【10年後の生活を支える最新IT動向】TechLION vol.23報告

【10年後の生活を支える最新IT動向】

 

こんにちは、レポート担当の田中です。最近めっきり肌寒くなってきましたね。
そんな寒さを吹き飛ばすようなアツいイベント、TechLION vol.23が10月20日に行われました。京都に遠征した前回から、再び会場を東京に会場を移しての開催です。

それでは早速、当日の模様をお届けしようと思います!

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●Connect Everything~myThingsが目指すつながる未来~

トップバッターを務めるのは山本学さん。
Yahoo! JAPANが取り組む「myThings」の開発に携わり、現在はエバンジェリストとして活躍している山本さんがIoTや「myThings」の今後について説明してくれました。

「myThings」とは様々なアプリやサービス、IoTデバイスの機能を組み合わせて
自分の課題解決や新しいライフスタイルを実現できるサービスです。例えば「myThings」上でメールと天気情報を組み合わせれば、雨が降りそうなときに通知を受け取ることができる。知りたいタイミングで欲しい情報が手に入るのってとても便利ですね。

Web×Webだけでなく、IoT機器やスマートウォッチなどのWeb×モノの組み合わせも可能なのが大きな特徴の一つ。現在はYahoo! JAPAN関連のサービスやFacebookやYouTube、Evernoteなど32種類のチャンネルに接続が可能ですが、つながるサービスの種類は今後も続々と増える予定なのだそう。今後も追加サービス次第と自分の組み合わせ次第で新たな発見ができそうで、運用側だけではなく、利用者側もワクワクしながら使えそうですね。山本さんも「「myThings」アプリは使い方次第で小さな粒の日常課題を解決できる。アプリ上の設定で組み合わせができるので、全くWebの知識が無い人でも自分でモノとモノを″つなげる″楽しさが味わえる、画期的なサービスです」とのこと。

また「myThings」を「これからできあがるモノと今までに作られたモノをつなげるプラットフォーム」として、つながりを利用者や町にまで拡大させ、利用者の快適で安全な暮らしをサポートしていきたいとの抱負も聞けました。町と自分がつながるというと、規模感の大きさになんだか圧倒されそうです。山本さんは災害発生時の避難経路確認など例に挙げていましたが、他にも通勤中や買い物中など、様々な面で実生活に役立てることも可能でしょう。

つながりの拡大を実現させるため、現在は「myThings」経由でインターネットにつながっていないモノやデータをつなげる試みも行われているのだとか。
現状自作ガジェットなどからもWebの情報をデバイスに、デバイスがセンシングした情報をWebへと相互の情報のやり取りもできるということで、ハードからソフトに入る技術者の人でも使いやすそうですね。山本さんは「この機能を使って新たなIoTデバイスをプロトタイピングしてほしい」とコメントしています。ラズベリーパイなどを用いれば、それこそ自分で工作をするような感覚でIoTデバイスを作ることができるので、あまり知識のない人のIT技術に感じる敷居を下げるような効果も持っているように感じました。

「myThings」はモノやサービスが従来持つ機能を拡張し続けることができるプラットフォーム。そして新しいモノを生み出す手伝いやあらゆる生活シーンをつなぐことで、現実世界の課題をIoTという形でWebを使って解決できる可能性を秘めていると締めくくりました。

 

●HTTP/2: ぼくたちのWebは何が変わる?

続いて登壇したのは株式会社レピダムでシニアプログラマとして認証認可やデジタルアイデンティティなどを専門としている前田薫さん。現在話題のHTTP/2について概要を話していただきました。

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今年からRFCとして公表され使われるようになったHTTP/2ですが、現在でもユーザが知らず知らずのうちに使っているとのこと。世の中の巨大サービス、例えばGoogleやFacebook、Twitterはすでに対応しており、Firefox やChromeなどのブラウザでも対応済みであるようです。

 

HTTP/1.1とHTTP/2との違いを簡単にまとめるてみると、プロトコルがテキストからバイナリーに変わり、セキュリティも強化されたプロトコルになりました。マルチプレキシングが可能になったので、HTTP/1.1が一つのTCPコネクションで一つのリクエストしか処理できなかったのに対しHTTP/2はリクエストが複数処理できるように。他にもプライオリティー制御やサーバープッシュの機能の追加により、リクエストレスポンスのセマンティクスを保持したまま性能の改善が見られるそう。

ではHTTP/2の導入後、ブラウザ体験としてどのように変わるのか。
まずHTTPリクエストの通信が早くなるので、Webページの描画が早くなります。また、画像やCSSなどの取得時のプライオリティが選択できるようになり、状況に応じて ページ内要素のダウンロード順をコントロールできるようになりました。これは体感時間にして、0.5~1秒ほどの反応の改善がみられるそうです。しかも通信速度が遅いネットワークほどその違いが顕著に出てくるというので驚きですね。マルチプレキシングにより接続の数が減るので、自然にネットワークリソースの効率化が図れトラフィックの軽減にもつながります。
このように気が付かないうちに、Web環境がかなり便利になってくるのですね。
ページ離脱の阻止など、Webマーケティングにも影響を与えそうな印象を受けました。

