vol.18報告(1/2)―技術の先に、各者が見い出すテーマが興味深い

TechLION取材班のまつうらです。今週そして来週のブログでは、9/25に開催したTechLION vol.18のレポートをお届けします。

某滋養強壮剤とステージ
某滋養強壮剤とステージ(本番中お酒の代わりに振る舞われたわけではありません!!)

TechLIONといえば、お酒とステージという組み合わせのイメージ画像が定番ですが、本日のゲストのお一人が、このドリンクに大変ゆかりの深い方なので今回はお酒の代わりに某滋養強壮剤(ぜんぜん某じゃない!)を置いてみました。

さて、今回vol.18のテーマは「未来のライフスタイルとテクノロジー」。技術の中身について語るというより、その技術が日常生活とどんなふうに関わっているのか、更にはそれによってどんな未来が作られるのか、といったことを語り合おうという趣旨の回でした。

今週はゲストの方々の個別にトークをした第一部(注1)の模様をお伝えしますが、各テーマは、「宇宙探査」に「企画書作り」、「ユーザーインターフェース開発」と、いずれも技術と何らかの形で関わりを持つ内容になっていました。

(注1)当日の全セッションの模様の録画(第一部#1第二部#2第二部〜エンディング)を公開しています。(撮影協力:日本仮想化技術様)

■第一部 ITサファリパーク

#1 寺薗淳也先生―宇宙探査の仕事も今やITが欠かせない

寺園先生本日の一番手は寺薗淳也@会津大先生。題目は「天体をITで歩こう! 〜月・惑星探査とITとのステキな関係〜」です。

寺園先生は、あの小惑星探査機「はやぶさ」プロジェクトに携わっていました。公式ブログにてイトカワへの2度目タッチダウンを徹夜で実況した際、なぜか中継現場にリポビタンDの空瓶が増えていった(12)エピソードはファンの間であまりにも有名。なんと来場前には大正製薬さんと打ち合わせしてたそうです。「宇宙探査の疲労回復にはリポビタンD!」

さて、宇宙探査の業界でまず知っておくべきこと。それはデータ量が物凄いという事。例えば月探査機「かぐや」が送ってきたデータは全部で30TB。火星探査に至ってはこれまで集まっているデータを集めると1PB(=1,000TB=1,000,000GB)に達するのではないかといいます。それらは主に画像データであり、スペクトル解析をしたりします。すると何が嬉しいかというと、どんな鉱物が存在しているかが正確に特定でき、そこから構造や出来事を解明する手掛かりが得られるそうです。

解析してわかった月の表面
スペクトル解析でたくさんのことがわかる(写真は月の表面)

そういった作業を、以前は人間が手でやっていましたが、膨大になった今はそうはいきません。独自のアルゴリズムにより自動判定する仕組みの開発に挑戦したりもしたそうです。これを「秘伝のたれ」と称していらっしゃいましたが、そうやって先輩から後輩へプログラムを受け継ぎならが改良していきます。受け継ぐのは勿論プログラムだけではなく、データも同様です。メンバーが現場を去った時にデータの所在や意味が分からなくなってしまっては大きな損失になってしまうため、共有する空間の整備、フォーマットの共通化が重要だそうです。

the moon station
中秋の名月の時期になると、運営しているこのサイトにアクセスが殺到するそうです

惑星探査業界におけるITの活用はデータ解析ばかりではなく、ミッションを確実に成功させる探査機の設計から情報公開や普及啓蒙など「アウトリーチ活動」のためのWebサイト運営に至るまで様々なところで行なわれています。ちなみに、現在先生が運営なさっているのが「the moon station」。惑星探査をはじめ様々な情報を発信しているそうですが、中秋の名月の時期はアクセスが殺到するため、仮想サーバーを増強するとのことです。8,9,10月はファイト!一発!

ITは、もはやここでも必要不可欠な存在になっているんですね。ありがとうございました。

#2 瀬尾浩二郎さん―人に伝わる企画力の必要性を感じた

瀬尾さん二番手は、瀬尾浩二郎@セオ商事さん。題目は「エンジニアのための企画書講座」ということで、実戦的なお話が興味深かったです。

瀬尾さんは、大手SI会社を経て、面白法人カヤックに入り(現在は独立)、web・モバイルアプリ、そして「よくわからないものを作る担当」をされていたそうです。過去の作品で「閃光会議室」や「今日の緑さん」など紹介されていましたが、確かに名前を聞いた限りではよくわからないものばかり!しかし、それを納得させ、実現までもっていく能力こそが企画力なのではないでしょうか。そんな瀬尾さんが語ったトークに注目です。

企画力をつけようと思った動機は、「壁にぶつかった」からだと言います。30代くらいまでエンジニアをやっているとなんとなく一人前になってきます。一方で、大企業から「こういう面白いものを一緒に作りたい」と提携の誘いがあった時、企画をまとめて案件化することがなかなかできなかったそうです。ところが近くに、自分に近いスキルセットを持った人がいて、その人はクリエイティブディレクターとして企画やプレゼンをやっていることに気づき、その時「自分にもできるんじゃないか」と思ったそうです。

