こんにちは。USP MAGAZINE編集長まつうらです。
先週木曜の10/4、TechLIONはまたまた東京を離れて遠征しました。かねてから告知してきましたように舞台は神戸。私はちょっと前から神戸に入って街を歩きましたが、港あり、各国の旧領事館あり、レトロで異国情緒たっぷりのお洒落な街でした。
この街に、酒を酌み交わしつつ、ぶっちゃけ話を繰り出しながら、技術や技術者を熱く語るこのイベントがお邪魔しました。というわけでTechLION vol.9レポートをお届けします。
ウォームアップ中……
日が暮れる頃、会場となる神戸Varitさんへ……。昼間見てきたレトロモダンな街並みから一転、ここは大人の隠れ家。これまた別の味わいを持つ神戸の夜の顔といったところでしょうか。酒を呑みながら語らうTechLIONにピッタリですね。
出演者の控え室を覗きに行ったら既に全員揃っていて盛り上がってました。
台詞の打ち合わせとかそんなことではなく(TechLIONは勿論脚本ナシです)、ご挨拶を兼ねた軽い世間話。今回のこの時間は、今まで一番テクニカルな話題で盛り上がったらしいですよ。
話し込んでいたらvol.4@大阪にご出演くださった中野先生もご挨拶に見えました。前回はありがとうございました。是非今夜も楽しんでいってください。
ステージの方も、セッティングを進め、開場の時刻を迎えると少しずつ参加者の皆さんがいらっしゃいました。事前参加申込者がボチボチだったので少々心配しておりましたが、開演前に多くの方が来場してくださいました。ホッと一安心……。
本番スタート
開演の19時30分を迎え、テーマ曲とともに司会の法林GM&馮Pが登場し、本番スタート。法林さんにとって神戸は出身地でもあるので特別な思い入れがあるそうで、そんな話を交えてご挨拶。でも、今回は準備の段階にだいぶページを費やしてしまいましたので、「飛ばしましょう」。でもトークの前に皆で乾杯したことは重要なので紹介しておきます。
#1 松本悦宜さん―関西をセキュリティ話で盛り上げたい
今日のトップバッターは松本悦宜@神戸デジタル・ラボさん。今日やるプレゼンのタイトルは「神戸で学ぶセキュリティ」。
松本さん、大学院を出て今年会社に入った新入社員なのだそうですが、既にやっていることがスゴいですね。Mashup Awards 7に「リア充爆発しろ」という、リア充の位置情報を共有して地図上で爆発させるアプリを作って応募して、ねとらぼ賞を受賞したり。
それから、ペロペロ.jp。これは、短縮URL生成サービスだそうで、例えばhttp://あずにゃん.ペロペロ.jp/を中野梓の用語解説のページに転送させたりできるというスグレモノ!いやいや、スゴいなーと思ったのはそんなしょーもないもの(失礼……)だけではありません。
インターン時代から意図的にセキュリティホールの存在するWebアプリを作り(出題し)、知識を深めてきたそうです。そんな出題用に作ったサイトの一つがツクランド。これも勿論あるセキュリティーホールが仕込まれているわけですが。なんと、想定外のセキュリティーホールを見つけられてしまうというオチが!「よくぞ見破った」と言いたかったところですが、そこはちゃんと直して……。なんてこともあったそうです。
セキュリティー問題って、用語だったり仕組みだったりが小難しいですけど、これなら出題側も挑戦側も楽しくスキルを身につけられますね。私も参加したいなぁ。
今後の目標は、関西をセキュリティー話で盛り上げることだそうです。「関西人はどうしても東京と比べてしまう。負けているのは許されへん!みたいな」とのこと。そんなわけで、最後に地元で今後開催する勉強会(10/20姫路IT系勉強会,10/28Haskell 入門ハンズオン in 明石)を宣伝されてました。お近くの方、是非ご参加ください。
#2 村岡正和さん―もうバスワードにダマされんな
続いて登場したのは村岡正和@バスタイムフィッシュさんで、プレゼンタイトルは「HTML5時代のWebクリエイターに必要なこと」です。(→当日スライドはこちらです)
HTML5-WEST.jp代表として有名な村岡さん。神戸中心にフリーで、Webアプリの設計開発から、それで業務をどう改革していったらいいかなどのコンサルティングまでこなしていらっしゃいます。
そして恐らく今日のゲストの中で一番熱くメッセージを訴えていらっしゃのではないかと思います。お酒をグビっと呑んで机にカンっと置き、写真のとおり立ってプレゼンされてました。まさにWeb/HTML5の西の雄!
