こんにちは、レポート担当の田中です。
さて、4月13日(水)に、TechLION vol.25が開催されました。 今回は25回目!5周年!通算ゲスト100名達成!ということで、多くの方にお集まりいただけて嬉しい限りです(´ω`*)
それでは早速、当日の模様をお届けします。
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■ブログもSNSもあまり書けない代表がコミュニティを10年運営できたわけ。10年運営して気づいたこと
まず登壇いただいたのは和田嘉弘さん。
「ブログもSNSもあまり書けない代表がコミュニティを10年運営できたわけ。10年運営して気づいたこと」との演題に即し、代表を務められているWebSig24/7に絡めて、個人と組織のありかたの実験的な場として、社会性があるコミュニティに関わることは、未来の個人と組織の関わり方の先取りであるとお話しされました。
将来的に自分が所属するコミュニティを自由に、そして複数所属することについても、個人が選択可能な社会になる。その変化課程の中で、家族といった「共同体」や、企業のような「機能体」といった既存の社会的コミュニティの質の変化が生じて、個人の裁量もより存在感を増していくと思うのですが、既存のモノや価値観が変わっていく最中に生きるという先例の無い難しさ、自分の中の評価軸を持つ重要性についても考えさせられました。
特に「個人で出来る範囲を本気でコミットする」と言われたことがとても印象的でした。コミュニティはこれまでのところ雇用関係や上下関係がなく、思い切ったことがやれる場であるが、よりよいコミュニティ体験をしていくためには、「自由な場であるからこそ責任をとる」というそのお考えに深く共鳴しました。今後、自由な環境下にある個人がどのように組織や他者と関わっていくのか、そのヒントがコミュニティに関わることにあるのかもしれないと締められました。このセミナーを通じて、改めてコミュニティ参加の意義を考えるよい機会となりました。
■今どきの若手育成にひそむ『3つの思い込み』
続いてお話しいただいたのは林真理子さん。
IT/Webエンジニアの学習について若手育成に際し、教える立場の人が持ちがちな、独学で身につけるべき、自分の学習法が一番 、結局本人のやる気とセンスという思い込みについて「自分の役割に若手を育成する仕事を組み込む」という解決法を提示されました。その際に重要なのは「教えることで人を変えることが出来る」という信念のようです。
印象的だったのは、立川談志師匠の教え方には”行動の意味付けや価値を伝える”、”どのように行動すれば良いか、具体的に提示する”、”段階的に課題を提示する”のように、教える側のエッセンスが詰まっているとのお話。教わる側にも相応の心構えが求められるのは勿論ですが、教える側にも「人を教える」という行為で自身の仕事のブラッシュアップになるように、日頃から仕事への論理を持たなければならないと感じました。
多くの管理職が陥りやすい「今どきの若手育成にひそむ3つの思い込み」。それは、実務スキルは独学や自力で身につけたと思い込んでいても、実は「多くの人、さまざまな環境に育てられてきた」。また、自分の学習法が一番という思い込みも、本当は「時代変われば合理的な学習アプローチも変わる」のだということ。最後に、何事も本人のやる気とセンスの問題なのではなく、談志師匠の教えのように「教え方によってもその学習効果は大いに変わる」というレクチャーでした。要するに「教えられることがあるうちに、出しておくが吉」とのことで、なるほどもっともだと納得。いいお話を聴くことができ、たいへん参考になりました。思い込みには気をつけたいものです。
林さんのスライドシェアはこちらから
(http://www.slideshare.net/hysmrk/3-techlion-vol25)
■日本におけるIT・Webエンジニアの『キャリア寿命』について
休憩の後スタートしたのは、「エンジニアtype」編集長の伊藤健吾さん。
技術者と編集者のキャリア形成の類似性という独自の切り口でお話を頂きました。選択肢は確実に増えているものの、一般的に管理職の方が給与が高いという評価収入面での現状や別の業務への興味等から提唱される”35歳定年説”もあり、いつまでも作り手サイドでいるのはなかなか難しいとの考えもありますよね。エンジニアtypeでは、中長期でキャリアを考えていくための特集や技術者目線の特集、直接相談できる場づくりといった取り組みを成されている伊藤さんは、日本ではIT・Webエンジニアで「コードで食べていく」ために必要なものについて、次のように答えました。
1)個人の努力で、技術情報を得る物理的なタッチポイントを増やす
2)自分の売りにつながる、課題解決を行う、新開発職を開拓(会社に進言)する
3) 1で努力し2をやってもダメなら転職するしかない!
3)について、結局は企業は社長が動かしていく、いわば社長のものですが、勤める人間としては、自分の希望に合うような企業・社長を選ぶという抵抗もできるというのが面白いところでありますね。
■15世紀の印刷革命から考える21世紀の出版
最後に登壇されたのはアスキードワンゴ編集部 編集長の鈴木嘉平さん。
紀元前のパピルスや羊皮紙、印刷革命といった出版部門の歴史を振り返ると、文字の発明や活版印刷という新しい技術が生まれるにあたり、価値観やコミュニケーションが変化してきたということ。その中でも15世紀の印刷革命は知識の爆発的増大を生み出して当時の秩序を覆し、ルネサンスや宗教改革といった歴史事象の発生を促したそうです。インターネットが一般化して生活スタイルや価値観が一変した、という我々の経験に非常に近しい物があるように感じますが、近い未来にも宗教改革のような世界規模の価値観の変革が進むのでしょうか。
2010年に電子書籍元年を迎えましたが、現状の電子書籍は未だ紙の本に近い「デジタルインキュナブラ」(インキュナブラ=初期の活版印刷本)の枠を出ていないようです。ワールドワイドウェブが著作権を捨て世界中で文書の共有という価値を実現させたように、電子書籍も紙の本にある”何か”を捨て、ネットワークの強みを活かすような新しい価値が付加されると力強く仰っていたのが印象的でした。
最後に、「未来を予測する最良の方法は、それを発明してしまうことである」という有名な言葉を紹介されました。これは「パーソナルコンピューターの父」とも「プログラミングもできる哲学者」とも呼ばれてい米国の科学者アラン・ケイの言葉で、彼は「未来を発明すること」に情熱を燃やし、そして実際その言葉通りの行動を示した人物として知られています。いつまでも紙の模倣をしていても始まらない。まず先に進もうという鈴木さんのポジティブな力強さがとても魅力的でした。
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4名の方々の演目には「世の中が変わるタイミングにおいて、どのように対応していくのか」という共通項があったように思います。技術からガラポンですぐには新しいものが生み出されない、という意味では今は技術の揺籃期ですが、技術に影響を受け価値観がグラデーションで変化していく中で個人が頭を使い、個人の幸せという切り口で解を探していくのが今最も求められているのではないかと感じる次第です。
来場者からも「企業宣伝色のない、生の声がきけて楽しかったです!」「中身が濃い内容のものが多く面白かったです」「じんわりきました」「林さん、嘉平さんがすばらしかった!」「楽しく、濃い時間でした。ありがとうございました」「普段とは異なる楽しい時間をすごせました」「テーマに惹かれて参加しました。期待以上のものが得られました」「気づかされたことがいくつかあり、楽しめました」など、たくさんのお声をちょうだいすることができました。みなさん楽しんでいただけたようで、たいへん有意義な時間となりました。ありがとうございました。