スマート冷蔵庫プロジェクト
ありがちなプレゼン用のスライドですが、これは良くない例

そして、一枚のスライドを出しました。「スマート冷蔵庫プロジェクト」。よく見かける雰囲気の企画書なのですが、実はダメな例だというのです。まずフォント。「太くて黒く、冷蔵庫の話にしてはちょっと強すぎ。例えば細めのNotoフォントにして色も水色にして、その代わり大きくしてみたり……」実際、フォントは繊細に使い分けているそうです。他にも「ページに詰め込みすぎない」とか「専門用語を避けて誰でもわかる言葉で」など、いろいろ指摘さてれいましたが、印象的だったのは「資料に使う画像素材をイメージ検索で拾うなどせず、自分で作る」でした。有り物を引用すると「それを作りたいの?」と思われて新規性の訴求には不利。瀬尾さん「美術の成績は2」だったそうですが、自分でイラスト(ポンチ絵)を描いたり、Keynoteで作画したりするそうです。

自分で描くポンチ絵
有り物の画像を流用せず、自分で絵を描いた方がよっぽど効果的だそうです

企画が通らないなかで、企画より人を見ていることが多いと気づいたそうです。「この決裁者は何を考え、何を意識し、何に満足するとOKするのか」など。そして、通らない時は「相手が企画を理解できていないんじゃなく、自分ができていない」ことが多く、またそう考えるようにしているそうです。

なるほど、企画書の中身もさることながら、見せられる相手や作っている自分についての把握も重要ということですね。ありがとうございました。

#3 増井俊之先生―計算機を進化させるアイデアが足りない

増井先生三番手は、増井俊之@慶應大先生で、題目は「全世界インタフェース」です。

増井先生は、今は教員をされていますが、シャープソニーアップル等を渡り歩き、いわゆるガラケーの予測変換システムの先駆けであるPOBoxや、フリック入力など多くの方がお世話になっている日本語システムを生み出した方。それ以外にもコンピューターの画面を共有するサービスGyozo.comも先生の作られたものです。これは非常に直感的で単純な使い勝手を実現しており、今回のトークで言わんとしていたことを理解するためにも是非動かしてみることをお勧めします。

しかし、その言わんとしてることとは「計算機界の現状について憂いている」という話でした。というのもコンピューターは、紙テープやキーボードの登場等を経て、GUIが主流になった90年代頃まで劇的な進化を遂げてきたのに対し、それから20年以上現在に至るまでGUIの基本的な仕組みは何も変わっていないというのです。細かな点では良くなっているけど、知っている人(専門家)にだけ使いやすいシステムである点は変わっていなく、苦手な人にとっては苦手なもののまま。例えば「動画が見たい」と思ったら、YouTubeで見るのか、動画アプリで見るのかといった「手段」をまず考えなきゃならならず、やりたい事とやるべき事が素直に一致していないというわけです。

長屋コンピューティング
「長屋コンピューティング」。今どきこんな古い家に住みたいとは思わないけど、どうすれば住んでもいいと思えるか?

先生はここで、江戸時代の長屋を例に挙げました。凄く狭くて、煮炊きはかまど、暖房は火鉢……、「今どきこんな不便なところに住みたくないでしょ?」と。でも、ここにWi-Fiがあって、室内のあちこちにあるセンサーでキーボード入力。障子は大画面スクリーン。狭いけど電子書籍が読み放題だし、隣がコンビニなので冷蔵庫も台所も不要……、だったらどうでしょう。今度は「これなら我慢できるでしょ?」と言います。つまり、先生は言いたいのはこういうことでした。「センサーやネットワークなど、進化を起こすのに必要なデバイスは十分にある。でもアイデアが足りない」と。

ここで法林GMが「斬新なものを思いつく発想はどうやって磨けばいいんですか」と問いました。すると先生はこう言いました。

すげー考えて、シャワーを浴びて寝るんです。シャワーを浴びている時ってそれしかできないでしょ。あと、音楽を聴かないことが重要。これは色々な人の体験談に共通しています。
要するに他の事したり音楽聴いたりしていると、脳がそちらの仕事に使われてしまうんですよ。まぁいい加減な理論ですけどね。

スマホはジョブズの呪い!?
「スマホは知的生産活動のできないツール、きっとジョブズの呪いだ!」と、スマホを一刀両断!

シャワーを浴びるとか、音楽を聴かないというのがアイデアを生むのに役立っているという話は興味深いですね。現代は音楽もそうだし、暇さえあればスマホをいじるなど、脳に休む暇を与えない習慣がアイデアの不足を招いているのでしょうか。そういえばアルキメデスの原理も彼が入浴中に思いついたことで有名ですね。

皆さん、興味深いお話をありがとうございました。

さて来週は、今回の出場者が一堂に会し「未来のライフスタイルとテクノロジー」を語り明かす第二部の模様をレポートします。お楽しみに。

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