HTML5。みなさんご存知ですよね。じゃあ、HTML5って何ができるのか?そんなところからトークがスタート。Googleのホリデーロゴ等でも時々見せ付けられますが、いろいろできるんですね。Canvas機能を使ったこんなのとか、こんなのとか、こんなのとか、こんなのとか……。他にも Geolocation, WebSocket, WebStorage, IndexedDB、さらにはGPSと繋がるなど従来のWebアプリにできなかったことが色々可能になりました。
HTML5はWeb制作を変えてしまいます。グラフィック、ネットワーク、データベース……、専門分野が増えることで、これまでの知識だけでは不十分になるばかりか、これまで異業種とされていた人々がどんどん参入してくるでしょう。
そこで村岡さんはこう主張します。(→右写真) 自分の専門分野を他者に負けないように深め、広がった分野の全体を見通せる知識を持ち、常に新しいことに取り組め、と。当たり前に聞こえるかもしれませんが、確かに実践できるかといったら難しいことです。
また、コミュニケーション力も更に重要になってくると言います。それは専門分野が増えて、一人でカバーするのが難しくなってくるからというわけです。複数人での開発といえばアジャイル開発という手法がありますが、計画に柔軟性を持たせるためのこの手法を無計画でもよい手法と誤解してはいけない!など、トレンドの移り変わりが特に速いこの業界において、バズワードにダマされんな、と警鐘を鳴らしました。
Web業界で生きていく厳しさを見せられましたが、興味深い話です。 そしてしばしの休憩の後、後半戦へと続くのでした……。
#3 岡田陽一さん―コツは休憩時間に「どこかで止まって」と頼むこと
後半戦お一人目は、岡田陽一@ふわっとさんです。写真撮影の仕事を長くされてきており、プロのカメラマン。
プレゼンのタイトルは「30分でわかるITイベントでうまく撮影するポイント」ということで、TechLIONの取材担当である私はこのトークが気になってました。そして、このブログにもそのトークの内容をコッソリ取り入れてます。(読めばきっとバレます)
最初に衝撃的な一言。
photographは写真と訳されますが、photoとgraphを直訳するなら『光画』とでも言うべきもの。写真は真実以外も写るんです。
うぁ、そこまで言い切ってしいますか。確かに最近は目を大きく写すデジカメとかありますが、そういうあからさまな細工ではなくても撮り方次第で印象は随分変わるといいます。
例えば、左側の写真。この中にさらに2つのスライド写真があります。(一つは左上に貼り付けました) どちらも同じ勉強会の風景ですが、撮る位置によって参加人数に関する印象が全く違います。確かに!そこでこの写真も、このTechLION会場を真似して撮った写真になってるんです。「じゃあ本当はあんまり参加者居なかったのかって?」そ、そんなことないですよね。>参加者の皆さん
また、右側の写真。皆、手を挙げています。これもイベントを活気あるように見せるポイントで、簡単な質問で皆が手を挙げる瞬間を狙うのだそうです。なるほど。しかし、この写真(CSS Niteにて)、女性率多いですがこれも何かそういうテクニック使っているのですか?と質問すると、「CSS Niteは女性率高いんですよ。これは真実で、写真は真実も写るんです」と一言。どっちなんですか(笑)。
他にも岡田さんが気を遣っているコツがいくつかあって、一つは発表者の手が動いていていかにもプレゼン中であるように印象づけること。もう一つはその背景にスライドが写っていること。というわけで、このブログの岡田さんの写真もその話を聞いた後、撮りに行った一枚だったりします。
ただ、スライドを映している会場は暗いので動きっぱなしの発表者はブレ易くてカメラマン泣かせ。そういう人には休憩中に「本番中どこかで止まって」とネゴシエーションするのだそうです。そうすればロクロを回して静止してくれる人もいるのだとか。な、なるほど……、勉強になりました。次回TechLIONのゲストにお願いしてみます。
#4 安田豊さん―与太度、足りてますかー?
