TechLIONプロデューサーの馮です。こんにちは。
約3年ぶり、日数にして995日ぶりとなったTechLION vol.39が6月5日に無事終了しました。
ご参加・ご視聴いただいた皆さま、ご出演いただいた皆さま、スポンサー各社さま、会場ご提供のさくらインターネットさま、スタッフの皆さま、ありがとうございました。
今回のテーマは「Web 2.0からの20年」。開催準備と決定については法林さんのエントリをご覧いただくとして、今回はテーマ決定の背景と、実際のイベントの様子についてお届けします。
今年は国産SNS mixiが生まれて20年、そして、Web 2.0から20年
前回の法林さんのエントリでも書かれたように、法林さんと3月にTechLION再始動に向けたMTGをした際、今回のテーマが決まりました。
というのも、僕自身、そのときちょうどmixi20周年ユーザー同窓会に参加した直後で、このタイミングは何か立ち止まって、振り返りながらこれからについて考えるにはちょうど良い時期ではないかと考えたからです。そんなことを法林さんと一緒に、吉祥寺にあるP2B Hausで美味しいクラフトビールと八王子野菜の料理をつまみながら語って、ついに再始動が決まりました。
※このお店、TechLION vol.29のゲストでもある柄沢 聡太郎さん(@sotarokさん)のお店です。いつかここでもTechLIONを開催してみたいですね。
ちなみに、今から20年前の2004年。それは、日本のソーシャル・ネットワーキングの礎を築いたSNS mixiが誕生した年でもありました。また、すでに盛り上がりを見せていたブログ界隈で、今も多くのユーザーを抱えるアメブロが誕生した年でもあります。世界に目を向けてみると、Gmailがリリースされたのもこの年でした。
これらの動きは、それまではメディア(情報)としてのWebという考え方から、プラットフォームとしてのWebとしての考え方、使い方、そして、可能性が広がったターニングポイントだった年ではないかと思います。また、その先の未来を示唆していたTim O’Reilly氏の論文『What Is Web 2.0』が出たのは、その翌年2005年でした。
こんな背景もあって、今回の1人目のゲストにはmixi関係者をお呼びしたいと思い、もう20年来の付き合いのある村瀨さんにお声がけしました。そして、もう1名、いろいろと検討する中で、こちらも古い付き合いがあり、Web 2.0の最前線をエンジニアの立場で経験し、今もさまざまな取り組みに挑戦しているえふしんこと藤川真一さんをお呼びしました。
ちなみに、えふしんさんは過去2回(2013、2016年)に続き、今回で8年ぶり3回目のTechLIONです。
では早速、それぞれのセッションの様子と、最後のトークセッションについてレポートします。
冒頭でWeb 2.0の復習を
冒頭、簡単にWeb 2.0の復習をしました。まずは先ほども紹介したTim O’Reilly氏の論文『What Is Web 2.0』を読み直すところからスタート。これを読むと考えがいろいろとまた深まりますね。
そして、それとともにこの20年、とくにWebを取り巻く状況でどんなことがあったかを簡単な表にして紹介し、本編に入りました。
コミュニケーションを大切にし続けているmixiの20年:村瀨さん
トップバッターは、株式会社MIXI 取締役 上級執行役員の村瀬龍馬さん。
今回のTechLION開催の2日前、2024年6月3日にSNS mixiの母体でもある、株式会社MIXIは設立25周年を迎えました。まずはこのお話から。
https://mixi.co.jp/25th-anniversary
当時の社名は有限会社イー・マーキュリー。求人サイト「Find Job!」を主事業として展開していました。そして、2004年に、今回のテーマの1つでもあるSNS mixiが誕生したのです。
村瀨さん自身は1999年に株式会社MIXIに入社、その後、1回の転職を経て25年のうちの17~18年所属していたとのこと。プログラマとして参加し、技術領域からmixiを含め、MIXIのさまざまなプロダクト・サービスを見続け、今に至ります。
今回のセッションでは、mixiの核となる「コミュニケーション」と、それを支える技術・技術者の関係、さらに、SNS mixi後の柱となった、スマホゲーム『モンスターストライク(モンスト)』や写真共有サービス『家族アルバム みてね』、さらには、現在のMIXIの中心領域であるエンタテイメントに関して、デジタル以外の、スポーツやライフスタイル領域の取り組み、さらに今かなり注力しているという、AIを活用した展開などについてお話しいただきました。
村瀨さんはmixiの歴史を振り返る際、技術の変化・進化だけではなく、社会情勢の変化がもたらしたコミュニケーションの形の変化と進化にも触れました。
たとえば、東日本大震災やコロナ禍、技術進化による生活スタイルの変化など、こういったコミュニケーションの変化に対して、つねに向き合うことがmixiの存在意義であり、それができたから今も続いているサービスだと、僕は考えます。
他にも村瀬さんのプレゼンで印象的だったのが、同社のプロダクト・サービスすべてに通ずる考え方として「ユーザーサプライズファースト」が根底にあるとコメントされていたのが、とても印象的でした。
わずか10分ではありましたが、SNS mixiが与えた、インターネットコミュニケーションへの影響、その後の在り方と未来についていろいろと考えることができたプレゼンテーションでした。
Web 2.0から20年経ったが、当時の課題はまだすべて解決されていない:えふしんさん
