こんにちは、レポート担当の田中です!
さて、6月28日(火)にTechLION vol.26が開催されました。
今回は「テクノロジー温故知新」がテーマとなっただけあって、トレンドも少し交えながらも日本のIT界に関する歴史に重点が置かれた会になりました。
心なしか、出演された方々、そして来場された方々の平均年齢も少し高めの会場の様子。
それでは早速、当日の模様をお届けします。
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【jcode.plの作者があの時の“日本の”インターネット技術を振り返る】歌代和正
最初の登壇者は、JPCERT/CCの代表理事を務められていて、ウィキペディアではなんと『翻訳家』として紹介されている歌代和正さん。最近は、トライアスロンやウインドサーフィンなどアクティブに活動されているご様子。
新卒で入られたSRA時代から、NFSやjcode.pl開発、TechLION vol.10にお越し頂いた村井純先生のお名前も挙がった「WIDEプロジェクト」やIIJでのインターネット関連の活動など様々な経歴をお持ちで、今回のセッションも日本のインターネット黎明期を担ってこられた方にしか話せない、興味深いお話しがどんどん飛び出しました。
その中でも印象的だったのが、 1994年以降のIIJ所属時代にファイアウォールサービスを売り出す際の 「言っちゃったから、作らなきゃだめだね」という言葉。
当時、ユーザーに対して「あくまでインターネットに接続するのは自己責任」とは言っても難しい状況があったそう。(今でもなかなか難しいことですよね…!)インターネット接続を商品として提供していくにあたって、それ以上の付加価値をつけたり、サービスを提供していく側の責任をどうするか、ということからファイアウォールサービスに繋がるという経緯があったそうです。
「できない」が前提にある状況で、いかに「できる」ように変えていくか
というお考えのもと、jcode.plの開発など目の前にある不自由な状況を便利な方向に変えてこられたのですね。
また、このような知見をお持ちであることが、
「jcode.plは日本語に関するものだが、日本人しか使えないようにするのではなく、どんな環境でも動くようにすることで利用者に広がりが生まれ、次の何かにつながるかもしれない。」
という将来への考えに繋がっているのでしょう。
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【NetBSD, on the Road】蛯原純
続いての登場は「えびじゅん」こと蛯原純さん。
NetBSD関連の仕事を長く続けられていて、オープンソースカンファレンスについても最多出場グループ記録をお持ちの蛯原さんに「NetBSD, on the Road」というテーマで、ハードウェアとOSにまつわる濃い話を語っていただきました。
NetBSDでのサポートの面白さを、CPUやワークステーションを作った人の意図「なぜこのように設計したのか」を解き明かしていくところにあると仰います。
集めたハードウェアをNetBSDでサポートする過程において、動かないものをUnixの枠組みの中で試行錯誤し、ハードウェア情報を採集して動かしていくことが必要ですが、それができるとパズルが解けたような感覚が味わえるとのこと。
また、オープンソースカンファレンスで見つけたものをNetBSDのパッケージソースに追加すれば世界中に紹介、再配分することができるという新たな気づきがあったとのことです。一つあれば今まで作られた全てのソフト/ハードウェアを好きなように動かせるようなOSの作成、という目標も夢ではないように感じられます。
テクノロジーという共通言語を用いて世界中のプログラマーが未来を作っていくその内側を覗けたように感じる、情熱に溢れた内容でした。
蛯原さんのスライドシェアはこちらから!
(http://www.slideshare.net/junebihara18/netbsd-on-the-road-2016)
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【いる? いらない?──tech系メディアの未来を考える】 風穴江
最後に登壇したのはテックジャーナリストで、コラムニストの風穴江さん。
月刊アスキー編集部、フリーランスを経て現在はtech@サイボウズ式編集部でテクメディアを扱われている風穴さんにテクノロジーとメディアの関係についてこれまで辿ってきた歴史も踏まえて語って頂きました。
情報への読者の要望に対し、テクメディアは雑誌やメールマガジン、ブログ、SNSとウェブの進化に伴い多様な媒体を用いて応えてきました。他のメディアとの相違点は作り手と読者とのつながり方、コミュニケーションのとりかたにあるのだといいます。新聞を始めとした各種メディアは権力と市民の間にある対立構造に対抗する手段として誕生した背景があり、現状もその構造は変わらず作り手側もどこか固さが残っているそう。
対してテクメディアは上記のような対立構造とは異なり、テクノロジーという“好きなモノ”で書き手、作り手と読み手が繋がっているコミュニティーの中から生み出される。「共感者を作り、一緒に考える」という構造にあるようです。
時代に合わせてメディアの形が変容してきたという歴史から見ると、セミナーや勉強会といったリアルで繋がる機会の普及や、電子書籍の躍進も現状に合った新しいメディアの形態であると考えられるでしょう。まだ見ぬ新しいメディアが登場した際にテクノロジーはどう関わっていくのか、考えていくとワクワクしますね。
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最後に白熱したパネルディスカッションが行われ、あっという間に時間が過ぎていきました。
ご来場された方々からは、下記の様な沢山のお声を頂戴することが出来ました。
「楽しい話、なつかしい話だけでなくて、今これから何を考えて何をしようかと前向きになれる、良い言葉を多く聞けて、自分にとって本当によい時間を過ごせました。」
「えびじゅん無双は誰も止められなかった。異質な昔話とこれからの話し、よかったです。人選がすばらしいです!」
「歴史を刻んできた方のお話しは懐かしく、また、今になって振り返ると意義を再認識できるところもありました。」
「古い情報は必要かどうかというテーマがとても興味深かったです。楽しかったです。」
中には「日本にこのイベントがあることを幸せに思っています。」という嬉しいお声もあり、スタッフとして非常に嬉しい限りです。TechLIONもまさに「作る」「書く」「読む」人が同じ地平にいる、テクメディアの一形態としてまだまだ進化を続けていきます!ありがとうございました!
p.s.今回は終了後に参加者全員で集合写真を撮るという初の試みも。皆さん良い笑顔ですヾ(=^▽^=)ノ