今回のTechLIONも残すはあとお一人となってしまいまして、取りを飾るのは安田豊@京都産業大学先生。
私はびっくりしました。お名前のとおり、何と個性豊かな方なのかと!トークを始めるやいなや、「あの皆さん、与太度足りてますか?」と言い出し、ステージ上からおつまみを注文。
いや、TechLIONならここまでは普通です。何がびっくりしたかって、届いたおつまみをポリポリ食べて、食べながら喋って、しかも吹き出すという……。いや、わかります。そうやって来場者の肩の力を抜かせるための余興ですよね。ありがとうございます。TechLIONは先生のような方大歓迎です。でも、間違いなく神戸TechLIONの記憶に残るワンシーンとなりました。
さて、安田先生。トークは題して「おいしい話はどこにもない。シリコンバレー・エンジニアへの取材で感じる彼らの総力戦。」 皆様、雑誌Software Designに安田先生が記事を寄稿しているのはご存知ですか?主にシリコンバレーでコンピューターの歴史を築いてきた偉人達にインタビューする記事なのですが、その取材話というわけです。
昔は高校生・大学生だった自分が読んでワクワクするような記事が多かった。でも今の雑誌ってハウツー的なものが多くて。例えば「○○をインストールしてみました」とか。「あれはちょっとワクワクせんなぁ」って思った……
そもそもこれが、そのような記事を書かれている理由だといいます。小雑誌をやってる一人として私も身につまされます。
そして、実際に取材をしてきた偉人達の話へと移るのですが……。「とても全部は紹介しきれないので飛ばしましょう」(→取材した偉人の数々は前述のスライド写真で) ということで、Brendan Eich(ブレンダン・アイク)の取材話を紹介しました。
リンク先にもあるとおり、彼はJavaScriptの生みの親。そしてMozilla社のCTOとして知られる人物です。
取材時のBrendanの話によれば、彼はデータを棺桶に閉じ込めるなと言っていました。これはFlashのようなベンダーのライセンスがなければ開けないコンテンツを指しています。この棺桶から解放するためにハードウェアを駆使した描画環境を作るんだと主張し、半導体からソフトウェアから、そしてベンダー非依存の規格の策定まで、あらゆるアプローチでこれ(=HTML5)を成し遂げようとしました。これらはかつて在籍していたSGI、MicroUnity、Netscapeで身につけた技術の総動員でした。ところが一方で、動画においてライセンス縛りのあるH.264をMozillaは受け入れざるを得なくなってしまいました。でも、彼は
“We lost one battle, but the war goes on”
一戦には敗れたが、戦争は続く。
といって、決して諦める事無く、今でも戦いを挑んでいます。そんな彼の壮絶な話を聞いて安田先生が感じたのは、シリコンバレーの人々の「全てを投入」「不屈の精神」だったといいます。何という執念なんでしょう。恐ろしくもありうらやましくもあります。
という感じで取材を続けていらっしゃる安田先生ですが、最後に一つお願いがあるそうです。ActionScript3に関わり、今はGoogleに在籍しているというWaldemar Horwatにコンタクトが取れるという方は是非紹介してくださいとのことです。お心当たりの方は是非安田先生にご連絡を!
皆様ありがとうございました
今回のレポートだいぶ長くなってしまったので「巻き」でまとめますが、実に面白かったですよ。
というわけで、会場やUstreamで、観覧者としてゲストとして現地スタッフとして、参加してくださった全ての皆様に感謝を申し上げ、レポートを締めくくりたいと思います。ありがとうございました。
次回vol.10はもう来月!また頑張りますので来月もご参加よろしくお願いします。