2番手は、BASE株式会社上級執行役員SVP of Development・PAY株式会社取締役の藤川真一さん。えふしんさんと表現したほうが伝わるかもしれませんね笑
えふしんさんのパートでは、ご自身のキャリアとともにWebとの付き合い方・向き合い方、その中でのWeb 2.0で受けた影響、考え方、さらには生き方の変化についてお話しいただきました。
えふしんさんはもともと大学新卒で製造業の制御設計のエンジニアとして社会人キャリアをスタート。その後、2000年にWeb業界へ転職、2006年にPaperboy&co.(現GMOペパボ)にてEC事業に従事した後、日本の最初のTwitterブームのタイミングで、2007年に個人向けTwitterクライアント「モバツイ」を開発、独立されました。
そして、独立した企業を譲渡し、2014年にBASE株式会社取締役CTOとしてジョインし、今に至っています。
えふしんさんのキャリアの中で、TechLIONとしてはぜひ紹介したいのが、2013年に初めてTechLIONに登壇した際、砂原先生とご一緒したのがきっかけで、慶應義塾大学大学院のメディアデザイン学博士号を取得されたこと。えふしんさん曰く「TechLIONでのあのときの砂原先生との出会いが自分のキャリアを変えるきっかけでした」とのことで、TechLIONスタッフサイドの立場としてはとても嬉しいエピソードでした。
さて、えふしんさん自身はペパボでのEC事業の経験やモバツイの開発・運用などで、まさに実体験としてのWeb 2.0時代を生き抜いたエンジニアだったのではないかと、話を伺って感じました。
Web 2.0の前段としてのブログ活用もえふしんさんにとっては大きなことだったとのことで、Webがあって、当時の発信者と検索側(Googleなど)との距離感が近かったことが、別の発信者との距離感を近づかせてくれ、それもまた新しい出会いや新しい挑戦につながったと言います。
そして、Web APIによる開発、いわゆるマッシュアップの考え方が、Web 2.0的な開発を促進したと考えている一方で、えふしんさんは発表の中で「Web 2.0の原理とされていた集合知やオープンといった部分は、その後のインターネット社会の変化でうまく言っていないことも多いのではないか?」という疑問も投げかけていたのが印象的です。
また、まだまだWebビジネスの成功事例が広告しかないというのも大きな問題とも取り上げていました。
このような課題提示で、後半のトークセッションにはいりました。
トークセッション:みんなでワイワイ、自由に放談するのがTechLIONの醍醐味。その魅力をWeb 2.0が伝えてくれる!
さて、続いてトークセッションの模様です。
今回は、いわゆるテレビ的なトークテーマの見せ方から、トークセッションを回しました。
過去、TechLIONをはじめ、いろいろなトークセッションのMCを努めさせていただく中で、テーマ自体をその場で選ぶというのが、実はライブならではの面白さでもあり、魅力が伝えられるのかな、と思ったのが背景にあります(2024年2月のYAPC::Hiroshima 2024で僕は初めてこのスタイル(見せ方)でトークセッションMCをしたのが楽しかったので踏襲しました)。
また、今回はゲストの村瀨さん、えふしんさん、そして、相方法林さんと、全員が20年来の付き合いのある方で、おそらくどんなテーマでも、盛り上がるだろうという勝手な目論見もありました(完全に余談ですみません笑)。
それでは実際のトークの模様をお届けします……と思ったのですが、今回、YouTubeで内容は公開されているので、ぜひそちらをご覧ください。開始から1時間16分ぐらいからがトークセッションです。
手抜き、と思われるかもしれませんが(実際それもあります苦笑)、こうやって、イベントの内容がしっかりと記録されていく、というのも、まさにWeb 2.0的なデータの価値でもありますし、さらにはコロナ禍を経た結果、オンラインイベントそのもの質も高まっているので、今回はWeb 2.0以降のさまざまな進化を活用させていただきます 🙂
TechLIONのバージョンはどうなるか
最後に締めくくりです。
前回から995日ぶり、リアルでは1,582日ぶりとなったTechLION vol.39、MC、そして、運営の立場として、とてもおもしろく、何より達成感のある時間となりました。
オンラインよりリアル(オフライン)が良い、ということよりも、ライブでできることの楽しさ、また、ライブだから存在する余白(雑談・出会い・想定外のことなどなど)を改めて実感できたことが大きいんじゃないかと思っています。
その意味でも、改めて、登壇者のお二人はもちろんなんですが、会場に足を運んでくださった参加者の力や、会場設営・運営を支えてくれたスタッフの方たちの力がすごく大きいなと感じました。ありがとうございました。
今回、「Web 2.0からの20年~Webのカレントバージョンを考えてみる」と題しましたが、結局のところ、Webの最新バージョンが何なのか(僕は)わかりませんでした笑
ただ、Webは楽しいですし、まだまだ未知の可能性を秘めていることだけはわかりました。
これは、冒頭でも紹介した前回のエントリにも書かれていた法林さんがTechLIONかける強い熱量にも通ずることだと思います。
ですから、またみんなでワイワイ話して、そこから生まれる熱量、TechLIONの醍醐味を満喫するためにも、ぜひまた次のTechLIONも開催できたらと思っていますし、関わっていきたいです。そして、たくさんの方とご一緒させていただきたいです。
ps良いテーマがありましたら、ぜひご提案ください(登壇希望者も募集中です!)