークは終始飛ばしっぱなし!

お客さんも準備OK、3か月ぶりの東京TechLIONの開演を今か今かと待ちわびていた中、本番開始!司会者の法林GM&馮P(プロデューサー)、そして砂原先生の軽い挨拶を済ませたあと、第一部のトークスタート!

タイトルは「思えば遠くへ来たもんだ: 次の世代とともに進む未来」。では、内容を紹介していきましょう。それにしても先生、最後まで飛ばしっぱなしでした。時々エキサイトして声のトーンが急上昇。筆者は、こういうトーク大好きです。

はちゃめちゃトーク!でもそれは、マルチな実力の証

砂原先生の今の取り組みまずは自己紹介。私(先生)は何者か?もともとの専門はスパコン。それじゃ今は何やってるか……。「自動車」「救急車」…「百葉箱」あたりはでは想像付きますが、「ゲリラ豪雨」とか「女子力」とか何ですか?(それらはトークの中盤で触れられました) これは現在の話ですが、今までもそういったものを次々立ち上げてきた「立ち上げ屋」であると、自らを称してました。

そして半生を紹介。登場人物をオカシいやつだの悪人だの容赦無いうえに、自分もオカシいと言い出しました。小学生の頃に保護者面談で担任の先生は「この子は将来、博士になるか乞食になる」と言ったそうで、それ、間違ってないのが恐ろしいですね。

学生時代の話になると、日本のインターネットの父こと村井純先生がエピソードに登場します。が、悪人と呼んではばかりません。でもそれは、氏をよく知っている人に言わせれば、黎明期に一緒に日本のインターネットを創ってきた「戦友」だからこそなのだそうです。砂原先生曰く、「村井とは寝食を共にして、一緒に抱き合いながら寝た」とのこと。えー!!!

デザインもマネジメントもポリシーも、みんな通用する人材を育てよう

先生は、奈良先端大学院大学(NAIST) 先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム(IT Keys)、そして現在は慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)で学生の指導にあたっているそうなのですが、どちらの立ち上げにも関わっているそうです。ちなみに後者の立ち上げに際しては、先生曰く「村井に『やれ!』(やってみるかではなく)と言われた」のだとか(笑)。

でもマジメな話、立ち上げて何をしたかったのか。それは、テクノロジー(技術)、デザイン(表現)、マネジメント(経営)、ポリシー(政策)、全てのセンスを身に付けた人材を育てることなのだそうです。

技術なんて教えたってしょーがない、知ってんだからそんなの。それよりも要るのはコレ(法律・倫理・経営)。つまり、「お前は悪者になっちゃいけないよ。暗黒面のフォースを使っちゃいけないんだ」って教えることなんですよ。

そんな倫理教育も然り、経営的センスも教えるそうです。

な、お前ら経営ってわかるか?
お前らが必要だと思うセキュリティの装置を入れようと思う時、それが2億かかるとする。なんで2億も必要なのかわけのわからない経営者に、「これは2億かかるんですけど、2億掛けないと18億損しちゃうんですよ」っていうような話をできるようになんなきゃいけないんだぞ。

そんな話をしようと決心したそうです。「やっぱりねえ、エンジニアってコレができないからショボいんだよ。だから搾取されんだよ」と。筆者ももっと若くに教えられたかったですね。
さらに続けます「つまりね、これらはインターネットでやってきたことなんですよ」と、

インターネットって、やろうと思ったらまず電気通信事業者法ってのが立ちはだかるんですよ。最初にモデム繋いだ時に突然NTTから電話が掛かってきて、
「この先に、電話じゃないものが繋がってるんですけど……、何ですかねぇ?」
って言われて
「ボクもよくわかりませんっ!(ガチャ★)」
とかやるわけだけど……

(編注)こういうエピソードは殆ど冗談ですからね。真に受けないでくださいよ!