続いてHTTP/2に移行するに際して、技術者側が考えておくべきことを説明していただきました。HTTP/2に移行するメリットとしては、まず先ほども言ったようにページの表示が早くなる。またTCP接続数が少なくなるので、フロントサーバー数の削減にもつながるということがあります。これだけで大きなビジネスメリットですよね。

デメリットとしては、対応サーバーへの移行(Apacheなど)やTLS前提なのでhttpからhttpsへの移行が必要になってくる。また、HTTP/1.1時代の工夫のundoが必要になるとのこと。HTTP/1.1での工夫やメリットが2だとデメリットになることもあるのだとか。技術者側としては、HTTP/1.1と2が混在する環境で相手が何で来るか考えていく必要がありますね。前田さんの予測としては、「まだHTTP/1.1は使えるので、HTTP/2への移行については当分急いでやる必要はない。しかしプロトコルはどんどん進化するので早め早めに対応したほうが得です。のほほんとしているといつか取り残されてしまうかもしれない」とのこと。

最後にhttpの次に何が起こるかということについて、プロトコルの拡張仕様やプッシュノーティフィケーションの実施、HTTP/3にも話が及びました。HTTP/3についてはアイディアを出していく段階だそうなので、気になる方は「http workshop http ideas」で検索をお願いします。トランスポートの改良について、リクエストレスポンス過程のロスを自分で処理しカーネルの仕事をアプリ上で行う機能を持つQUICにも少し触れ、UDPベースのHTTP通信についての展望を述べるという形でセッションを締めくくりました。

技術者側として、今後どのようにWebサービスが変化するのか流れについていかなければならないと繰り返し言われていたのが印象的でした。

 

●パーソナライズが加速するメイカーズムーブメント

休憩を挟んで、3番目に登壇したのは、株式会社Cerevo で広報・マーケティングを担当し、コミュニケーションデザイ ナーとしても活動しているあくやんさん。

あくやんさんが所属している株式会社Cerevoは、注目を集めるIoTの分野でさまざまな開発を行うハードウェアベンチャーとして、2008年に設立して2014年まで社員は10数名でしたが、2015年の今年になりIoTの波から約80人までに拡大したとのこと。しかも社員のうち8割がエンジニアという大変モノづくりに強い会社です。

今まで制作されてきたIoT製品は、皆さんご存知であろう、PCなしでもオンライン配信ができるデバイス「LiveShell」だったり、アプリ連携で変形するスマートトイなど、ユニークな製品が中心のようです。というのはCerevoの開発基準に「Global Niche(グローバルニッチ)」があるから。世界規模である、ニッチであっても確実に存在する需要を開発していくことが、独自で面白いモノづくりにつながるのですね。インターネットがあることで小さな需要一つ一つにリーチし、実現が可能になるということでマーケティング的にも大変興味深く、改めてインターネットが持つ力を見せつけられたような気がします。

そんなCerevoのモノづくりの拠点となるのは秋葉原にある「DMM.make AKIBA」。
総額5億円の機材設備を備えた、企業や個人がモノづくりするのにも便利な施設だそうです。ちなみにここでは、ほかにもダンサーさんやフェスにぴったりな、音楽にあわせて光る靴などの、遊び心のあるクリエイティブな製品が数多く制作されているのだとか。他にどのような面白い製品が作られているのでしょうか…。大変気になるところですね。

しかし、このようなものづくりの現場というのは、設備や環境、場所といった問題が大きく関与してきます。そのため、「DMM.make AKIBA」のような施設を使用しなければなかなか、オリジナルのハードウェア開発が難しいのが現状です。
では10年後のIoT動向は一体どうなっているでしょうか。
あくやんさんは「モノがつながるのも、つながるモノが作れるのも当たり前になり
必要なものが必要な時に作れる時代になっているでしょう」と結婚やキャリア形成なども含めた自分の未来年表とともに説明してくれました。

今後は個人の作りたいモノにあわせた開発モジュールや、キットが誕生して
Webやリアルなものづくりにおけるコストが低下することでもっといろいろなモノが作れる時代になる。そして誰もがモノづくりできるのが当たり前な状況のもとで生まれたIoTネイティブが生まれるだろうとのこと。「パーソナライズなもの、つまり自分だけが使いたい自分のためのIoTを誰もが作れる未来になっていくでしょう」とIoTが身近になる未来を現場の目から語っていただきました。自分が欲しいモノ・コト・体験ができたら自作してしまおうということ自体が今まで私たちに無かった発想ですし、そのような新しい観点を持つということで今後の世代は新しいWebサービスや画期的なモノづくりを行ってゆく余地がまだまだあるのだということに気づかされた、充実したセッションでした。

