20年前はOSSなんて見向きもされなかった

TechLIONゼネラルマネージャーの法林です。

 

先に大事なことをお伝えします。
来週水曜日(2/5)の夜はTechLIONの本番です。19:15からサイボウズ東京オフィスでやります。お時間ありましたらぜひ遊びに来てください。

 

 

とは言っても、検索やSNSなどでこの記事を見かけた方は、TechLIONを知らない人も多いでしょう。2011年からやってる、ITエンジニア向けのトークイベントです。よくある勉強会とは違って、毎回テーマを変え、そのテーマにふさわしいゲストの方々を呼んで、MCの2人と飲みながら雑談するというイベントです。私はMCの片割れです。今回のイベントページはこちらです。
https://techlion.jp/vol36
飲食を用意する関係で人数を事前に把握したいので、チケット制にしています。チケット販売ページはこちらです。参加申込はこちらでお願いします。
https://techlion36.peatix.com/

 

さて本題はここからです。
今回のTechLIONのテーマは「再考:OSSの価値」です。文字通り、OSS=オープンソースソフトウェアの価値について、あれこれと雑談する回です。イベントページに書いてある説明文を引用します。

 

1990年代後半からソフトウェア開発の手法として取り入れられ、今やビジネスを支える様々な技術として欠かせなくなったオープンソースソフトウェア。ここ日本でも1990年代後半から、雑誌を中心としたメディアに登場し、2000年に入るころにはそれぞれのソフトウェアに特化したユーザグループ(コミュニティ)が誕生するなど、OSSが一般化して四半世紀が過ぎようとしています。
今回、改めてOSSの価値はなにか、実際に実事業でOSSを活用するあるいはOSS活用を推進するエンジニアをゲストにお迎えし、2020年の今におけるOSSの価値を再考し、今後のOSS活用と開発について、パネリストともに議論します。

 

そして、今回のゲストはこちらの方々です。TechLIONではゲストを誰にするかがとても大事です。

 

まずは石井達夫さん。現在はSRA OSS日本支社の支社長を務めていますが、長年PostgreSQLの開発に関わっていて、現在もコミッタの1人です。コミッター社長なんて日本に何人いますか?ってのは置いとくとしても、日本にOSSという概念が入ってきたときからずっとOSSに、それもビジネスで関わっている方です。

 

次に小田切耕司さん。小田切さんも1990年代後半からSambaの日本語化などの開発に携わり、日本Sambaユーザー会の初代代表幹事も務めました。現在はオープンソース・ソリューション・テクノロジ社の代表として、石井さんと同じくOSSを仕事にしている方です。

 

そして3人目が丹治邦夫さん。この方は広島から来られます。勤務先のエネルギア・コミュニケーションズは中国電力のグループ会社で、そこの情報システム事業本部長をしています。イベントページに書いてあるプロフィールを見ると昔のことやプライベートのことしか書いてなくてなんだこの人は?と思うかもしれませんが、電力業界というお堅い業種でOSSを活用することに尽力されているそうです。見方を変えると、このような分野にもようやくOSSが普及しつつあるということで、そういう話が聴けると思います。ほんまかいな。いやでも私は聞きたいです。

 

とまあこんな感じで、今回のテーマである「OSSの価値」というものをよく理解している方々に集まってもらうことができ、いい話ができそうなのですが、チケットの販売状況は残念ながら(東京開催分では)過去最低なのです。

 

現代の、OSSがごく普通に存在し利用できる状況が最初から目の前にある若い人たちに、当たり前に使えるものに価値を見い出せと言っても理解しづらいとは思います。でも、このような状況は昔からあったものではなく、20年とは言わないまでも10年ぐらいかけて、OSSはビジネスや開発の現場でも使えるという地位を確立し、そしてその後の10年で、もはやOSSは普通に使うよねという空気を作り出した、そういうことを知っておいてもらいたいのです。(年数は私の感覚値なので人によって数年単位の差があると思います)

 

ここで時計の針を20年ほど前に戻します。私が初めてオープンソースという単語を耳にしたのは、1998年11月に行われたThe Perl Conference Japanにおけるティム・オライリーさんの講演です(推測ですが日本のイベントで初めてオープンソースの概念が紹介された機会ではないかと思います)。その1年後、私が所属する日本UNIXユーザ会(jus)やぷらっとホームなどの呼びかけで、日本初のOSSを対象とするイベント「オープンソースまつり」が開催されました。オープンソースまつりは2001年2月にも開催しましたが、残念ながらその2回で頓挫しました。資金が続かなかったのです。

 

 

オープンソースまつりは、当時日本随一の電気街だった秋葉原の駅前で開催したこともあり、2日間で8000人ぐらいが来場する大規模なイベントでした。このようなイベントを開催するには多額の費用がかかり、しかも多くの人にオープンソースを知ってもらうために展示会の入場料は無料でした。そうすると主な資金源はスポンサー収入に頼らざるを得ません。今でこそIT関係の展示会やカンファレンスを開催すると多くの企業が数十万円や100万円もする協賛金を払ってスポンサーになってくれますが、当時(2000年前後)の日本は長期にわたる不況にあえいでおり、今のように気軽に協賛してもらえる状況ではありませんでした。まして当時のOSSはまだ入ってきたばかりの概念で、本当にそれがビジネスに使えるのかどうかも未知数な状況。その価値を理解してスポンサーになってくれる企業はほとんどありませんでした。現在のように大企業がITイベントに会場を貸し出す習慣も当時はなかったので、結果的にjusをはじめとする主催者たちは二度に渡り、数百万円の赤字を負担しました。これではとてもイベントを続けることはできません。

 

つまり、当時はOSSなんてごく一部の先進的な人たち以外には見向きもされなかったのです。この記事のタイトルに掲げた言葉はハッタリでも釣りでもなく、本当にそうだったのです。そこから現在のような状況を作り出すまでに至ったのは、特定の施策や出来事1つで状況が一変したわけではなく、今回の出演者であれば石井さんや小田切さんのような方々の(もちろん他にも多くの方々の)地道な努力により、長い年月をかけて少しずつ信頼を得ていくことで、今日の地位を確立できたのだと思います。

 

今の人達には当たり前のことかもしれませんが、こうして見ると、これは当たり前にできあがったものではないのです。それを伝えたくて、この試合を組みました。当日は昔話をしたいわけではなく(この記事はどちらかというと予備知識です)、現在のOSSの状況や、これからどうなっていくのかなどの話をどんどんしたいと思っています。もしこの記事を読んで共感できるものがあったとか、イベントに興味を持ったという方は、ぜひ会場に足をお運びください。2月5日の夜、サイボウズ東京オフィスでお待ちしています!

 

LinkedIn にシェア
LINEで送る
Pocket