僕もよくわかりませんッ!というように、時には法律を変える必要さえ出てきます。

会社作ったりとか法律変えたりとかやっていくようになった時、こういう各分野のセンスないとダメなんだよね。「だから全部教えてみよう」ってやってみたんですよ。

砂原先生のとこの教え子さん達

そして、熱心に育てていらっしゃる教え子さんたちの研究成果が披露されました。

メンバー構成

女性4割、留学生3割、社会人半数、とのことです。女性4割って技術学科では驚異的ですね。出身分野もバラエティーに富んでいて、音大卒とか美大卒とか、はたまたスタンフォード大卒業後、他からのオファーには目もくれずにやってきた学生とか。うわー、楽しそうですね。

どんな研究が……

女子力向上ミラー面白すぎてオカシすぎて(褒め言葉)詳しく紹介したいくらいなんですけど、ブログ記事もだいぶ長くなってきたので、ほんの一部をさわりだけ。

  • HAPMAP:自ら方向音痴だと公言する学生さん(美大出身)が考案。「できれば道にロープ張って案内して欲しい」との思いから、GPSや地図情報と連携するiPhoneの裏にちょっとした装置を付けて仮想ロープを実現した。
  • 女子力向上ミラー(右写真):女子力が無いと悩む学生さんが、女子力センサーを作りたいと発想。女子力という言葉が出てくるブログで併用される単語を様々分析し、女子力という曖昧な量のスケール化を実現。これに基づき製作したという。

僕の製品は、うちの学生なんだなって思った

これまで携わってきた数々のプロジェクトも、今学生さん達と共にやっている研究も、どれも基本はCyber-Physical System(=サイバー空間と物理空間(この世の形あるもの)を繋いで、何ができるかを考える)という考え方

  • インターネットにとにかく全部繋げ。
  • 情報を全部集めろ。
  • それを皆で共有しろ(ここ凄く重要)。
  • そしてみんなでアイデアを出し合って有益な情報を創ろう。
  • 楽しくやろうよ!

があるといいます。

そして最後に

だから要するに、僕の製品は、うちの学生なんだなって、改めて思ったわけです。

と結びました。くー、先生ウマくまとめたー!でも筆者も、こういうこと言ってのける先生の下で大学院生やり直したいですね。

「営業になりたくない」って言ったら負けだぞ!

トークが終わって観客からの質問の際、またガツンとくる一言をおっしゃっていました。営業になりたくないって言ってきた学生さんがいて、その時こう言ったそうです(下写真)。

営業になりたくないって言ったら負けだ!

だって自分の研究をセールスできない瞬間に負けだろ?営業ができないんだから研究もできないんだよ。

そうなんですよね。人に自分の研究の意義を説明できなきゃ予算が貰えず研究活動が続けられないですし、そもそも自分が何を研究しているのか整理できていないのかもしれず、そういう意味でも続けられるのか怪しいもの。今思えば、「二位じゃだめなんでしょうか」発言で有名な事業仕分けによってスパコン予算が減らされた時も、あれはある意味負けだったのではないかと筆者個人は考えてしまいます。

◇ ◇ ◇

砂原先生。一聞するとはちゃめちゃ言っているように聞こえる部分もありますが、思い返せばそこで語られたエピソードはどれも絶妙なバランス感覚で首尾よく歩んできたことなんだなと気付かされました。

一方あえてはちゃめちゃなジョークを飛ばしている部分もありますが、それも含め、経営者や政治家達と上手に渡り合いながら日本のインターネットを創ってきたのでしょう。

その教えを受け継いだ学生さん達は、これからどんな未来を創っていくのか。ちょっと羨ましいです。(あっ!今、私の背中にKMDの入学案内パンフレットを貼らんとしている先生の気配がっ!……ちなみに学費は年間200万円だそうです)

先生ありがとうございました。(第二部もよろしくおねがいします)

というわけでVol.8報告は、次回「後半」に続きます。
近日中に「後半」記事を追加した後、高坂さんにバトンタッチ!

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