 

●IoTから”動き出す”技術

最後に登場していただいたのは、株式会社ユビキタスエンターテイメントで取締役副社長兼CTOを務めている水野拓宏さん。最近水野さんが興味を持たれているVRやドローンといった技術から、10年後の人間とITの進化についてお話していただきました。

水野さんはプログラマ出身で、ドワンゴに所属したりIPAにて天才プログラマー/ スーパークリエイターとして認定された経歴をお持ちの方。
ユビキタスエンターテイメントは「技術とエンターテイメントをコンテンツに役 立てる」と理念を掲げ、また「エンターテイメント=おもてなし」と捉えていることから、人を喜ばせるコンテンツを多数制作しているそう。最近、会社として関わったプロダクトには映像情報を取り込んだ地図サービス や、ぺんてるのラインマーカーに対応するスマートフォン専用アプリ「AnkiSnap」があります。開発した商品の中に共通するのは”エンターテイメント性”で、実用的で終わるだけではなく、付属すると製作品としての面白さが上がる機能も盛り込んでいるのだとか。

水野さんが最近はまっているものとして紹介した一つ目は「超4K実写動画ソリューション」。これはCGでなく実写であることで臨場感を実現させている技術で、CGとの組み合わせも可能であり8K動画を使ったコンテンツ作成も現在進んでいるそうです。

8Kほどの情報量にまで到達することもあるといいますが、そこまでの情報量になると、映像でも本物のようなアスファルトの質感、すれ違う車の文字までリアルに見えるというから驚きです。実際に超4K動画の秋葉原や初音ミクを見た人の感想は「そのまま仮想世界から帰ってこられない」「向こうにいる初音ミクと目が合って好きになった」など、映像への没入感を強く感じたという声も上がったとのこと。VRがディスプレイというより実態に近い域まで進化し、人間の心理を動かすレベルまで技術発達が進んでいることは非常に面白く、今後のさらなる応用の可能性が感じられますね。

二つ目に紹介していただいたのは、昨今何かと話題になっているドローン。水野さんが持参したピコドローン(※現物は自律しないタイプです)を会場で実際に飛ばすと、客席からも「凄い」「可愛い」との声が聞こえてきました。じつは制作ではラジコン的な部分もあるのですが、ドローンとラジコンとの大きな違いは自分で情報処理できるか否かという点にあるといいます。どういうことかというと、ドローンにはフライトコンピューターが入っているので、操縦者側があらかじめプログラムした情報や事前の操作情報をドローン側が維持 してくれる。そのためドローンの自律飛行も可能で、速度やフライト情報を事前にプログラムしてドローンに渡しておけば、コントローラーの電波が届かないで も飛ぶなんてことも可能だとか。さらに自分でアプリケーション作れるレベルにまで行くと、ただ飛ぶだけではなくドローンにさまざまな動作をさせることも可能です。「ドローンは情報処理することができる、つまり空を移動するコンピューターなんです」と水野さんは言います。実際に飛行コンピューター実験やドローン実験を重ねて可能性にフライトコンピューターやドローンに物を運ばせることで、一般の人にもロボットを操縦する感覚が味わえるようになるとは…。何だかドキドキしますね。

では、この二つの技術が持つ意味とは何でしょうか。
水野さんはVRを「人間が情報空間に介入する手段」、ドローンを「情報、仮想空間の存在の、実世界での機動力」と説明しました。Amazon Dash Buttonのようにコンピューターが実空間での動きを獲得しはじめ、最近発表された「SORACOM Air」「AWS IoT」のようにIoT向けのプロダクトや サービスの拡充が積極的に行われ、情報空間での動きの獲得が行われる。これからの10年でこのような実空間と情報空間の交差が始まる、というように締めくくっていました。

◇ ◇ ◇  ◇ ◇ ◇  ◇ ◇ ◇  ◇ ◇ ◇

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以上4名の方の熱いプレゼンテーションの後、セッションや懇親会を行ってTechLION vol.23は終了しました。10年後のIT動向という一本のテーマがあったため、IoTの進展でインターネットやIoTといったIT技術がより身近になり誰もが作り手や発信者になれ、自分のアイデアを形になし得る未来の到来がはっきりと見えたように思います。今後ツールやモジュールの進化とともにクリエイティヴなモノがどんどん現れる可能性が感じられました。

インターネットというツールがあることでニッチな需要や受け手が表面化する反面、面白いコンテンツだけが生き残れる、厳しい時代になっていくように思います。そのような状況下で、技術者はより個にリーチするモノを作りつつ、利用者側は、今後プログラミングなどを含めて、知的好奇心が強いIoTネイティブが現れるという意味でも、流れについていき必要性を感じました。

改めまして、スピーカーおよび参加者・聴講者、スポンサーの皆さん、ありがとうございました。

次回のTechLION vol.24は来年1月に東京で開催予定です。後ほど詳細情報が発表されますので、奮ってご参加ください!

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